スペンスブライソンのベージュで作るスラックス

SARTO

こんにちは。

「リネンスーツを初めて着てみたいが、何色にすれば良いか迷う。」

そんな方に向けて先日、私なりの考えを記事にまとめてみました。

この記事を上げてから少しして、ブログを読んでくださった方から、ミスターリネンにリネンスーツについて相談したい、というご連絡をいただきました。

ミスターリネンとしてこんなに嬉しいことはありません。

サルトにお越しいただき、詳しくお話を伺いました。

リネンスーツに興味はあるけど、何色が良いか迷われているようでした。

上下それぞれ単品使いもできて、街中で着ても目立たない(コスプレにならない)、季節も夏限定にならず長く着たい、ビジネスでも使えると尚良い、ということでした。

上下で着ても良し、単品使いもしやすいベージュのリネンスーツが、私は最も汎用性が高いと思っていますが、上下セットだと職場によってはビジネス使いが難しいかも知れません。

また、ベージュのリネンは肌寒くなってくると、体感は快適でも、季節感的に春夏感があるので使いにくくなってきます。

ネイビーリネンスーツはそれらの懸念を解消してくれますが、パンツ単品では合わせやすさの点ではイマイチです。

ベージュのパンツなら、トップスには何にでも合うので、合わせやすさは100点満点で、やっぱりベージュが良い気がします。

そんなことを話し合いながら、リネンアイテムも初めてとのことだったので、上下のスーツではなく、まずはベージュのパンツ単品から揃えて、

リネンに慣れてきて、それでも欲しいと思ったら上下で揃えていきましょう、という話になりました。

パンツ単品使い用のベージュのリネン生地、といえば、私の中では2択でした。

まずはスペンスブライソンの大定番Tropical (370g)。

Tropicalシリーズの色の一部。
参考までに。Tropicalのベージュで作ったジャケット。シワの雰囲気をご覧ください。

ハリがしっかりとあり、THE アイリッシュリネンです。

リネン生地の中でも特にドレス感があり、ビジネスからカジュアルまで幅広く使えると思います。

最初は少し硬いですが、履き込んでいくうちに柔らかくなっていくし、リネンパンツは、柔らかいとヨレヨレしてリゾート感が出てしまうので、街着用リネンパンツは最初は硬いくらいが良いと私は考えています。

次の候補は、同じくスペンスブライソンのTyrone(380g)。

Tyroneの色の一部。
Tyroneで作ったスーツ。

Tropical とほぼ重さは同じですが、糸が太くざっくりしていて、比較的カジュアルな印象が強いです。

とはいえTropical 同様ハリはしっかりあるので、リゾート感はそんなに出ず、街着としても全く問題ありません。

ビジネスでも、上にネイビージャケットを羽織ったりすれば問題ないと思いますが、カジュアルな合わせの方が相性は良いと思います。

Tyroneのスラックスをカジュアルに使ってみました。

盛夏用で、涼しさ優先であればLismore (280g)も候補です。

薄い割にハリはあって、リゾートで履くような軽い印象にもなりません。

しかし今回は、夏だけではなくなるべく長く着られるようにということで、選択肢から除外しました。

さて、Tropical か Tyrone か。

それぞれ展開している色も微妙に違うので、どんな色があるのかチェックします。

ベージュといっても、白に近いオフホワイトくらいの色味から、ブラウンに近い濃いめの色味まであります。

水色の矢印は関係ないので無視してください。真ん中列の下から2番目のMOCHAは、ベージュではなくブラウンでは?と感じる人もいそう。

合わせやすさだけでいえば、白に近い方が無彩色(白、黒、グレー)に近くなり、他のアイテムとの色合わせはしやすいです。

しかし、白過ぎても、夏っぽくってしまうし、目立つし、汚れが目立つし、使いにくいかもしれません。

そう考えると、”程よい”ベージュが理想です。

程よいベージュという括りでも、軍服に良くあるサンド(砂漠の砂っぽい)系、カスタードのよくなクリーム系もあり、雰囲気は微妙に違います。

右上がサンド、左列の上から2つ目は、私はクリーム系だと思います。

クリーム系は夏っぽさが強めだと思い、極力長い季節着られるベージュは、サンド系と思いました。

Tropical ならこの色、

Tyrone ならこの色、

手に持っている色、かその上の色も良さそう。

の2択でじっくり検討頂き、Tropical に決まりました。

仕入れた生地を肌の色と比べて。派手過ぎない程よいベージュだと思います。

ビジネスではネイビーのジャケットを羽織り、ビジネスカジュアルではブラウンや白系、もしくは柄物ジャケットを羽織り、カジュアルではポロシャツ一枚やリネンシャツ、と幅広く使える間違いのない選択だと思います。

さて、ここからがサルト独自、いや、私独自のサービスなのですが、仕立てる前の生地の事前水洗いをオススメしています。

スーツの汚れはドライクリーニングではなく水洗いでないと落ちない、というのが私の考えです。

確かに水洗いには、縮みや型崩れのリスクがあります。

型崩れについては別の機会に述べるとして、縮みは、特にリネン生地にはつきものです。

私はリネンスーツを水洗いして、3センチほど縮むという痛い経験を過去にしました。

それ以降、リネンスーツは仕立てる前に生地の段階で水洗い(厳密には水通し)し、縮ませてから裁断すれば、製品になってから洗っても問題ない、と考え水洗い作戦をとっています。

またジャケットは水洗いが難しいとしても、パンツは比較的簡単です。

しかも汗や尿の汚れがジャケットよりパンツの方が付きやすく、今後水洗いする機会が増えることが見込まれ、ますます事前生地水洗いの意味があります。

クリーニングしか出さない方には不要な作業ですが、今回のお客様はご所望でしたので水洗いをすることに決まりました。

スーツ工房で生地水洗いのサービスは残念ながら無く、サルトの店内には洗濯機も物干し竿もないので、私が個人の責任で、自宅で水洗いをします。

洗うといっても洗濯機は回さず水に浸し、ごく短時間脱水にかけ、変な癖がつかないように幅広いポールに干す、という作業です。

私物のオーダーのために何度もやっているので慣れています。笑

長くなりましたが、これらの過程を経て、ようやく完成しました。

ベルトレスでワンプリーツ、程よくテーパードし、裾はダブル4.5センチ幅、というシンプルな仕様。

私が私物で作るものは、ツープリーツ、テーパードはほぼしないストレートで、やや異なるシルエットですが、お客様の好みに合わせて、股上、渡り幅、膝幅等の寸法を、ベストなバランスになるように考えました。

私物のリネンスーツ(パンツにご注目ください。)
横から。ほぼテーパードしていないシルエット。

裾にクッションがほぼ出来ないくらいがお好みとのことでしたが、リネンパンツは着用しているとシワができてわずかに丈が上がることも考慮して、5ミリほど長めに設定しました。

お客様のお顔は映せないのですが、お似合いでとても格好良いです。

(サルトに置いてある試着用のスリッパを履いて頂いています。もっとお洒落な靴を普段は履かれている方です。)

お客様からも、シルエットが理想通りとご満足頂きましたが、あくまでまだ試着段階。

実際に1日履いてみて、ストレス無く履けるかは分かりません。

生地の感触についても、私はアイリッシュリネンが好きで履いててもノンストレスですが、感じ方は人それぞれ。もしかしたら、硬くて無理!となるかもしれません。

何シーズンか履いた後にまた感想を伺い、またご相談頂ける場合は今後に活かしていこうと思います。

H様、ありがとうございました。

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