Maison Hellard リネンジャケット完成

SARTO

こんにちは。

これまで私は、リネンスーツ(ジャケット、パンツ単品含む)は、ハリがあって仕立て映えのするアイリッシュリネンに限る、という偏った考えでしたが、もっと幅広く、様々なリネンに挑戦しようと今は考えています。

実際に、日本製リネンでスーツを作ってみましたが、予想を良い意味で裏切られ、非常に気に入っています。

今回新たに挑戦したのが、フレンチリネンです。メゾンエラールという比較的新しいフランスの生地ブランドです。

以下の記事で詳しく説明していますが、惚れたポイントは、一言で言えば「ツイードっぽいリネン」です。

リネンなのに重厚感のある生地感、リネンは無地が多い中珍しい、ツイードのような渋い色柄。どれも最高に格好良いです。

選んだ生地はこちら。ダークブラウンとベージュのチェックに、ピンクのラインが入っています。このピンク使いがにくいです。

日本製リネン同様、今回も働いているサルトでMTM(様々な体型補正を加えられるパターンオーダー)で仕立てました。

サルトの先輩社員に見てもらいつつも、最終的に工場へ送る数値データ(各所寸法や体型補正の情報)は、自分で考えて作ってみました。

先輩に任せた方が良いフィッティングにはなると思いますが、自分の勉強の為に、多少失敗しても良い勉強になると思って挑戦してみました。

ではまずは完成品をご紹介します。

ポケットはフラップ無し
袖ボタンは3つ
ノーベント
裏地はくすんだピンク。
ボタンはホーンボタン。

点数は、自分としては85点くらいです。一つずつ詳しく見ていきます。

まずは全体のシルエット。肩周り、バスト、袖、ウエスト、全体的に少しだけ太めにし、柔らかいリネンのリラックスした印象、男性らしい印象を出すことを狙いました。

サイズ感に加え、生地のリラックス感も相まって、全体的にリラックスした印象。
ジャストフィットで上品な印象。
ウエストの絞りは控えめ。
ウエストは体に沿って絞られている。
ウエストはそれなりに絞られているが、体のラインからは離れている。
ウエストはぎゅっと絞られている。
腕が太め。袖口にかけてテーパード。
中庸な太さ。

リラックス感、男性らしさ、という狙いは、良い感じに出すことが出来たと自分では思いますが、いかがでしょうか。

85点と述べましたが、マイナス15点はどの部分なのか。

一つは、ラペルの太さです。

9.5㎝にしており、私の中ではベストサイズと思っていたサイズをそのまま使いましたが、肩幅や胸幅を少し広くしているので、その分ラペルも気持ち太くしても良かった気がしています。

9.5㎝でも一般的にはむしろ太めな方なので、何もおかしくはないのですが、10.0㎝でも良かったと思います。好みの問題ですね。マイナス5点です。

もう一つのマイナスポイントが、一番下のボタンの高さ。一番下のボタンの高さは、腰ポケットの上辺と同じ高さじゃないと気持ち悪く感じてしまうのは私だけでしょうか。(シングルジャケットの場合のみ)

今回は、リラックス感を出すためにボタン位置を全体的に少しだけ下げ、ボタン間隔まで指定してしまったせいで、腰ポケットより5㎜程度、一番下のボタンが下に位置してしまいました。私のミスです。マイナス5点です。

最後が、肩パッドの厚さ。肩パッドは2㎜の極めて薄いものを入れています。生地自体がそれなりに厚い(410g)ので、パッドは薄くても問題ないと考えました。

実際に何の問題もないし、パッドのおかげで肩を保形しつつもリラックス感があり、バランスは悪くないとは思うのですが、もう少しだけ厚い方が、クラシックで格好良い気がします。

先輩社員の私物のアットリーニのツイードジャケットを着たのが、そう思ったきっかけです。

アットリーニのツイードジャケット。

肩幅がしっかりと広く、肩パッドもそれなりに入っていて、堅苦しさはないのに男性的で、非常に格好良いと感じました。こんな雰囲気の肩周りの雰囲気にしたかったです。マイナス5点です。

以上が、デザイン面での自己評価でした。

デザイン面以上に重要なのが、着心地です。MTMで着心地を左右する大きな要素が、体型補正です。

体が前後左右どの方向にどのくらい傾いているか、肩や背中の出っ張り具合はどうか等を、着用者の体を見て、またゲージ服と呼ばれるサンプル服を着てシワの入り方などから、見極めていく必要があります。

先輩社員に教わりながら自分の体の特徴を数値に落とし込んでみた結果、着心地は抜群に良い仕上がりとなりました。背中から見ても、余計なシワは無く、それでいて可動域には必要な生地の余裕があり、腕を前後に動かしても突っ張りがありませんでした。

一日着てみて、暑がりの私は大汗をかいてしまいました。410gあるので、やはり真夏用ではなく春や秋が良さそうです。

むしろ、そんなにしわくちゃにもならなかったので、冬に着ても季節外れ感はそんなにないと思います。私は年中リネン男なので、冬にタートルネックの上とかに着るつもりです。

自分でスーツのオーダーをやってみると、生地やデザインだけでなく体型補正についても勉強になることが多すぎて、楽しくて仕方ありません。

より良いスーツを作れるように、学習と経験を積み重ねていきたいと思います。

以上です。

ありがとうございました。

コメント

  1. Ogden Moleaw より:

    国内外問わず最近流行りのMHリネン生地はここでも美しいですね。日本の気候でいいカントリージャケットになりそうです。

    さて、フィッティングについてですが、「いかがでしょうか」とのことでいくつか感想を書き留めておきます。あくまで記事内の写真からしか考えていないので、今後意外と違った感じじゃん!と思う可能性もありますが。
    最初の印象は「袖のテーパーが随分強いな」でした。本文を読むと実際には上腕部が太くされていることで先細り効果が強められている感じでしたが、袖の幅と長さのバランスに違和感がありました(違和感の基準が自分の経験=今まで見たことのあるジャケットなので相対的なものですけどね)。リネン生地であることを考えると、前腕も少し太くして皺や縮み対策をしたり風通しをよくしたりというやり方がより効くかなと感じました。
    次に肩と胸ですが、意図的なフルカットのフィット感というよりも、半サイズ大きいジャケットを着ている人のように見える感じがします。肩の構造が少なめであることと、ハウススタイル(というか工場や元の型紙のスタイル)に合わない選択だったことが原因だと思います。後者について説明を加えますが、(おそらく)このようなクリーンチェストのジャケットのスタイルでは寸法数値を太らせても男性的なシルエットは作り出すことができないと思います。大きく男性的な形を生み出すドレープチェストは十分に構造化された上でもっと細かく調整されなければ実現できず、海外まで含めてもMTMでこれを実現できるところは事実上存在しなさそうです(フルオーダー/ビスポークでもドレープチェストは専用の訓練を受けていないと作り出せず、しかも数十年人気がないので本当に絶滅危惧です)。話を戻すと、胸と肩に関してはあまり狙いと成果が合っていないように見えます。それでも、背中から見て破綻はないので、大きすぎる既製服を着ているというよりも丁寧に調整をしようとした結果なんだなとわかるものにはなったと思います。
    ではウエストもそうかというとまた別で、ここは好み次第で高い評価が得られることもあるかもしれないと思います。最近のブログ記事などを拝見していても、80年代後半~90年代のスタイルに近いものが好きになっているんだろうなと感じますので、そういった雰囲気には適っている気がします。昨今の流行でも若干そういう傾向があるので、トレンドにうまく馴染んでいるポイントにすら思えます。ただし、男性的なシルエットにこだわるなら、肩や胸(どちらもここでは失敗気味ですが)とのメリハリがあったほうがかっこいいものにはなったかなと思います。
    残りは大した内容ではないですが、ボタンスタンスが少し低いのは個人的に好きです。ヒップポケットとの位置関係はこだわるところでもありませんし、低いというほど低くもありません。どちらかといえば3ロール2(段返り)の意味が全然ないなと感じるほうが個人的な好きじゃないポイントです。また、早速ヒップポケットのダブルジェットポケットが開いてきてしまっている点はなかなか周囲からの目が厳しくなるかもしれません。
    全体として、90年代後半の南イタリア(ナポリ系?当時は北イタリアのローマ系スタイルのほうが圧倒的に人気でしたが)風のジャケットとしてよく作られているな~と思います。数値上大きめに作った部分は現状あまりよく見えませんが、逆にかなり厚手のセーターやタートルネックを着るのには最適かもしれません(リネンなのに?という点は既に乗り越えているところでしょうしね)。

    最後にこのジャケットと関係のないところですが、ジャケットのウエストにシルエットを崩す「しこり」があるのがとても残念です。おそらくベルト(特にバックル)が厚く、ジャケットのラインを見出しているのだと思います。この点に関してはジャケットのウエストをゆるくするとかズボンの股上位置を調整するとかいう問題ではなく、ベルトの使用自体が問題になっています(比較されているDORSOのジャケットも同様の問題を抱えています)。
    クラシックメンズウェアにおいてサスペンダー(ブレース)が好まれる点もここにあり、特にスリーピーススーツではウエストコート(ベスト)に干渉するのでベルトは事実上使用不可という認識もあるようです。折衷案としてイギリスでサイドアジャスターが使われたのも同様にジャケットのラインをきれいに保つ効果があるからですね。またベルトはその自重でズボンがずり落ちてしまう問題も抱えていますから、クラシックオタク仕草とだけ認知するのではなく、一度その実用性も検討するとよいと思います。靴との組み合わせを考えなくて済みますし(ベルトを購入する必要がなくなると予算も場所も節約できます)、特にスーツではジャケットとズボンの間で目立つ横線ができてしまって上下が綺麗に一体に見えなくなってしまう問題も解消できますしね!

    • Ogden Moleaw より:

      あ、ベルトの件ですが、少なくともDORSO製のサマーツイードジャケットにはベルトを使っていないようですね。すみませんでした。が、それはそれでどうしてこんなふうになるのだろうとは思います。

    • Mr. Linen Mr. Linen より:

      コメントありがとうございます。
      自分では気が付けなかった点を教えていただき、非常に参考になります。
      袖の太さについて、記事内でちらっと登場させた、アットリーニのツイードジャケットが(たまたまその一着だけだったのかもしれないですが)、二の腕はそれなりに太めなのに、袖口幅が13.5㎝と細く、そのバランスが格好良く見えて真似した次第です。
      ですがご指摘の通りかなりテーパーが強く、一般的なバランスとは違うとは思います。しばらく着用してみて、しっくりこなければ少し太くするかもしれません。

      肩と胸について、率直なご意見をいただけてとても助かります。
      狙った成果が出ていないというのは正直悔しいですが、今後より良いジャケットを作っていくための参考になります。
      また色々と試して研究してみようと思います。

      ジャケットのしこりについて、私も気になっていました。
      ドレスパンツであれば、ベルトレスで対応できそうですが、デニム×リネンジャケットというスタイルが好きなので、デニムにもサスペンダーをするか、ジャケットのボタンを常に開けておくかしかないですかね。笑

      また色々と教えてください。
      ありがとうございました。

      • K.M. より:

        リネンさん、こんばんは。
        自分の想像ですが前回のネイビーのリネンスーツと比べ、補正を強くしたのは反身、前肩(巻肩)とそれに伴う抱きあたりでしょうか。あと着丈と、腕角度もいじってるかもしれません。
        リネンさんは巻き肩が強めかつ肩甲骨が開いているようなので、前のネイビースーツでは抱きがあったような気がします。
        今回のジャケットも横から見た写真では、姿勢の為かもしれませんが肩甲骨がかなり張っているように見えます。
        どうやったかはお楽しみですが、今回はそれが上手く消えていそうですね。

        若干気になったのは、巻肩故に前肩周りのボリューム(ドレープ)が少し足りない点です。
        私はやったことがなく、かつ生地と工場次第ですが、胸増芯を足す方法があります。
        ただし芯を入れると当然着心地、特に暑さに繋がるので悩みどころです。

        またボタン位置について言及されてますが、基本はウエストの最も絞る位置が留めるボタン(今回段返りなので、第2ボタン)と平行になっているとスッキリ見えるとされています。
        なのでポケットを合わせるというより、まずはボタン位置があって、それに伴いポケット位置が上下すると考えたほうがいいかもしれません。

        自分のスーツは型紙の都合上ウエストラインがかなり上に来るのですがリネンさんのスーツと比べるとボタン位置は結構高いです。英国風のスーツはこんな感じです。

        • Ogden Moleaw より:

          返信位置の都合上、私にも話題が回りましたのでブログ主のいない場ではありますが少しお話しさせてください(知識や経験の面でも十分とお見受けいたしましたので、せっかくですからということで)。
          最後に言及されている「英国風のスーツ」という言葉について、ここで指しているものは英国のどのような仕立てのスーツになりますでしょうか?例えば特定の英国の仕立て屋名○○の系譜からくるもの(トミー・ナッターやアンダーソン・アンド・シェパード、ヘンリー・プールなどはわかりやすい元ネタの例になりえますね)、とか、あるいはいわゆる英国の仕立てにおける流派としての分類(例外というかサブカテゴリーもそこそこありますがおおよそ大分してmilitary、equestrian、drapeの三つになるはずです)のどれか、などであれば非常にわかりやすくなると思います。日本では一般的にイギリス・イタリア・アメリカのスタイル~などとして紹介されがちですが、実際にはイギリスには先述した3タイプ(実はどれにも属さないながらそこそこ強いスタイルもあるのですが)、イタリアでは北と南(+それと別にアルマーニスタイル?)、アメリカでも60年代頃を境にしたそれより前と以後のUpdated Americanカットくらいには細分化して認知されるべきではないかと常々思います。かなり大まかな分類なのでトップ各社の個別スタイルに応じて実際もっと色々分けられますし、いちMTMメーカーの中で全部に対応できるものでもないと考えています。
          さて、どうしてそこに言及するのかといえば、英国風として扱われるイギリスの一流テーラーの間でもウエストの抑え方やボタンの位置についてはかなり違いがあるからです。ゆえにどういった英国のスーツを前提にしているのですか?と興味半分に質問しています。
          military系であればウエストの絞り方は強めでボタン位置はしばしば高め、equestrian系はボタンスタンスを上下させることはほぼないもののジャケットの長さが少し長めなので高く見えることアリ、などといった形で大きなカテゴリーでも違いますし、さらに少なくないサヴィル・ロウの仕立て屋はボタンスタンスをウエストラインより下げることを好んでいたりもしました。
          最後に、ウエストそのものの位置取りについてですが、英国系の仕立ての教科書ではジャケットのウエスト(とウエストボタン位置)、ズボンのウエストバンド、ウエストコート(ベスト)の裾ないし下から2番目のボタン位置がすべて着用者の胴体の最も細い所に揃うべきであるとされています。当然、体型により例外はありますのでどのようにフィットさせるかは腕の見せ所になるかと思いますが、あえて言及するのであればそこまで位置取りを意識するよう考えてもいいかもしれません。特にジャケットのウエストボタンの位置は、身体が動く際にジャケットの動く軸になる部分ですから、ウエストからあまり離れると身体の動きとぶつかってしまいがちです。そうは言っても今記事の作例で見れば十分機能する位置の範囲内ですし、ボタンスタンスを下げたことでラペルラインが縦に伸びて胸を強調していると思います。

          総じて、そもそもベースとなっている型紙のスタイルが南イタリア風(個人的には確信と言えるほどすごく南イタリアだ!とも思わないのですが、少なくとも確実に英国の伝統的なスタイルの要素は細部まで否定されています)であり、胸のドレープなどはあまり改善のしようがないのだと思います。寸法数値を大きくしても芯地を追加してもあまり効果的なスタイルにはならず、今後は型紙の上で前提とされている設計に沿ってクリーンチェストを狙うほうがよいと思います。このデザインで英国風を目指すならば、しっかりと構造化されていながらも強くパッドを用いないソフトショルダー、クリーンチェスト、低いボタンスタンス、それでも抑えられたウエストを持つソフトテーラリングのスタイル(例えばダグラス・ヘイワード風?)はある程度再現度高く作ることができるかもしれません。もちろんMTMや日本のフルオーダー/ビスポークにできることにも限界はあり、英国の特定の仕立て屋の特定のカッターのスタイルは単純にコピーや継承できるものではない芸術ですが。

        • Mr. Linen Mr. Linen より:

          K.M.さん、こんばんは。
          お返事遅れてしまいましたが、コメントありがとうございました。
          細かな修正を複数加えているのですが、K.M.さんのおっしゃる通りで、メインの補正は反身を強くし、巻き肩については肩のイセを増量させました。
          腕については袖口だけ少し細くしましたが、撮影時の腕の位置のせいか、確かに角度も違うように見えますね。

          前肩周りについては、ご指摘いただいた通りで、少しボリューム感が足りなく感じますね。
          実は今回、胸の芯も少しだけいじっており、胸のボリュームが増して見えるような芯の癖付け?を依頼しました。が、大きな効果は無さそうですね。
          言い訳するようですが、写真撮影の際は背中が丸まった姿勢でして、姿勢がまっすぐになるようやや胸を張って立つと、胸のボリュームの印象は個人的にはかなり変わったように見えました。
          今後何かの記事でこのジャケットを登場させる際は、姿勢を意識しますので、もしまた記事を読んでいただく機会があれば、ぜひチェックして頂ければ幸いです。

          ボタン位置について、確かにウエストの絞り最大の位置でボタンを留めるのが基本ですよね。
          私は今回、リラックス感を出したくてやや下の位置にしました。
          スリーピース等のかちっとした洋服を作る時は、もう少し上の方がバランスが良さそうですね。

          Ogden Moleawさんとのやり取りを拝見しましたが、私にはレベルが高すぎて、正直ついていけませんでした。笑
          じっくり読んで、勉強させていただきました。いずれにせよ、私のブログ上でクラシック関連の会話が繰り広げられたのを嬉しく思います。
          お二方とも、今後ともよろしくお願いいたします。

  2. K.M. より:

    Ogden Moleawさん、こんばんは。
    返信の設定がうまくできていなかったかもしれません、失礼しました。

    英国 “風” と表現したのは、仰る通りハウススタイルによっても上下しますし、特に特に年代の影響を受けると思いますので、あえて濁しておりました。
    ただ私がイメージしている少なくとも1930年代以降でドレープ型が出てきた頃の英国のスーツは標準〜高めの印象を受けます。

    ドレープに関して、少し補足いたします。なお、ドレープという表現よりボリュームの表現が適切だったかもしれません。
    少なくとも写真の上では前身頃腕ぐりの真横にはゆとりはありますから、生地ベースのゆとりは確保できていると思います。というよりこれ以上増やすと前がつかえると思います。
    私が指摘したかったのはちょうど肩甲骨〜大胸筋の上部あたりです。ここが、真っ直ぐにできると美しいのです。
    本来なら肩増芯をピンポイントで足すのが適正かなと思いますが、MTMで作る以上工場が対応していないとお手上げになってしまいます。現に、私のスーツをお願いしている所(Textechです)では胸増芯のプラスは可能なようなのですが、肩増芯はありません。
    肩パッドを付けるのも手ではありますが、厚いのは型紙の修整が要るので折角薄いパッドで続けて作成したにも関わらず、また苦労するかもしれません。厚いのは肩傾斜が変わってしまいます。

    本当はアットリーニが合うのでしたら全部バラして芯地がどうなってるか見れると良いのですが、流石に現時的ではないですね。ただ、芯の強さなどは触ってある程度分かるのではないでしょうか。

    参考まで、鈴木健次郎さんの動画では芯地はモザイクがかかってました。

  3. K.M. より:

    そうだ、最後1個お伺いしたいことがありました。
    南イタリアの雰囲気とのことですが、私はルビナッチ(旧ロンドンハウス)が近いかな?と思いました。的外れでしたらすみません。

    • Ogden Moleaw より:

      ご返信ありがとうございます。挑発のようにも読まれてしまったかもしれませんが、同じブログを追っている同好の士ですから、楽しく交流して頂いたことは嬉しく思います。
      「英国風」の認識について説明頂き感謝しています。個人的には年代による流行の変化に関しては比較的全世界的に共通してわかりやすい記号が多いと思っており、地域や各ハウススタイルの差のほうが個性や研究の奥深さがあると感じます。20世紀後期以降、地域差(国間の単位だけでなく各国内の差も)はかなり小さくなっているので現代ではまた難しい所ですが。英国のスタイルの中でも比較的異端寄り(そもそもオランダ人のフレデリック・スコルテが創始者ですし)だったドレープスタイルの仕立てに限るのであれば、その特徴を最も活かせるのは少し低めのボタンスタンスであるように思います。もちろん歴史的にはドレープカットに高めのボタンスタンスもありますが、スタイルの選択上最適なものとは思いません。1930年代といえば、ことドレープテーラーについてはスタイルの確立前期にあたる気もします(創始者ではないもののドレープスタイルの名家であるアンダーソン&シェパードはもっとずっと前、19世紀初頭に創立していますが)。特定の歴史的資料からの再現も楽しいですが、必ずしも着用者の身体に望ましい効果が引き出されるとも限らない例は昨今よく見かけます(私がメンズドレスの原理に着用者を最大限引き立てることを見ているのはいち意見でしかないのですが)。

      本記事の内容に戻ると、胸の上部にもっとボリュームをという点については同意できます。既製品の大きすぎるサイズを着ているのとは違い背中はかなり綺麗ですから、惜しい所であることには変わりないのですが、できることはなかなか少ないと思います。ドレープとドレープカット(ドレープスタイル)とドレープチェストの違いについて既に十分ご認識があるようですので混同のリスクはないと思って議論します。
      私が誤解していたようですが、このジャケットに改造を施すという見方で「胸増芯」を提案されていたのですね。私は今後のジャケット作成時のことだと思っておりました。確かに様々な点でジャケットに構造化は必要だと見立てられますが、ここで重要なのはおそらくカットの問題です。より丸みを帯びた(英国の仕立て屋がいうSwelled=膨らんだ)胸を作り出すには型紙から大きな見直しが必要で、しかもドレープチェストに詳しい専門的な仕立て屋からのアドバイスが必要になるでしょう。芯地を追加しても、より硬くまっすぐさを強調した胸になるだけではないかと思います(これはこれで別の「英国風」に見えるかもしれませんね)。
      ドレープチェストに定義される腕の横の畳まれた縦向き襞状の生地になりえる余分な部分は確かに存在しますが、ドレープチェストだと思うにはあまりにも生地が足りないですし、美しく仕立てるための工夫はかなり複雑な作業と特殊な専門家のノウハウが必要になると思います。また肩からのアプローチについての言及とそれでもうまく実現するのは色々大変そうという見方もよくわかります。おそらく前肩姿勢等々との干渉もあるでしょうから、やはり型紙単位でまず肩や胸の豊かな形作りを前提としたカットを含む新規モデルを起こすところからやらなければならないのではないでしょうか。微調整レベルでは、肩にパッドを追加するというよりも構造化している芯地の変更(より硬いものに)が検討されるべきかと思いますが、現実的な実行可能性で言えば無理に近いでしょう(いわゆるフルオーダー/ビスポークレベルなら心配もなく当然のように可能でしょうが、そもそもそのクラスの仕立て屋は最初から生地やカットや体型に合わせて適切な芯地を選択できるスキルを持っているはずですから)。

      最後に補足されている「型紙のモデル元(というかインスピレーション元)はどっちかというとルビナッチ系じゃね?」という点ですが、なるほどそうにも感じられますね。当時すぐに思い浮かばなかった名でした。ただしルビナッチのスタイルに見られるいくつかの記号は本記事のジャケット作成に際してブログ主Mr.linen様が独自に変更を加えた点によるものでもあると思いますので、もともと想定されていたMTMスタイルとどれくらい共通点が見られるのかはわかりません。この理由につき、型紙について言及する際はあまり確信を持ったことが書けませんでした。
      (ものすごく情けない追記ですが、あえて言えばロンドンハウスと言えどルビナッチはイタリア系に属するものなので・・・・・まあイタリアの仕立ても元はイギリスのMilitary系に強く影響を受けた北イタリア~ローマの仕立てがありますしルビナッチが絶対全く英国じゃないみたいな見方もしにくいのですが)

      • K.M. より:

        Ogden Moleawさん、おはようございます。
        私は実のところイギリス方面にはまだまだ疎いので、勉強になります。
        そして、読んませていただいて「なんで気づかなかったんだろう!」と、先程驚愕したばかりです。

        私の保有している書籍「Sharp Suits」のエドワードⅧ世とスコルテの章において「The prince had his jacket waists high to elongate his silhouette」すなわち、ウエスト位置を高くしていたとの記述があります。
        ではボタンスタンスはどうか、というと、当時〜特に晩年の様子からの標準〜寧ろやや低めが多いかと思います。
        となると、私の提案した絞り位置〜ボタンは水平線上、というのは成り立っていないことになります。
        これはエドワードⅧ世に限らず、資料として豊富なアステアもそうでした。両者ともダブルの6つボタン下一つ掛けを好んでいたという点もありますが、ことシングルジャケットに関しては低めのように見えます。これがいわゆる、低めのボタンスタンスなのですね。

        ちなみに、私のボタン及びウエストラインは実際より高いです。これは恐らく脚長効果を狙ってるので、源流はmilitary系かな?と考えました。

        ルビナッチ、特に現オーナーのルカ・ルビナッチ氏も低めのボタンスタンス、特にダブルの下一つ掛けを好んでいるようです。

        • Ogden Moleaw より:

          ご返信ありがとうございます。
          エドワードⅧ世まで参照すると(彼が’当時の’伝統的なイギリスの装いの中では異端でありまくったこともあり)なかなかユニークというか型破りな、よく言えば多様性に富んだスタイルが見られるようになりますよね。エドワードⅧ世は自らの体型についての効果(と体型による限界)を理由にしたスタイル選択が多いようで、柔らかい構造のダブルブレステッドジャケットの最下段のボタンのみを留めるのはラペルラインを長く伸ばして縦長の印象を求めたなど言われていたりもします(体型による限界の例としては、しばしば眉唾物の歴史であるウエストコートの一番下のボタンが留められなかったため外していたら現代では伝統と快適さの面からそれが普通になったという点が挙げられそうです)。ただしイギリスでより一般的なのは6×2や4×2のボタン配置であり、イタリアから流行していった6×1や4×1でない点に注意です(おそらくイギリスでの認識としてはこのスタイルはあくまで選択的なもので、伝統的な3ロール2と現代の極端な3ロール2にも似ています)。またご指摘の通りボタンスタンスを低く配置したり、柔らかい構造のダブルブレステッドジャケットの最下段ボタンのみを留めたりすると胴が長く脚は短く見えやすくなりますので、少なくともエドワードⅧ世のその他の慣習を加味しても脚の長さはそれほど意識していなかったのでしょう。おそらくは価値観として脚の長さに特別な着目をしなかったか、当時のイギリスには体型上気にするほど脚が短いと感じられる人々がいなかったのでしょう。
          では高めのボタンスタンスはなんなのかという話ですが、militaryやequestrianの系譜の仕立て屋が強く意識するのは、テーラードウェアの源流がほとんど乗馬服にあることで(テールコートやボウラーハットもそうですよね)、その際の都合からウエストラインよりも高めのボタンスタンスを設定するものと思われます。あるいはフロントボタンの数が多いことも当たり前でしたから、上下それぞれ広くボタンを配置してより多くのカバレッジを設けていた名残りにも思います(それこそ当時は前面下部のカットアウェイがなく、下のボタンまで留められるのが一般的ですしね)。4ボタンジャケットではウエストボタンの定義は曖昧ですし、下のボタンを削除したパドックカットの存在も考慮すると、高いボタンスタンスが脚を長く見せるためのものとはあまり考えられません。先述した当時の価値観に関する雑な仮定も、逆に足を長く見せるための工夫を要さなかったことに矛盾しません。現代では脚長効果を主な狙いとして高めのボタンスタンスを勧める仕立て屋が日本やイタリアで割と多い気がしますが、これはどちらかといえば2000年代〜のトレンドの影響が強いと思われます。ご存知の通り、短めのジャケットと高いボタンスタンス、細身の仕立てで構造は省くという流行りは、案外サヴィル・ロウの仕立て屋にも影響を与えてしまっています。しかし、極端なボタンスタンスの上昇はラペルラインを短くして上半身が不釣り合いに小さく見え、さらに同時に流行した低い股上との相性も最悪で、また身体の動きへの追従性も犠牲になりますから、改めて言うまでもなく避けるべきです(逆に極端に低いボタンスタンスもバランスを崩すことはこれまた言うまでもないことですよね 80年代後半〜90年代には流行しましたが)。

          最終的には仕立て屋の好みや得意分野と、着用者本人の希望の問題になると思いますが、ダブルブレステッドジャケットはラペルの長さを増すため少し低めのボタンスタンス、シングルブレステッドジャケットは若干高めのボタンスタンスが基本的な合理性のあるボタンスタンス変更の目安になりそうです。そうは言っても先のコメントの通り、一般的な体型では着用者の胴体の最も細いところにウエストボタン等々を合わせるのがスタイルに関係しない「正解」を求める場合の答えでしょう。しかしボタンスタンス以外にも多くの要素が着用者のシルエット形成や快適さに関わりますし、それらの要素次第ではボタンスタンスを多少上下させることが有効かもしれませんから、最終的には個別にそこだけを調整したり判断基準にしない方がいいと思います。本記事でのジャケットには、ボタンスタンス自体が大きな問題にはなりえず、他の要素の方が調整を図るべきで、やり方次第ではこのボタンスタンスが非常に効果的なのではないかな と感じていました。

          既にご存知の内容もかなり含んでいたかと思いますが、ご容赦いただければと思います。

  4. Ogden Moleaw より:

    追記です。ルビナッチに絞って色々調べてみましたが、確かに若君ルカ・ルビナッチ氏はほんの少し低いボタンスタンス(ウエストラインからせいぜい1cm〜1.5cmくらい)のジャケットを着ている画像がよく見つかりますね。このブログとの関連を忘れないようにすると、ポケットの位置も低くしているように見えます(必ずしもそうする必要はないと思いますが)。マリアーノ・ルビナッチ氏と並び立つ写真など見ると色々と観察できるところがあって面白いです。
    また今回の記事で登場するジャケットがルビナッチ風の要素を持った型紙作りをしているかという点に関しては、そこそこ似ているが直接的に参照しているようには感じないという当初の印象に変わりなさそうです。少し伸びた肩はマリアーノ氏の好むスタイルにも共通していますがここはMr.linen様のオリジナル調整ポイントですし、それにしても肩の構造はもう少しあると思います(マリアーノ氏のジャケットも強く硬い肩ではないのですが、やはり上手に必要十分な構造はあります)。
    胸に関してですが、確かに本生地のジャケットと同様程度のフルカットには見えます。しかしここでのジャケットよりもカットが意図的で、適切な部分に適切な量の生地があり、型紙の設計が最初からそのように想定されたものと理解するのに十分な形状です。膨らんだ胸を想定していない型紙で数値を増やすよりも、シルエットの形成に効果的な型紙があってこそのスタイルだなとよくわかります。芯地の追加は多少の改善になるかもしれませんが、ルビナッチ風になるかというと怪しいでしょう。正直に言えば、自分もMTMで膨らんだ胸の再現を目指して数値を太らせてもらおうと思っていたのですが、これはかなり難しいなと勉強になりました。

タイトルとURLをコピーしました