こんにちは。
これまで私は、リネンスーツ(ジャケット、パンツ単品含む)は、ハリがあって仕立て映えのするアイリッシュリネンに限る、という偏った考えでしたが、もっと幅広く、様々なリネンに挑戦しようと今は考えています。
実際に、日本製リネンでスーツを作ってみましたが、予想を良い意味で裏切られ、非常に気に入っています。
今回新たに挑戦したのが、フレンチリネンです。メゾンエラールという比較的新しいフランスの生地ブランドです。
以下の記事で詳しく説明していますが、惚れたポイントは、一言で言えば「ツイードっぽいリネン」です。

リネンなのに重厚感のある生地感、リネンは無地が多い中珍しい、ツイードのような渋い色柄。どれも最高に格好良いです。
選んだ生地はこちら。ダークブラウンとベージュのチェックに、ピンクのラインが入っています。このピンク使いがにくいです。

日本製リネン同様、今回も働いているサルトでMTM(様々な体型補正を加えられるパターンオーダー)で仕立てました。
サルトの先輩社員に見てもらいつつも、最終的に工場へ送る数値データ(各所寸法や体型補正の情報)は、自分で考えて作ってみました。
先輩に任せた方が良いフィッティングにはなると思いますが、自分の勉強の為に、多少失敗しても良い勉強になると思って挑戦してみました。
ではまずは完成品をご紹介します。






点数は、自分としては85点くらいです。一つずつ詳しく見ていきます。
まずは全体のシルエット。肩周り、バスト、袖、ウエスト、全体的に少しだけ太めにし、柔らかいリネンのリラックスした印象、男性らしい印象を出すことを狙いました。








リラックス感、男性らしさ、という狙いは、良い感じに出すことが出来たと自分では思いますが、いかがでしょうか。
85点と述べましたが、マイナス15点はどの部分なのか。
一つは、ラペルの太さです。

9.5㎝にしており、私の中ではベストサイズと思っていたサイズをそのまま使いましたが、肩幅や胸幅を少し広くしているので、その分ラペルも気持ち太くしても良かった気がしています。
9.5㎝でも一般的にはむしろ太めな方なので、何もおかしくはないのですが、10.0㎝でも良かったと思います。好みの問題ですね。マイナス5点です。
もう一つのマイナスポイントが、一番下のボタンの高さ。一番下のボタンの高さは、腰ポケットの上辺と同じ高さじゃないと気持ち悪く感じてしまうのは私だけでしょうか。(シングルジャケットの場合のみ)
今回は、リラックス感を出すためにボタン位置を全体的に少しだけ下げ、ボタン間隔まで指定してしまったせいで、腰ポケットより5㎜程度、一番下のボタンが下に位置してしまいました。私のミスです。マイナス5点です。

最後が、肩パッドの厚さ。肩パッドは2㎜の極めて薄いものを入れています。生地自体がそれなりに厚い(410g)ので、パッドは薄くても問題ないと考えました。

実際に何の問題もないし、パッドのおかげで肩を保形しつつもリラックス感があり、バランスは悪くないとは思うのですが、もう少しだけ厚い方が、クラシックで格好良い気がします。
先輩社員の私物のアットリーニのツイードジャケットを着たのが、そう思ったきっかけです。

肩幅がしっかりと広く、肩パッドもそれなりに入っていて、堅苦しさはないのに男性的で、非常に格好良いと感じました。こんな雰囲気の肩周りの雰囲気にしたかったです。マイナス5点です。
以上が、デザイン面での自己評価でした。
デザイン面以上に重要なのが、着心地です。MTMで着心地を左右する大きな要素が、体型補正です。
体が前後左右どの方向にどのくらい傾いているか、肩や背中の出っ張り具合はどうか等を、着用者の体を見て、またゲージ服と呼ばれるサンプル服を着てシワの入り方などから、見極めていく必要があります。
先輩社員に教わりながら自分の体の特徴を数値に落とし込んでみた結果、着心地は抜群に良い仕上がりとなりました。背中から見ても、余計なシワは無く、それでいて可動域には必要な生地の余裕があり、腕を前後に動かしても突っ張りがありませんでした。

一日着てみて、暑がりの私は大汗をかいてしまいました。410gあるので、やはり真夏用ではなく春や秋が良さそうです。
むしろ、そんなにしわくちゃにもならなかったので、冬に着ても季節外れ感はそんなにないと思います。私は年中リネン男なので、冬にタートルネックの上とかに着るつもりです。

自分でスーツのオーダーをやってみると、生地やデザインだけでなく体型補正についても勉強になることが多すぎて、楽しくて仕方ありません。
より良いスーツを作れるように、学習と経験を積み重ねていきたいと思います。
以上です。
ありがとうございました。





コメント
国内外問わず最近流行りのMHリネン生地はここでも美しいですね。日本の気候でいいカントリージャケットになりそうです。
さて、フィッティングについてですが、「いかがでしょうか」とのことでいくつか感想を書き留めておきます。あくまで記事内の写真からしか考えていないので、今後意外と違った感じじゃん!と思う可能性もありますが。
最初の印象は「袖のテーパーが随分強いな」でした。本文を読むと実際には上腕部が太くされていることで先細り効果が強められている感じでしたが、袖の幅と長さのバランスに違和感がありました(違和感の基準が自分の経験=今まで見たことのあるジャケットなので相対的なものですけどね)。リネン生地であることを考えると、前腕も少し太くして皺や縮み対策をしたり風通しをよくしたりというやり方がより効くかなと感じました。
次に肩と胸ですが、意図的なフルカットのフィット感というよりも、半サイズ大きいジャケットを着ている人のように見える感じがします。肩の構造が少なめであることと、ハウススタイル(というか工場や元の型紙のスタイル)に合わない選択だったことが原因だと思います。後者について説明を加えますが、(おそらく)このようなクリーンチェストのジャケットのスタイルでは寸法数値を太らせても男性的なシルエットは作り出すことができないと思います。大きく男性的な形を生み出すドレープチェストは十分に構造化された上でもっと細かく調整されなければ実現できず、海外まで含めてもMTMでこれを実現できるところは事実上存在しなさそうです(フルオーダー/ビスポークでもドレープチェストは専用の訓練を受けていないと作り出せず、しかも数十年人気がないので本当に絶滅危惧です)。話を戻すと、胸と肩に関してはあまり狙いと成果が合っていないように見えます。それでも、背中から見て破綻はないので、大きすぎる既製服を着ているというよりも丁寧に調整をしようとした結果なんだなとわかるものにはなったと思います。
ではウエストもそうかというとまた別で、ここは好み次第で高い評価が得られることもあるかもしれないと思います。最近のブログ記事などを拝見していても、80年代後半~90年代のスタイルに近いものが好きになっているんだろうなと感じますので、そういった雰囲気には適っている気がします。昨今の流行でも若干そういう傾向があるので、トレンドにうまく馴染んでいるポイントにすら思えます。ただし、男性的なシルエットにこだわるなら、肩や胸(どちらもここでは失敗気味ですが)とのメリハリがあったほうがかっこいいものにはなったかなと思います。
残りは大した内容ではないですが、ボタンスタンスが少し低いのは個人的に好きです。ヒップポケットとの位置関係はこだわるところでもありませんし、低いというほど低くもありません。どちらかといえば3ロール2(段返り)の意味が全然ないなと感じるほうが個人的な好きじゃないポイントです。また、早速ヒップポケットのダブルジェットポケットが開いてきてしまっている点はなかなか周囲からの目が厳しくなるかもしれません。
全体として、90年代後半の南イタリア(ナポリ系?当時は北イタリアのローマ系スタイルのほうが圧倒的に人気でしたが)風のジャケットとしてよく作られているな~と思います。数値上大きめに作った部分は現状あまりよく見えませんが、逆にかなり厚手のセーターやタートルネックを着るのには最適かもしれません(リネンなのに?という点は既に乗り越えているところでしょうしね)。
最後にこのジャケットと関係のないところですが、ジャケットのウエストにシルエットを崩す「しこり」があるのがとても残念です。おそらくベルト(特にバックル)が厚く、ジャケットのラインを見出しているのだと思います。この点に関してはジャケットのウエストをゆるくするとかズボンの股上位置を調整するとかいう問題ではなく、ベルトの使用自体が問題になっています(比較されているDORSOのジャケットも同様の問題を抱えています)。
クラシックメンズウェアにおいてサスペンダー(ブレース)が好まれる点もここにあり、特にスリーピーススーツではウエストコート(ベスト)に干渉するのでベルトは事実上使用不可という認識もあるようです。折衷案としてイギリスでサイドアジャスターが使われたのも同様にジャケットのラインをきれいに保つ効果があるからですね。またベルトはその自重でズボンがずり落ちてしまう問題も抱えていますから、クラシックオタク仕草とだけ認知するのではなく、一度その実用性も検討するとよいと思います。靴との組み合わせを考えなくて済みますし(ベルトを購入する必要がなくなると予算も場所も節約できます)、特にスーツではジャケットとズボンの間で目立つ横線ができてしまって上下が綺麗に一体に見えなくなってしまう問題も解消できますしね!
あ、ベルトの件ですが、少なくともDORSO製のサマーツイードジャケットにはベルトを使っていないようですね。すみませんでした。が、それはそれでどうしてこんなふうになるのだろうとは思います。