こんにちは。
ジャケットのラペルは、ノッチドラペルかピークドラペルが一般的です。

ダブルにはピークドが大半、一方でシングルジャケットには、ノッチドが大半ですが、シングルピークドというスタイルもあります。
個人的には、アメリカのドラマ SUIT でハーヴィ・スペクターのスタイルが強く印象に残っています。

ノッチド、ピークド以外にも、タキシードによく見られるショール、他にはフレンチスタイルによく見られるフィッシュマウスと呼ばれるラペルもあります。

フィッシュマウスラペルについて、ご存知ない方のために軽くご説明すると、ゴージライン(上衿と下衿の境目)が通常は一直線なのに対し、フィッシュマウスラペルは、上衿が切れるところから下衿がくいっと上に上がるものです。
ピークドはさらに上に上がりますが、それよりは上がり方が控えめです。

名前の通り魚が口を開けているように見えます。
魚の口の開き角度が何度だとフィッシュマウス、何度だとピークド、と言った定義は私の知る限りなく、パッと見で尖っているとピークド、そこまで尖っていなければフィッシュマウス、と感覚で話されていると推測します。
今回取り上げたいのは、フィッシュマウスよりさらに控えめな(魚の口の開きは大きい)、セミノッチドというスタイルです。
呼び方は他にもあるかも知れません。
普通の一直線のノッチドより、下襟の先がほんの少しだけくいっと上に上がっています。


ちなみにセミピークド、という呼び方も存在するようですが、上述の通り、厳密な定義が無いので、あくまで感覚で、どのくらい上がっているか、で分けるしかありません。
普通のノッチドとピークドを両極端として、ノッチド寄りならセミノッチド、ピークド寄りならセミピークド、という分け方で良いと思います。
私がセミノッチドを知ったきっかけは、ドルソです。
ドルソで作ってもらったジャケットが、どれもセミノッチドになっています。


ちなみにサルトのオーダージャケットもセミノッチドです。

サルトで働いていて、様々なブランドのスーツを目にする機会がありますが、イタリアブランドや、イタリア寄りの日本ブランドで、セミノッチドのラペルにしばしば出会います。
例えば、ブルネロ・クチネリのジャケットは、ほとんどがセミノッチドになっています。

ところでセミノッチドは、何のためにあるのか。
何のために、下衿の先がくいっと上がるのか。
単なるデザインなのか、何か機能的に意味のあるものなのか。
調べても分かりませんでした。
ネットで調べると、定番のノッチドより少しひねりを効かせたデザイン、という情報もありましたが、本当なのかは分かりません。
以下の動画がヒントになったので引用します。
フレンチスタイルの代表的存在である、鈴木健次郎氏が、フィッシュマウスラペルについて話されていました。
鈴木健次郎氏はこう述べられています。
「上衿と下衿の90度の角に、チェック柄の90度の角を合わせ、柄が一部切れてしまわないようにするために生まれたディティール。」
つまり、デザインではなく機能として生まれたものということです。
それが範囲を広げていつしか無地にも適用され、デザインとして定番化した、ということでしょうか。
これはあくまでフィッシュマウスについての話であり、セミノッチドは違う背景があるのだと思いますが、とりあえずここでは、セミノッチドは何かしらの機能から生まれ、デザインになったもの、と推測しておきます。(それが何の機能なのかが分からないのですが)
少し話を展開すると、ゴージラインは、直線ではなく曲線を描いているものがあります。

ハンドカットしないとこの曲線は出せないらしく、ドルソでもサルトでも、オプションとして対応しています。
英国ではハンドメイドのスーツであってもゴージラインがまっすぐであることが多く、イタリアのハンドメイドスーツでは、カーブしているものが多い印象です。
カーブしたゴージラインは、機能的に何かが変わるのではなく、見た目の印象でハンドメイド感を増すためのデザインだと理解しています。
セミノッチドに話を戻すと、ゴージライン自体は直線であっても、下衿の先端だけくいっと上がると、カーブしているように見えることがあります。
横から見れば直線ですが、正面から見るとカーブしてるのに見えるのです。


セミノッチドも、フィッシュマウスのように何かしらの機能的必要性から生まれたディテールだろう、と上で述べましたが、
セミノッチドがカーブしたゴージラインに見えることを考えると、ハンド風に見せるためのデザインということなのか。
想像するに、それはないと思います。
そんな小細工みたいなことは、定番化しないと思います。
セミノッチドにどんな誕生背景があったのか、気になります。
ご存知の方、教えてください。
セミノッチドは、好みが分かれると思いますが、皆さまはお好きでしょうか。
誕生根拠が分からないと好きかどうかも判断しにくいなと思いますが、私はどちらかと言えば好きです。
師匠とするドルソの齋藤さんや、赤峰幸生さんもセミノッチドのジャケットを着られているので、それを見て、セミノッチドは格好良いんだ、という思い込みがあるだけかもしれませんが。笑
ちなみに、ジャケットのゴージラインとシャツの衿の開き角度の相性は、くいっと上がってる下衿の先端の角度か、上がるまでのゴージラインの角度か、どっちに合わせた方が良いか、という面倒臭い問題もあります。

これについては、くいっと上がるまでのゴージラインの角度に合わせる方が良いと考えます。
シャツの衿と距離が近い部分の方が、角度の相性がより目立つと思うからです。
セミノッチド、不思議なディティールですね。
以上です。
ありがとうございました。



コメント
リネンさん、こんばんは(またお前か!)。
これまた予想ですが、詰襟(襟が立っているスーツ)の名残かなと思います。
詰襟の場合、一番上の釦(首元の釦)が襟を立てた(閉じた)場合にゴージラインが水平にになるように作ると、セミノッチドになると思います。
うちにセミノッチドのジャケットはないのですが、ダブルのトレンチコートがそうでした。
手元のにある先日ヤフオクで買った買った資料「Fashion in Photographs, 1860-1880 (Batsford Fashion Guides)」を観たところ、色々混在している(いわゆる普通の真っ直ぐなノッチドも、ピークドラペルもある)のですが、セミノッチドもありました。
特にフロックコートが多いようです。
折襟が普遍化していく過程で色々デザインが生まれたのかなと予想しています(となると、ゴージラインが真っ直ぐな方が後から生まれたのかな?)。
K.M.さん、こんにちは。
教えていただきありがとうございます。
詰襟の名残、納得しました!その可能性が高そうですね!!
確かに、ゴージラインがまっすぐな方が後からということもありそうですね。
何だか誤字が多くなってしまいました。
Yシャツが分かりやすいかもです。
作りのいいYシャツですと台襟と身頃がカーブしていますが、折り返してみるとあら不思議、ですね。