こんにちは。
ミスターリネンとして活動して来た成果か、リネンに関心を持たれる方が少しずつ増えているのを感じます。
というのは嘘で、私のブログを見てリネンアイテムを作りたいとご相談頂いたケースは、まだ数えるほどしかありません。
ミスターリネンのブログ活動がまだまだ力不足ということなので、もっと頑張って参ります。
それはさておき、先日サルトで海外の方からスーツオーダーのご相談がありました。
最初はグレーのモールスキンのダブルのスーツをご所望だったのですが、あれこれ話しているうちに、結局ベージュのアイリッシュリネンに決まりました。
自分の好みを押し付けたつもりは無いのですが、リネンへの愛が届いた、と思うことにします。笑
元々モールスキンをイメージされていたので、ヘビーな生地が良いと思い、アイリッシュリネンの中でも最も重い部類に入る、530gのEirinnという、スペンスブライソンの生地をご紹介しました。

重さはありますが、綾織のせいか、定番の平織りのTropical などのハリ感はあまりなく、柔らかめです。
このヘリンボーンの柄も、絶妙なベージュ~オフホワイトの色合い(写真では右上の生地)も、最高に格好良いです。
私の私物で、スペンスブライソンのTyrone というシリーズの380gのジャケットもお見せして、これより厚いが、柔らかさがある、という比較でご説明し、むしろこの厚さがイイねと思って頂きEirinnに決まりました。

お話を伺っていると、背中も袖も含めて、裏地は完全に無しをご希望とのことでした。

日本では、どのテーラーに聞いても、背裏無しはまだしも、袖裏無しはオススメしない、という意見にしか出会ったことがないですが、海外では袖裏無しが割と一般的なのかもしれません。
正直、私が裏地完全無しを未経験なので、良いのか悪いのか、分かりませんでした。
良いとわかっていれば良い、悪いとわかっていればやめた方が良い、と伝えられますが、未経験である以上、適当なことは言えません。
袖裏無しだと、着る時に袖に腕が通りにくい、生地に汗が直接付く、というデメリットは想像がつきますが、
袖裏無しは半袖を着る時には逆にメリットになるし(裏地が直接肌に付かない)、生地に汗がついても、丈夫なリネンなら比較的問題なく、クリーニングや洗濯にも強いので、大きな問題ではありません。
それよりも、肩周り、胸周りにしっかりと構築感が出ず、スーツとして格好良くならないのでは、と心配しました。
というのも、裏地がないので、肩パッドも、裄綿(袖の付け根に入れる保形用の芯材)も入れられません。

でも、ご本人の希望ですし、生地自体の厚さが充分にあるので、裏地が無くても生地だけである程度形は保たれるだろうと想像しました。
定番の平織りの、360gのハリのあるアイリッシュリネンで、裏地完全無しで作られたモデルのDavidさんのスーツも以前に見ており、肩パッドと裄綿無しでも肩周りの形が保たれるのを確かめられていたのもあります。

裏地無しのメリット・デメリットをお伝えした上で納得頂き、進めることになりました。
遅くなりましたが、完成したスーツをご覧下さい。

懸念していた肩周りは、充分に構築感があります。
胸周りにも自然な膨らみがあり、立体的で美しいです。


ご本人の風格、体型も相まってですが、非常に格好良くありませんか。
肩パッドも裄綿も無いと言いましたが、前身頃には薄めの毛芯を入れています。

今回は以下写真のような大見返しという仕様ですが、前身頃も毛芯無しにすることもできましたが、それではいわゆるアンコンジャケット、ペラペラなジャケットになってしまいます。

着ていて楽にはなるでしょうが、長く形を保ったまま着てもらえるように、前身頃には毛芯はあった方が良いと考えました。
他にこだわった点としては、基本サイズからアームホールを数ミリだけ大きくしました。

バストが大きい方だったので胸周りを大きくするのに合わせて、アームホールも連動して自動的に多少大きくなりますが、
それ以外の理由で、袖裏無し&アームホール小さい、だと、袖に腕を通すのが相当大変になってしまうと思ったからです。
とは言えアームホールが大きすぎても、腕を動かしにくかったり、見た目が格好悪くなるなど、トレードオフの関係で、程よいバランスを見極めなければなりません。
他にも、姿勢が良い人、背中が発達している人に合う体型補正を、お客様の体を慎重に見て測った上で加えました。

デザインの面では、ご本人のアンダーソンシェパードのビスポークのスーツに似せて欲しいというご要望がありました。
サルトでメインで作っているスーツは、どちらかと言えばイタリア寄り、でも癖は極力少ない中庸なスタイルです。

英国に寄せて構築的な肩周りを作ることも対応可能ですが、私がそれを試したことがないので上手くいく自信がありません。
サルトに置いてあるダブルのサンプルをお見せすると、その雰囲気も良いねと納得いただき、でもラペルはもっと太い方が良いとお伝え頂きました。
私物のリネンジャケットのラペル幅が12センチなのですが、試しに着て頂いた上でこのくらいが良いとのことで、12センチで行くことになりました。

ボタンも私のものと同じミディアムブラウンのホーンボタンにされました。
個人的にはナットボタンも良いと思いますが、どっちもアリです。
全体的なシルエットは、古今東西通用するクラシックど真ん中を目指しました。

リネンにタイトなスタイルは合わないと思うので、程よく余裕のあるシルエットです。
ご紹介は以上です。
ブログでの紹介を承諾くださったAさん、ありがとうございます。
以前の記事で紹介しましたが、全く同じEirinnの、色違いでオリーブグリーンの生地で、私も私物のスーツをオーダー中です。
Aさんの影響?勇気をもらい?完全裏地無しに私も挑戦することにしました。
完成は11月後半の見込みです。
普通ならリネンスーツは11月ごろから春までは着られませんが、年中リネンを着る私にとっては、530gのリネンなんて、冬にぴったり!という生地です。
出来上がったらご報告します。
ありがとうございました。




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