こんにちは。
ジャケットのお尻部分にある切れ目=ベント。
センターベント、サイドベンツ、ノーベント、の3種類が主流です。
ノーベントは、礼服以外ではあまり見ることはありませんが、テーラーによってはハウススタイル=定番デザインとしているところもまれにあります。
私が知っているところだと、チッチオ、タイユアタイ、など。


このブログでは何度も書いているのですが、私はノーベントが好きです。
私のスーツへの考え方として、英国らしい、イタリアらしい、〜テーラーらしい、という特徴がなるべく無い、没個性なスーツが1番だと思っています。
世界中どこに行っても、時代が変わってスーツのトレンドがどう変化しても、悪目立ちすることはなく通用する中庸、無難なスーツを持つのが賢い選択だと思うのです。
ノーベントは少数派なので、無難なスーツとはそこだけ矛盾してしまうのですが、どうしても好きで、好きをやめられないのです。
ノーベントが好きな理由は、無駄を削ぎ落としたストイックな印象があるからです。
似た理由で、腰ポケットもフラップ無しの切りポケットが好きです。

ベントはそもそも、乗馬や剣を使う時に動きやすくするために誕生したディテールらしく、確かにあった方が動きはしやすいです。
現代では、ジャケットを着て乗馬やハンティングをする人も少ないと思うので、動きやすさはそんなに必要ないはずです。
現代でもベントが必要あるとすれば、椅子に座る時です。
お尻が隠れるくらいのクラシックな丈のジャケットを着て椅子に座ると、裾を踏みつけてしまいます。
ベントがあると、裾がヒラっと後ろに払われて、踏みつけずに済みます。

この問題は、裾(ヒップ)の大きさ(広さ)にもよります。
お尻が隠れるクラシックな丈の長さのジャケットの裾が狭く、お尻にピタッとくっついていると、座る時は確実に踏みつけます。
タイトなワンピースを着ているのと同じ状況です。
踏みつけたくないからとジャケットをまくり上げる事もできますが、そのまま立つと、お尻にジャケットが引っかかり、お尻丸出しになります。
同じ丈の長さで、裾が広いジャケットだとすると、裾が広がったワンピースと同じで、座っても踏みつけず、そのまま立っても裾が勝手にストンと落ちてくれます。
なので、ノーベントのジャケットは、裾がある程度余裕のある寸法の方が着やすいです。
しかし、ジャケットの裾は、ブカブカ過ぎると格好悪いのです。



タイト過ぎてお尻の形が出るのはダメですが、なるべく余りが無く、生地が地面に向かって垂直にストンと落ちるくらいが最も格好良いと私は思います。
ノーベントの無駄のなさが最も綺麗に表現されると思うからです。
動きやすさを優先して裾は余裕を持ったサイズにするか、見た目を優先して余裕のないぴったりサイズにするか。
難しい選択です。
個人的にこれまで何度かノーベントジャケットを作ってきて、見た目を優先してぴったりサイズにする方が良いという結論に至りました。
なぜなら、ジャケットはワンピースと違い、ボタンを開けられるから。
ボタンを閉じているとぴったりのジャケットでも、ボタンを開ければ裾は十分に広がり、座る時も裾を踏みつけずに済みます。
このジャケットは、最初は裾にゆとりがありましたが、どうしても気になり、裾を一周で4センチほど詰めました。


詰めた後でも生地のゆとりは少しだけありますが、あまりやり過ぎると、生地がお尻の形を拾ってしまい格好悪いです。
目安としては、お尻の形を拾わない程度、で留めるのが良いと思います。



上記は全てシングルジャケットの場合の話です。
シングルなら、座る時にボタンを開けられますが、ダブルになると基本は閉じたままなので、裾をタイトにすると、座る時に裾を踏みつけてしまいます。
そう考えると、ダブルでノーベントの場合は、タイトな裾は諦めて少しゆとりを持たせるのか、踏みつけないように着丈を少しだけ短くするのか、ボタンを頻繁に開閉するか、常にフロントボタンを開けたままにするか、しかなさそうです。
個人的には、裾にゆとりを持たせるのが1番ナシで、着丈を短くするのと常にボタンを開けたままにするのが次にナシ、1番マシなのがボタンを頻繁に開閉することです。
デザインを犠牲にするより、行動で頑張ってカバーする方が良いと思うからです。
それか、なるべく座らなければ良い話ですね。
おしゃれは我慢ですね。
以上です。
ありがとうございました。


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