インンプリーツの方が本当にクラシック?

クラシックのルール研究

こんにちは。ミスターリネンと申します。

クラシックなスーツのトラウザーズ(スラックス)と言えば、プリーツ(別名タック)が付きます。腿回りにゆとりを持たせ、動きやすくする目的があります。

私がクラシックの教科書として頻繁に参照している落合正勝さんの著書には、「クラシックなズボンの前のプリーツ(タック)は左右に2本ずつが原則で、クラシックを体現するプリーツは外側に向く」と記載があります。

スーツにおいてプリーツ無し=クラシック道から外れた間違いだ!と言い切って良いのかは私には分かりませんが、とりあえずこの記事においては、プリーツ有りのトラウザーズがクラシック、という前提で話をします。

今回研究したいテーマは、インンプリーツ vs アウトプリーツどちらが良いのか(クラシックなのか)、というテーマです。

順を追って研究していきます。

プリーツの種類

トラウザーズにプリーツを入れる時に、考えるべきポイントは大きく3つあると私は考えます。

プリーツの数

プリーツの深さ

プリーツの向き

プリーツの数

プリーツの数については、1つもしくは2つ。3つ以上入っているトラウザーズもありますが、クラシックの範疇からは外れます。

冒頭で述べたように、最もクラシックなのは2つので、クラシックを目指す私のような人間にとっては2つに決定、好みでない方は、1つもありかもしれません。

ただ、1プリーツだとクラシック度合いが下がるのかと言えば、難しいところです。

例えば、クラシック界の重鎮赤峰幸生さんは、1プリーツがご自身のスタイルとおっしゃっています。

1でも2でも、入ってさえいればクラシックのルールは守れている、という結論にします。

プリーツの深さ

プリーツの深さについては、浅すぎると機能的に意味がないですし、ある程度深めが良いと思いますが、そこまで細かく気にする必要もないかもしれません。

ファッションジャーナリストの飯野高広氏によると、プリーツの深さについては、1.5~2センチが一般的と記載があります。

トラウザーズ解体新書 第三回:プリーツを考える | MUUSEO SQUARE

私の手持ちのトラウザーズは、2プリーツのものの場合、内側のプリーツが1.7~2.0センチ、外側のプリーツは0.5~1.0センチでした。

内側1.7センチ
外側1.0センチ
内側2.0センチ
外側0.5センチ(浅すぎ)

写真のブラウンのトラウザーズの、外側のプリーツの0.5センチは浅すぎて、機能的には意味が無い飾りのような気がします。

2センチより深いとやり過ぎ感が出る、のかどうか分かりませんが、極端に深いプリーツを入れようとするブランドもテーラーもいないと思うので、プリーツの深さは0.5センチのように浅過ぎなければ、何センチでも良い、という結論にします。

プリーツの向き

最後にプリーツの向きについて。

今回メインで取り上げたい内容です。

プリーツの折り返しの向き(=窪みが向いている向き)が内向きならインプリーツ、外向きをアウトプリーツと呼びます。

インプリーツ。(ネクタイは長いくらいがハズシでかっこいい、という勘違いをしていました)
アウトプリーツ。

飯野高広氏による、インプリーツとアウトプリーツのメリットデメリット、そして国による違いを簡単にまとめます。

インプリーツ

インプリーツのメリットは、歩行の際に楽。

(プリーツ入りの時点で、もも、下腹部周りに余裕ができて楽にはなるので、インとアウトで差はわずかだが。足を前方に動かす際に、アウトプリーツよりインプリーツの方がプリーツの開きが大きくなるため、楽らしい。)

インプリーツののデメリットは、オーダー品などしっかり体型に合ったトラウザーズでないと、お腹が出ている人は出っ張りが目立ってしまう。

なぜなら、お腹の出っ張りによりプリーツの付け根が開いてしまうから。

さらに、クリースライン(トラウザーズの真ん中をプレスした時に出来る折り目)がプリーツの開きに影響されて、まっすぐでなくなってしまう。


この写真は2枚とも、生地がリネンだから型が付きやすいというのもありますが、印を付けた箇所のクリースラインが<>の形に若干曲がっています。

アウトプリーツ

アウトプリーツのメリットは、多少お腹が出ていても、それを隠してくれる。なぜなら、お腹の出っ張りにより、プリーツの付け根が開いているのが、正面から見ても分かりにくい。(開かない、というわけではない)

プリーツとクリースラインが繋がり、上から下へまっすぐ一直線になりやすいということ。

このメリットのおかげで、幅広い体型の人が履くことになる既製品では、もっぱらアウトプリーツが採用される。

アウトプリーツのデメリットは、特にない。インプリーツが歩行が楽と言ったが、あくまで比較上の話で、アウトプリーツが歩きにくいということは全くない。

英国=インプリーツ?

インプリーツの方が英国っぽい、というのを聞いたことがありますでしょうか?私は聞いたことがあります。

英国要素が強いブランドやテーラーのトラウザーズは、オーダーの場合が多く、その人のサイズにピッタリ合っていることが前提です。

つまり、お腹が出ていても、体に合って作られるオーダーならそれを隠せるため、お腹の出っ張りによりプリーツの付け根が開いてしまう、ということはありません。

それならば、比較的歩行も楽になるインプリーツの方が良いだろう、ということで、英国スタイルではインプリーツが主流になったようです。

それに対し、万人向けに作らなければならない既製品や、オーダーであっても、機能より美を追求し、歩いた時でもクリースラインを綺麗に保つことを重要視したイタリアやフランスのトラウザーズは、アウトプリーツが主流である。

と飯野高広氏は述べられています。

より英国っぽいと言われるインプリーツは、アウトプリーツよりクラシックと言われることも多いです。

スーツの源流である英国=クラシックの源流、というのは間違いじゃないと思うので、インプリーツの方がクラシック、と言ってよいと考えます。

まとめ:結局どっちが良い?

インかアウトか、結局どちらが良いのか。

これまで述べた理由から、クラシックを追い求めるなら、微々たる差で、インプリーツの勝ちです。

したがって、まとめると以下の順でクラシック度合いが高まっていくと考えます。

1アウトプリーツ<1インプリーツ<2アウトプリーツ<2インプリーツ

(ところで既製品で1インプリーツってほとんど見なくないですか?私の調査不足でしょうか。)

ちなみに私が信奉する落合正勝さんの本には、「クラシックを体現するプリーツは外側に向く」と書かれていますが、今回は珍しく反対意見となりました。

繰り返しますが、プリーツが入っていれば、クラシックの範疇には収まります。

私は赤峰さんのように自分のスタイルがまだ固まっていないので、これからもインもアウトもどちらにも偏らずクラシック道を進んでいこうと思います。

コメント

  1. アノマリー より:

    単なる私見ですが
    内向きタックはヨーロッパ
    外向きタックはアメリカっぽい感覚です
    内向きは秋冬物
    外向きは春夏を感じさせます
    どちらかなら内向きを好みます
    尤も
    アメリカ商品
    アメリカナイズはたまらなく嫌なので
    家に置きたくありません
    アメリカンな食物も嫌なのです

    • Mr. Linen Mr. Linen より:

      コメントありがとうございます。
      内向きはクラシックさがあって格好良いですよね。
      アメリカものはお好きでないのですね。ご自身の中で好みがはっきりしていると、もの選びにも迷いが生まれにくくて良いですね。

  2. Ogden Moleaw より:

    補足します。(いきなり何様なんだというツッコミをされつつ)
    プリーツは元々、ズボンの脚(見頃)をウエストバンドにまとめるためのものです。シャツの袖口もプリーツやギャザーで袖の生地を袖口にまとめていますよね。もちろん、実力あるカッターの裁断によって、ズボンの脚は美しく形作られ着心地よくウエストバンドまで導かれますが、ヒップのより直径が大きい生地分を小さな直径のウエストバンドに合わせるためにはある程度の余剰をどうにかしてあげる必要があるのです。ジャケットの肩であればいせ込みのプロセスと同じ原理です。
    プリーツがなくても、ズボンにはダーツを用いて同様の処理が行われることがあります。(プリーツの有無に関わらず、ズボン後ろ側、ポケットの上にはウエストバンドあたりに2本程度のダーツが見られる場合が多いです。)ダーツはプリーツを裏で縫い付けているようなものですから、実際上の処理は同じことをしているイメージです。
    では、よりすっきり見えるとか好まれることの多いフラットフロント(プリーツなし)やダーテッドフロントに比べて、プリーツフロントを選ぶ理由はなんでしょうか。それは、プリーツは都合に合わせて開くことができる点にあります。座る時、歩く時、ポケットに手や物を入れる時。そうした際に適宜プリーツが広がることで快適性が増します。また、ウエストバンドまでズボンのクリースが伸びているように見えることが美しいと感じて好ましく思う人もいますね。
    では、フォワードプリーツ(いわゆるインタック=内側向きのプリーツのことです)のメリットはなんでしょう。生地内で触れられていない点としては、構造上外側の生地を内側に巻き込んでいることでより細くスリムに見えることと、同様に構造上ポケットに膨らみを持たせることができるので手や物を入れる上で快適であることにあります。記事でご指摘の通り、フォワードプリーツは開いた際にクリースが歪みます。
    最後に発祥についてですが、フォワードプリーツはもともとイギリスで一般的であったことは確かなようです。しかし、既製服市場での都合によりリバースプリーツ(いわゆるアウトタックですね)が用いられるという言説には疑問があります。実は、イタリアではいわゆるオーダーでのズボンにおいてもリバースプリーツが伝統的に普通なのです。こればかりは好み(国民的な好み、価値観)の問題に近いようです。また、オーダーによるよりよいフィット感を持ち出すと、20世紀中頃からは各テーラーがフラットフロントのズボンにこだわりだします。先述の通り、カッターの裁断の腕でなるべくフィットさせるという気概もありそうですが、やはりすっきりした見た目を追い求めていくようになったようです。実質フラットフロントの仲間というか一部ダーテッドフロントという技術もイギリスのテーラーから見られやすくなりましたしね。

    • Mr. Linen Mr. Linen より:

      Ogden Moleaw様、コメントありがとうございます。
      とても分かりやすいご説明で、私の知らないことばかりで、勉強になりました。
      プリーツはいせ込みと同じ原理と言うのは腑に落ちました。
      またインとアウトの違いについて、見た目の違い、機能性の違いも一段深いご説明をいただき、理解が深まりました。
      国による違いについては、一般的に言われている英国とイタリア、という分類も鵜呑みにしない方が良さそうですね。フラットフロント(の仲間)も英国でも少なくないのですね。

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