こんにちは。
ミスターリネンと申します。
クラシックなスーツスタイルがお好きな方であれば、大抵の方が知っているであろうDORSO(以下敬称略)というテーラー。
神戸の老舗COLから独立された齋藤力さんが、2022年に設立されたテーラー、ブランドです。
私は通い始めてからまだ半年程度ですが、既にスリーピーススーツを1着、単品ジャケットを1着作ってもらい、大変満足しております。
私は今後は、オーダー品に関してはDORSOだけにしようかな、と思っています。
都内だけでも優れたテーラーは多く存在しますし、私はそのほとんどに行ったことが無いので、幅広く試して比較検討した結果、というわけではありません。
が、既に100点のテーラーに出会えたので、110点、120点はどこか他の所にあるのではないか、と探そうという気にはなりません。
具体的にDORSOの何が良いのか。
私なりの考えをお伝えさせてください。
クセの無さ
私が考えるDORSOの特徴の一つが、デザインの普遍性です。
私の好みでしかないですが、デザインの特徴が出ているスーツより、普遍的な、地味とも言えるスーツの方が好きです。
英国らしい、イタリアらしい、~テーラーらしい、というのが少なければ少ない方が好みです。

スーツにおいては、デザインで特徴を出すのではなく、生地やコーディネートで特徴を出していく方が格好良いという考えです。
どのテーラーにも、いわゆるハウススタイルと呼ばれる、好みのデザインがあると聞きます。
英国サヴィル・ロウの某テーラーのハウススタイルは、ジャケットの前を留めるボタンが1個らしいです。
そのような誰の目にも分かる特徴的なスタイルの違いもあれば、パターンの取り方など、私のような素人の目には違いが分からないスタイルの違いもきっとあるのだと思います。
DORSOのハウススタイルについては、

ジャケット前身頃のダーツを、ポケットの下まで貫通させるという部分がやや特徴的ではあります。
ラペル幅も、現代の平均よりは、ほんのわずかに太めと言えるかもしれません。
ゴージラインの角度も、現代の平均よりは、やや急寄り(地面に垂直寄り)と言えるかもしれません。
それらを踏まえたとしても、全体の印象は良い意味で「普通」だと思いませんか?
上述した特徴は、あくまで現代既製品で展開されているスーツの平均値と比べたら、少し特徴的と言えるのかもしれませんが、クラシックの範疇からは全く逸れてはいないはずです。
私なりにクラシックを勉強した上で、そう考えています。
着心地の良さ
もう一つの特徴が、着心地です。
オーナーの齋藤さんは、ブログを読んでも、直接話をしても、特に着心地を重視されているのだと感じます。
私はスーツのオーダー経験が豊富な人間ではないですが、今まで着てきたスーツの中でDORSOのものが最も着心地が良いです。
着心地に直結するのが、首~肩にかけてのフィッティングだと聞きますが、そこに並々ならぬこだわりを持たれているのだと思います。


技術的なことを具体的に述べられないのが悔しいです。
せいぜい私にも分かるのは、イセ(布同士を縫い合わせる際、片方の布の量を多くすること)の量が多いことくらいです。
採寸するフィッターであると同時に、スーツをゼロから作れるビスポーク職人である齋藤さんが、自らの目でフィッティングをチェックするので、具体的にどこの寸法をどのようにすれば良いか、工場へ伝える際の精度がとても高いのだと思います。
また着心地の良さは、デザインの普遍性に通じる部分もあると思います。
例えばジャケットの袖が細かったり、ウエストがタイトすぎると、当然窮屈で着心地は悪くなります。
逆に緩すぎても、余った生地が邪魔になり、動きが阻害されます。
普遍的なサイズ感が最も快適になると思います。
ビスポーク職人である
DORSOのお客さんの大半が、オーダースーツ経験者らしいです。それも、量販店の格安オーダーなどではなく、フルオーダー、ビスポークの経験がある人も少なくないそうです。
そういう目の肥えた人たちがDORSOを選ぶ最大の理由は、オーナーの齋藤さんがビスポーク職人であるからだと私は推測します。

DORSOのメニューには、いわゆるパターンオーダーのMTM(Made to Measure)と、パターンをゼロから起こすビスポークの両方があります。
一般的にMTMはビスポークと比べて安価になりますが、採寸やフィッティングチェックをする人によって、仕上がりには大きな差が生まれると思います。
例えばスーツの作りを何も知らない私は、ハサミも針も扱えないので当然ビスポークのスーツは作れませんが、MTMのスーツなら作れます。
他人の体の寸法を自分流でメジャーで測って、各数値を表に記入して、工場へ送れば、形だけのMTMスーツは完成するからです。
ですが、当然それでは見た目も着心地も低レベルなスーツしか出来上がりません。
スーツを自分でも作れる人にしか分からないポイントがあって、それを具体的に数値化して、工場に伝えるという技術こそが、レベルの高いMTMスーツを生み出すのだと思います。

もちろん工場側、作る側の技術も同じくらい重要で、差が生まれる点だとは思いますが。
仮縫い無料
DORSOの大きな特徴が、仮縫いが初回無料であること。
仮縫いが無くても、完璧なスーツを一発で仕上げることが出来る可能性は0%だとは言い切れませんが、あるかないかで言えば、仮縫いはあった方がベターに決まっています。
DORSOの齋藤さん自身、仮縫いで直しを加えなかったことが無いと言われており、やはりより良いフィッティングには仮縫いは必須と言えるのでしょう。
(ちなみに噂で聞きましたが、ジョンロブロンドン(ジョンロブパリとは別)のビスポークは、仮縫いが無いらしいです。仮縫い不要なくらい高い技術力を持っていると捉えることも出来ますが、恐らく違います。顧客が金持ち過ぎて、1足目は実質仮縫いのような扱いで失敗前提と考えており、何足かを経て完璧な靴が出来あがれば良い、という人が多い、ということかもしれません。)
私は初回はスリーピーススーツをオーダーしましたが、初回にジャケット単体にしてしまうと、仮縫いサービスはジャケットにしか適用されず、今後スリーピーススーツをオーダーしたくなった時、ベストとズボンの仮縫いを有料で行わなければならなりません。

今後も通う可能性がある方は、初回はスリーピースがお得です。
センス
最後にセンスについてです。
抽象的なポイントですが、格好良いスーツを作るには、良いセンスが必要不可欠です。
美容師さんと同じで、いくら技術があっても、センスがないと、格好良い髪型にはなりませんよね。
人様のセンスを論じるのはおこがましいですが、齋藤さんのセンスは素晴らしいと感じます。
インスタグラムを見れば、着こなしを沢山見ることが出来ます。
ご本人の話を聞いてても、若いころから買い物をしまくってきて、今でもしまくっている、「服バカ」だと思います。(敬意をこめて)
本当にお洒落な人は、例外なく服バカだと私は思います。
また、センスとは、アイテム同士を合わせるコーディネートだけに限った話ではなく、アイテム単体においても当てはまる話です。
ジャケットのデザイン、着丈等の寸法、合わせるボタンの素材、色などのディティール選びも、センスが求められます。
それらすべてを、いちいち客側が指定しなくても、お任せすることで理想のスーツが完成するには、作る側のセンスが重要になります。
客側が一般人である場合は、自分の考えを入れてディティールを決めるより、プロにお任せする方が確実に格好良いものが出来上がります。
とにかくこの章で言いたいことは、齋藤さんにお任せすれば間違いない服が出来上がる、ということです。
最後に:金額について
最後に、金額についてお話します。
私の場合、最初にオーダーしたスリーピースが約28万円。(25万+オプション3万)
二回目の単品ジャケットが約18万円。(15万円+オプション3万)
MTMとしては、特別安い価格ではないと思います。
もっと安い所を探せば、いくらでもあります。
しかし、安い所にはない付加価値がDORSOにはあります。
ビスポーク職人が採寸、フィッティングチェックをしてくれるというのが最大の付加価値です。(「ビスポーク職人である」の章で述べた内容です。)
もう一つの付加価値は、センスです。着心地は良くても、格好悪いスーツは着たくないので、齋藤さんのセンスが散りばめられる分の料金も加味すると、妥当というよりは安いと言えるかもしれません。(「センス」の章で述べた内容です。)
そこに仮縫い無料が付くと考えると、もはや激安なのかもしれません。
自分のスタイル、好みが固まっていて、DORSOの作品の写真を見ても全然ピンとこない、という方以外は、絶対に満足できるテーラーだと思います。
以上です。
ありがとうございました。
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