本物のクラシックスーツが欲しいと思った時、必ずしも欧州の名テーラーに行かなくても、日本にも優れたテーラーさんは沢山います。
でも、実際にオーダースーツを作ろうとなると、どの日本人テーラーが良いか、選ぶのが難しいですよね。
英国、イタリア、フランス等で長年修行し、完全に一人で、採寸、生地のカット、縫製まで行っているような方にお願いするのが、最も理想的だと思いますが、私のような一般人には手が出せないほどの金額であることがほとんどです。
そういう所以外だと大抵は、お店でヒアリング、採寸してくれる方と、実際に作る職人さんは別というテーラーが多いと思います。
何を基準にテーラーを選ぶべきか、そして、オーダーの際は、あれやこれやとディティールを指定せずに、お任せにした方が良いと思う理由を、紹介します。
偉そうに聞こえてしまうこともあるかと思いますが、アドバイスなどというおこがましいものではなく、ご提案と理解いただけると幸いです。
テーラー選びの基準
良く言われることかもしれませんが、そのテーラーの作品を見て、自分が好きと思えるかどうかを基準に選ぶのがベスト、と私は思います。
なぜなら、最終的には、作品の出来はそのテーラーさんセンスがすべてだからです。
髪を切る時、おしゃれな芸能人の髪形の写真を1000円カットのスタイリストに見せても、同じような仕上がりになる可能性は低いですよね。
人気の美容室のスタイリストならば、写真の芸能人そっくりにするどころか、それ以上に本人に似合う仕上がりにしてくれるかもしれません。
「テーラーのセンスなんて関係ない、俺が隅から隅までディティールを指定すれば、望む通りの仕上がりになる。」わけではないことは、想像に難くないと思います。
ディティール指定は最小に
いざこのテーラーさんにお願いしよう!と決めたとして、注意すべきがディティールを盛り込みすぎないことです。
私服がおしゃれな人ほど、スーツにもおしゃれさを取り入れようとする場合があります。
例えばボタンホールの糸の色を目立つ色に変えたり、裏地を柄物にしたり。
せっかくオーダーなのだから、オーダーと分かりやすく、他人とも被りにくい方が良い、ということでしょうか。
スーツの着方は人それぞれなので、それも否定するつもりはありませんが、私は「クラシック」が最も格好良いという考えです。
クラシックなスーツには、余計な遊び、アレンジはありません。地味だけど上質なスーツが一番格好良いと思います。
仮に選んだテーラーさんがクラシックより派手好み寄りだった場合、ディティールを指定しなくても、勝手に?入れられる可能性もあります。
いずれにしても、最初の段階のテーラー選びが最重要になるというわけですね。
お任せがベスト
余計なディティールは加えないにしても、ジャケットをダブルにするかシングルにするか、ラペルの幅は何センチか、着丈はどのくらいか、ボタンの数は何個にするか、など、基本的な仕様を決めなければなりませんね。
私は、そのあたりもテーラーさんに任せるのがベストだと思います。
映画や雑誌などで、格好良い着こなしの紳士を見て、それと同じようなスーツが欲しい!と思うことがあるかもしれません。
理想とするそのスーツを元に、生地と、ダブルかシングルか、スリーピースかツーピースか、くらいは希望を伝えても問題ないと思います。
私のようなアマチュアであれば、それ以上指定してしまうと、後で後悔しかねません。
信頼できるテーラーさんであれば、クラシックを熟知しています。
クラシックを知り切れていない私のような人が自分で選んだ仕様が、後にクラシックをもっと知った時に、クラシックから外れていると感じ、気に入れなくなってしまう恐れがあるからです。
例えば、ラペルの幅。シングルのジャケットの場合、クラシックなラペル幅は8.5-10センチです。
(落合正勝氏と、アトリエベルン竹内大途さんの情報から)
ラペルが11センチくらいの太めで格好良い、かつクラシックな着こなしをしている人がいるのも事実です。
それをマネして11センチで作ったとして、ずっと気に入れる可能性もありますが、もう少し細くしておけばよかったと、いつか思うようになる可能性もあります。
好みが変わらないという絶対の自信がないなら、教科書通り、奇をてらわない無難を選ぶ方が安全です。
ちなみに現在の私は、11センチくらいでも格好良いと感じます。むしろ、8.5センチでは細すぎではないか?と思っています。
しかし、「現在の私」の感覚をそこまで信用もしていません。
クラシックを知れば知るほど、知識に合わせて自分のセンスも変化しているのを感じるので、今後もさらに変わっていくと思っています。
クラシックを知り尽くしたテーラーはどこにいる?
この人の言うことなら絶対大丈夫、と信じ切れるテーラーはどこにいるのか。
その答えは、どこにもありません。
クラシックには流派があり、同じ国の中でも、色々なスタイル、流派があります。
どの流派であっても、クラシックの範疇に収まっていれば、すべて正解なのです。
例えば自分がイタリアスタイルが好きなら、イタリアスタイル推しのテーラーの中から、好きなところを見つければ良いと思います。
誰を信じるかは、あなた次第、ということですね。
もし英国的クラシックを追求したいのなら、アトリエベルンの竹内大途さんが最も参考になると思います。
余計な遊びを一切入れず、基本に忠実であるべき、特に若いうちは、というお考えだと理解しています。
私はその考えにとても共感します。
私はイタリアスタイルも大好きで、今まではイタリア一辺倒だったのですが、英国スタイルにも触れたいと最近は感じています。
実際にアトリエベルンに伺い、ジャケパンを1着オーダーさせてもらいました。
完成前ですが、クラシックで素敵な作品に必ずなると思います。その時の記事は以下です。
私自身は、スーツに興味を持ち始めたころは、おしゃれな人のマネで、ネクタイの大剣より小剣を長くしてみたり、ジャケット袖口のボタンをわざと1つ開けてみたり、今思えば身分不相応なことをしていました。
今後はクラシック初心者として、余計なことはせず、基本に忠実なスタイルを実践していこうと思います。
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