スラックス総裏地のススメ

オーダー

こんにちは。ミスターリネンと申します。

スーツをオーダーする際、裏地をどうするか、という選択に直面します。

裏地の色、柄、素材もそうですが、それ以前に、裏地をどこにつけるか、という選択があります。

ジャケットの場合、総裏地、背抜き、半裏、と裏地をどこまでつけるかで、色々な選択肢があります。

ではスラックスの場合はどうでしょう。

オーダーの場合でも、何も聞かれなければテーラーにお任せになることが多いかもしれません。

私は、スラックスの裏地は総裏地が良いと思っています。

その理由を詳しく説明いたします。

裏地の役割

そもそも、裏地はどのような役割があるのでしょうか。

1. 表地の保護

汗や皮脂など、人体から出てくる不潔な液体が、表地に直接付くのを防ぐ。

2. 透け防止、型崩れ防止

薄い生地の場合は、裏地が無いと下着や肌が透けてしまいます。紳士たるもの手と首から上以外の肌は見せてはいけない、らしいです。

また、裏地があれば、生地がある程度厚くなり、よれよれシワシワになって型が崩れるのを軽減してくれます。

3. 着る時にスムーズ

特にジャケットの袖に腕を通す時、裏地が無いと滑りが悪いです。

4. 暖かい

どれだけ薄い裏地でも、一枚の布なので、無いよりあった方が暖かいです。

逆に、夏は裏地があると暑いです。

裏地はオールシーズン必要?

上述の役割4つのうち、1~3は、季節を問わずメリットになります。

しかし、4だけは、夏はデメリットになります。

ということは、夏に着るスーツ以外は、裏地があった方が良く(かつ総裏地で)、夏のスーツは、裏地のアリナシは、メリットデメリットを比べた上で考えた方が良い、と言えます。

暑くなるからと、裏地をなくすと、表地が痛むし、透けるし、滑りが悪く着にくくなってしまう。

それらのデメリットを踏まえても、涼しさを取るのかどうか、という選択に直面することになります。

また、具体的な生地の種類によっても話は変わってきます。

例えばリネンやコットンなら、汚れても水洗いが比較的しやすいので、裏地無しでも良いかもしれません。

シルクなど洗いにくい素材の場合は、裏地無しだと、表地がダメになるスピードが早まってしまうかもしれません。

夏に裏地をどうするか、つまり、全くつけないのか、一部つけるのか、全体につけるのかは(総裏地)、着る人の考え方次第です。

スラックスの裏地

これまでは、裏地の全体的な話でした。

つまり、ジャケットかスラックスか、という区別はしてきませんでした。

この記事で私が考えたいのは、スラックスの裏地についてです。

ジャケットについては考えませんのでご了承ください。

スラックスの場合、裏地は全くつけないのか、一部つけるのか、全体につけるのか、どうすべきなのか。

これも、上述の通り、夏以外は必須、夏生地は考え方次第、だと思います。

オーダーの場合、ジャケットなら裏地についての選択があっても、スラックスについては何も聞かれないこともあります。

テーラーによるので、私の経験した範囲の話でしかありませんが、前もも~ひざ下部分だけ、だという場合が多いかもしれません。

お尻側は一切裏地無し。(既製品)
前側

既製品では前もも~だけが多いと感じます。

前もも~ひざ下に裏地があると、スルッと滑って履きやすいし、歩くときに最も擦れる部分なので、表地を守ってくれるため、納得感はあります。

スラックス総裏地のメリット1

しかし、私は総裏地、つまり、前も後ろも、腰から足首まで完全に裏地があるのをお勧めしたいです。

理由は2つありますが、1つ目は、表地の保護です。

若干話が逸れますが、スラックスを履く際は、ひざ下くらいまでの長さのステテコ×ひざくらいまでの長い靴下(ホーズ)を履くと、素肌がスラックスに直接触れなくて済み、衛生的です。

ジャケットの下には長袖シャツを着て、襟~袖までジャケットへの肌の付着を防ぐのと同様、スラックスも保護が必要です。

これで大部分はスラックスを保護できますが、残尿という危険人物がいます。

汚い話で恐縮ですが、私は20代前半から残尿がひどく、おしっこをして社会の窓を閉めた後に、びっくりするくらい出てきてしまうことがあります。

太ももに垂れるだけならまだ良いですが、ステテコが吸収しきれずズボンについてしまうような気がして、非常に気になります。

また、残尿が無くても、多めに汗をかいたときなど、ステテコが汗を吸い取ってはくれますが、わずかにでもスラックスに汗が届いています。

特に汗をかくのは、前ももよりは後ろももやひざ裏ですよね。

前ももだけ裏地があっても、不十分なのです。

何があってもスラックスを守るために、総裏地が必要なのです。

スラックス総裏地のメリット2

スラックスを履く時、こんな悩みを感じたことがある方はおられるでしょうか。

座って立った時、ふくらはぎや、すねに裾が引っかかってしまい、みっともない。

すね毛を見せない紳士になるためにせっかく膝まである長い靴下を履いたのに、それが裏目に出て、ふくらはぎとスラックスの摩擦で、裾がストンと落ちずにふくらはぎや、すねに引っかかってしまうのです。

とはいえ靴下を短くするわけにもいかない。

そういう場合に、ひざより下の部分に裏地があれば、ストンと落ちてくれるのです。

ふくらはぎやすねへの引っ掛かり問題は、裾幅の太さにもよります。

裾幅が太い(21センチ以上くらい?)スラックスであれば、ふくらはぎ部分の裏地が無くても、引っかからずに落ちてはくれます。

少なくともそれ以下の太さの場合は、裏地は必須だと思います。

スラックス総裏地のメリット(おまけ)

他にもメリットはあります。

ジャケットの場合と同じことですが、薄い表地の場合に透け防止になるのと、わずかでも分厚い分暖かくなる、の2つです。

型崩れ防止、保形効果については、あるのかもしれませんが、スラックスについては私はほとんど感じません。

スラックス総裏地のデメリット

スラックス総裏地のメリットばかりを紹介してきましたが、もちろんデメリットもあります。

ジャケットの時と同じで、「暑くなる」というデメリットです。

総裏地のリネンスラックスなんて、風をよく通すリネンの意味が一切ありません。

私個人としては、夏に履きたいスラックスは、裏地は完全無しが良いと思います。

前もも~ひざ下部分だけはありにしたこともありますが、無くて良かったと思っています。

汗や残尿が防げませんが、それは仕方ありません。

ステテコとホーズでなるべく保護しますが、完璧には保護しきれません。

夏の生地のスラックスは、比較的生地が薄く、乾くのも早いので、汚れたら水洗いしてしまえば良い、と考えています。水洗いは自宅で出来ますが、その方法は後日別の記事にまとめます。

ちなみに、ドライクリーニングでは汗や尿の水性汚れは落ちないと言われています。

それに、石油系溶剤を使うことで生地が傷むのも心配です。

なので私は、ドライクリーニングには極力出したくないと考えています。

リネンやコットンといった洗いやすい素材だけでなく、ウール素材であっても、スラックスなら自宅で水洗いが可能です。以外と簡単で、かつ費用もほとんどかからないのでお勧めです。

まとめ

スラックスは総裏地が良いと考えるのは、汗や尿から表地を守れるのと、ふくらはぎやすねのひっかかりを防げる、という2つが最大の理由でした。

しかし、暑いという強力なデメリットがあるので、総裏地が良いと一概に言えないのが、難しいところです。

私のような残尿汗かき人間以外の方には不要かもですが、総裏地、もしよかったら試してみてください。

総裏地にしたけど最悪気に入らなかった場合は、裏返して縫い目部分以外をはさみで切ってしまえば、無くすこともできますので。

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