フランネル生地 英 vs 伊

オーダー

こんにちは。ミスターリネンと申します。

ツイードと並び、秋冬の大定番生地であるフランネル。

カントリー色が強いツイードはビジネス使いがしにくいのに対し、上品さの残るフランネルは、ビジネスにもカジュアルにも使えて、便利ですよね。

英国のメーカーが作るフランネル生地は、最初は硬くてごわごわしているけど、何年も着て体に馴染んでくると抜群に格好良くなる。

イタリアのメーカーが作るフランネル生地は、最初から柔らかく、初めて着た時から体に馴染んでくれて、着やすい。

のように言われることが多いと思います。

リネンやツイード、レザーなど、経年変化を楽しめる系の生地が好きな私は、英国メーカーの方が絶対に良い!と思っていましたが、イタリアメーカーの生地も実際に着てみて、良さを感じました。

英と伊のフランネル生地、それぞれどのようなメリットデメリットがあるのか、どちらが良いと感じるか、私なりの考えを紹介いたします。

英国フランネル

フランネルと言えば、Fox Brothersフォックスブラザーズ、というくらい、世界中で愛される英国生地メーカーがあります。

他にも英国のフランネル生地は多くあると思いますが、私がフォックスブラザーズ以外の英国フランネルを持っていないので、今回はフォックスブラザーズのみを検証対象とします。

私が買ったのは、こちら生地のスーツです。

銀座にある、MICHELE&shin、ミケーレシンさんで仕立ててもらったものです。

参考記事

「伊製フルハンドメイドのスーツが13万円で作れるテーラー」

フォックスブラザーズの中でも、生地の重さ(厚さ)は様々ですが、この生地はヘリテージフランネルというコレクション(既に廃盤)の、重さ約500gと、トップクラスに重い生地です。

分厚さが伝わりますでしょうか。

これ以上重いと、スーツよりはコートにしか使わないことがほとんどだと思います。

メリットから述べます。

分厚いので、とっても暖かいです。

12月であれば、中に薄手のタートルネックのニットを着れば、コートは不要です。

このスーツはダブルブレストなので、お腹部分は2重になるので、余計暖かいです。

機能的に暖かいのもそうですが、見た目的にも暖かそうな感じMAXで、冬らしい季節感があります。

見た目はごわごわはしているけど、表面の肌触りはなめらかで、チクチクする感じは意外とありません。

他にも、生地が分厚いので、シワが出来にくいというメリットがあります。

1日着ても、膝裏や肘部分にもあまりシワが出来ませんでした

それに関連して、肩甲骨と肩甲骨の間にできやすいツキジワが出来にくいので、ビスポーク仕立てでなく既製品やパターンオーダーでも、綺麗な背中姿になりやすいと思います。薄い生地だと、その人の体にピッタリあっていないと、ツキジワが目立ちやすいです。

柔らかい生地だとこうなりやすい

分厚い生地は、仕立て映えがするなどとしばしば言われますが、芯材(生地と生地の間に入れる保形用の生地)少な目でも、ある程度構築的な形になると感じます。

実際に、このスーツはナポリスタイルなので、英国的な構築的な感じはしませんが、丸さと硬さが程よく共存した印象になっていると思います。

逆にデメリットはあるのでしょうか?

私はほぼ無いと思っていますが、敢えて絞り出します。

まず、日本においては着られる時期が限られること。

12月~2月の3か月程度しか着られず、コスパは良くはないですが、限られた季節にしか着られないから素敵なんですよね。

また、生地の季節感が強いので、あまりフォーマルな場面ではふさわしくないこともあるかと思います。

次にシワが出来にくいというメリットに関連するデメリットですが、スラックスのセンタープレスがしにくいです。

アイロンでぎゅっと押しても、中々折り目がしっかりついてくれません。

折り目がないと、どうしてもカジュアルな印象になってしまうので、出かける前に頑張って高温でプレスするしかありません。この写真でも、頑張ってプレスした直後なので折り目は付いていますが、1日履いていると落ちてしまいます。

あとは、室内で暑いというのもデメリットになり得ます。

パーティなど、ジャケットを脱げない場面でこれを着ると、暖房が強く効いた部屋ではきついです。

ただ、天然のウール素材なので、自然の放湿機能もあり、ダウンジャケットなどを着ているのとは違い、意外と快適だと私は感じます。

最後のデメリットは、値段が高いこと。

スーツ上下で、一般的な生地よりも+5-10万円くらいは上乗せされることが多いと思います。フォックスブラザーズは高いです。

イタリアフランネル

続いてイタリアのフランネル素材を見てみましょう。

イタリアにもフランネルを作っている生地屋は数多くあると思いますが、品質に対するコスパが良くて人気の、カノニコというブランドを取り上げます。

正式名称は、「VITALE BARMERIS CANONICO(ヴィタルバルベリス カノニコ)」らしいですが、長いのでカノニコとさせてください。

私が持っているのは、スラックス2本と、細かく柄の入ったネイビーブレザーです。

カノニコの中でも、生地の重さ、分厚さは様々あると思いますが、これらの生地は、恐らく300g前後の比較的軽めの生地です。

イタリアの生地で、上で紹介したフォックスブラザーズのような500gくらいの生地はそうそうないと思うので、300g前後が主流だとは思います。

スラックスは吉田スーツさんでパターンオーダーしたもので、ジャケットはAOKIさんで買った既製品です。

メリットは、何より柔らかくて着やすいことです。

スラックスがカノニコの生地。
ジャケット。

上で紹介した英国フランネルのスーツとは、生地の重さも仕立ても違うので単純比較は出来ませんが、ジャケットについてはカーディガンのような軽い着心地です。

生地自体が軽く柔らかいので、腕を上げたり、肘を曲げたり、後ろを向いたり、どんな動作をしても楽です。

見た目の印象は、季節感はあるけど、ありすぎないので、11月~3月くらいまでは着ていても違和感が無いと思います。

フォックスブラザーズのごわごわ感に対し、カノニコの方はふんわり、上品な印象が出るので、汎用性が高いです。

左:フォックス、右:カノニコ

ある程度フォーマルな場面でも、カジュアル過ぎる印象にならずに着ることが出来ます。

スラックスについては、生地が薄いと「膝が抜ける」と言われますが、フランネルという素材自体が、上品な柔らかいウールと違ってある程度丈夫さがあるので、カノニコの方でも膝が抜けることは全くありません。

フォックスブラザーズの方は、分厚くてセンタープレスが付きにくいと言いましたが、カノニコの方は、それと比べるとセンタープレスが付きやすいです。

が、あくまでフランネルなので、他素材と比べると付きにくくはあります。

イタリアのフランネル生地のデメリットは何でしょうか。

こちらもデメリットはほぼ無いと思いますが、頑張って探します。

フォックスブラザーズと比べたら、耐久性は劣ります。が、週に1、2回着るくらいであれば、10年以上は持つと思います。

季節感が強い、ゴリゴリな感じの生地が好きな方には、やや物足りない感じもあるかもしれません。

真冬は上にコートが必要になりますが、室内でも暑すぎることもないので、使いやすいです。

生地の値段もフォックスブラザーズほど高くないので、コスパも高いです。

あまりデメリットが見つかりませんでした。

どちらが良い?

メリットデメリットの量で比較すれば、イタリアのカノニコ社のフランネルに軍配が上がるという結果になりました。

フォックスブラザーズは、物好きな人向けだけど、他の生地には絶対に出せない唯一無二の魅力がある。服好きはフォックスを選びがち?

カノニコは、幅広い場面で使えて便利、日本において日常使いしたい人向け。

やはり、どちらにもそれぞれの良さがあるので、どちらが良いかを決めることではありませんね。

最後に、クリーニングについて軽く触れます。

私はドライクリーニングには出さず、自宅で水洗いをする派なのですが、フォックスブラザーズの方の生地は、分厚すぎて、一生乾かなそうな気がします。(まだ洗ったことはありません。)

カノニコの方は、実際に洗ったことがありますが、冬ならすぐ乾いて、洗濯は楽でした。

洗濯しやすさで言っても、カノニコの勝ちでした。

以上です。ありがとうございました。

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