こんにちは。
ミスターリネンと申します。
私のブログでは、「クラシックのルール研究」というカテゴリで、クラシックと呼べるスーツのディティールを、なるべく具体的な数字と共に、自分なりに研究しています。
そういう七面倒臭いことを調べるのが好きなのです。細かいことが気になって仕方ないのです。
今回は袖先のボタンに目を向けました。袖先から何センチの位置にボタンがあるのがバランスが良いのか。
素人なりに研究してみました。
袖ボタンの位置は重要?
ジャケットの前を留めるためのボタンの位置は、その上下によって、腰の位置が変わって見えるため、上の方に位置していると、足が長く見える、と言われたりもします。
ジャケットの袖の太さについて言えば、太いか細いかで全体のプロポーションは変わるし、腕の曲げやすさも変わるので、見た目、機能、両方に影響を及ぼします。
今回取り上げるジャケットの袖ボタンは、どの位置についていようが、全体のプロポーションには何の影響もないし、袖ボタンを開閉する必要性も現代ではないと思うので、機能的影響も一切ありません。
袖ボタンの位置は、私のような面倒くさい人間は気にするかもしれませんが、通常はどうでも良いことと言えると思います。
既製品や中古品のお直しの際に問題になる
オーダーでジャケットを作る場合や、既製品でも袖丈がピッタリのジャケットを買う場合は、何も考えなくても、ベストな位置に袖ボタンが付いています。
しかし、既製品や中古品で、ジャケットの袖丈が長すぎる、短すぎる、という場合があります。
そういう場合、袖丈を詰めたり出したりすることになるわけですが、ボタン位置のことも考える必要があります。
袖丈の調整が1センチ以内くらいであれば、ボタン位置をいじらずとも、見た目上はそんなにおかしくならないはずです。
しかし、例えば既定位置から袖先を2センチ以上カットすると、袖先から一番下のボタンまでの位置が近すぎて、違和感を覚えるかもしれません。
下写真のジャケット、何となく、ボタンから袖先までの距離が近い気がしませんか?



ボタンホール(ボタン穴)が開いておらず、ボタンが付いているだけの場合は、ボタンを一旦外して、別の位置に付ければ良いですが、ボタンホールが開いている場合は、そうはいかず、上の写真のような状況になってしまいます。

そういう場合、ボタンホールをふさぐという高等技術もあるようですが、通常は袖の付け根を一旦外し、長さ調整をしてから袖をつけ直す、という方法になります。
技術的には可能ですが、ジャケットの技術が詰まった袖付けを解くのには抵抗があるし、お直し代も高額になります。
正解の長さ
ようやく本題に入り、ジャケットの袖の一番下のボタンが、袖先から何センチの位置にあるべきかを、具体的に見ていきます。
まずは、私が勝手に師匠とする、故落合正勝氏の書籍を参考にします。

「袖口から第一ボタンまでの長さは3.5㎝が基本」と書かれています。
第一ボタンまでの長さ、というのがあいまいな表現で、
袖先から、ボタンの中心=ボタンホールの真ん中まで、の長さのことなのか、
袖先から、ボタンの端っこ=ボタンの袖先側の先まで、の長さのことなのか分かりません。
実際に手持ちのジャケットを見てみます。
袖先から、ボタンの中心=ボタンホールの真ん中までで計測すると、3.5㎝~5.0㎝くらいになりました。
ちなみに、前章で2センチ袖先をカットした例で載せたジャケットは、2.5㎝です。カット前は、2センチプラスして、4.5㎝だったということになります。

最も多いのは4.5㎝でした。
4.5㎝のジャケットを、袖先から、ボタンの端っこ=ボタンの袖先側の先まで、で計測すると、3.8㎝くらいになりました。

ボタン単体の大きさが、直径1.4-1.5㎝(ボタンによる)くらいなので、その半分となる半径は7ミリ程度。

4.5-0.7=3.8㎝、ということですね。
落合正勝氏の書籍での定義は不明のままです。
仮に同氏の定義が、袖先からボタンの端までの長さで、それが3.5㎝だとすると、ボタンの中心までは、0.7㎝プラスで4.2㎝ほど。
仮に袖先からボタンの中心までの長さが定義で、それが3.5㎝だとすると、ボタンの中心までは、そのまま3.5㎝です。
定義がどちらであっても、3.5~5.0㎝の範囲内に収まります。
前章で紹介したこちらのジャケットは、袖先からボタンの中心までで2.5㎝。

個人的には、このくらいの長さは違和感を感じます。
人によって感じ方は様々だと思いますが、この記事では、袖先からボタンの中心=ボタンホールの位置までで、3.5-5.0㎝が適正範囲、と定義したいと思います。
ボタンの数による違い
3.5-5.0㎝という具体的な結果が出ましたが、話をややこしくするのが、袖ボタンの数です。
最も基本的なのが4個、4を基準に、3、2、1個まであります。
5個という場合もありますが、モードブランドにはあっても、クラシックなブランドは、数を増やすより、減らす方向性だと思います。(違ったらすみません。)
アトリエベルンさんでは、3個をハウススタイルとしているようです。

これは聞いた話ですが、ナポリ系のテーラーでは、1個にするところが時々あるみたいです。
昔はナポリは貧乏な街だったので、ボタンの数を減らして少しでも節約する、というのが元々の理由で、それがスタイルとして今も残っているところがある、と聞きました。


何個にするのが良いかはさておき、ボタンの数によって、一番下のボタンの適正位置は変わるのか。
一番下のボタン位置が上の方に来れば来るほど、一番上のボタン位置も上に来ます。
極端な例で言えば、一番下のボタン位置が袖先から10㎝。ボタンの数が10個だとすると、肘までボタンが届くかもしれません。
そう考えると、ボタンの数が多い場合は、一番下のボタン位置をあまり上の方には持ってこれません。
逆に、ボタンの数が少ない場合は、比較的上の方まで持ってこれそうです。
実際に見てみると、この1つボタンのジャケットは、約5㎝かそれ以上。

やはりボタンの数が少ないと、袖先からの距離は遠いのか、と思いきや、こちらの3つボタンは、3.3㎝くらい。

ボタンの数と袖先からの距離に、相関性はないと思って良さそうです。
3.5-5.0㎝という目安の範囲内で、ボタンは好きな数にして良い、ということですね。
最後に:お直しの時
結論は変わらず、「袖先~一番下のボタンの中心までで、3.5-5.0㎝」です。
袖丈をお直ししたいジャケットがある場合、現状のボタン位置を確認し、それによって袖先を切って良いか、袖の付け根から切らないといけないか、判断すると良いと思います。
逆に伸ばす場合も同じです。
ちなみに、私が良くお世話になる心斎橋リフォームさんでは、レザーのテーラードジャケットの場合、袖の付け根から切ると両腕で27500円、袖先から切ると15000円くらい。
レザーではなく布生地だと、恐らくそれぞれ半分の値段くらいです。
実はこのスエードのテーラードジャケット、心斎橋リフォームさんで袖の付け根から詰めてもらったのですが、改めて見るとまだ長い気がしています。

レザーなので肘部分にシワが付いて、着用しているうちに袖丈が若干短くなるかと思っていましたが、全く長さが変わりませんでした。
もう一回全く同じお直しを、お金を払ってやるのが馬鹿馬鹿しくて、そのままにしています。
以上です。
ありがとうございました。
コメント