こんにちは。ミスターリネンと申します。
メンズファッション関係の動画を見ていると、「このジャケットは、襟が首へ良く吸いつき、着心地が良いです。」といったような発言をしばしば耳にします。
「襟がのぼっている」という表現も良く聞きます。素人からしたら、何となく分かるような分からないような表現です。
襟が首に吸い付くとは?
襟がのぼるとは?襟が高いということ?
クラシックなジャケットの襟の高さとは?
この記事では、ジャケットの襟について、様々な面から研究します。
襟の吸いつき
襟が首へ吸いつく?
それがなぜ着心地につながるの?
ジャケットを自分で作ったこともない私が分かったようなことは言えませんが、ジャケットの襟が首へ吸いつくとは、首とジャケットの間に隙間が生まれず、ぴったりくっついた状態のことです。
逆に吸いつきが悪いと、首からジャケットが浮いたような形になります。
ジャケットの重量を支えているのは、首~肩にかけてです。
ジャケットの襟と首が浮いて離れていると、ジャケットの重量を支えるのが肩しかありません。
ジャケットの襟と首がくっついていると、肩に加え、首回りでもジャケットを支えてくれて、重量が肩だけに偏らずに分散されることになります。
重量が分散されればされるほど、軽く感じ、着心地が良くなる、ということのようです。
リュックの肩にかける紐が、靴紐くらい細いと肩が痛そうですよね。逆にシートベルトくらい太ければ、楽に感じますよね。
それと同じイメージです。
襟の高さとはどの部分?
ジャケットの襟が首へ吸いつくには、襟の高さがある程度必要になります。
ノーカラー(襟無し)のジャケットだと、首はがら空きです。肩のみでジャケットの重量を支えることになります。
逆に、襟が高く、あごに届くくらいだったらどうでしょうか。
咽喉ぼとけより上の部分は、ただ首を隠しているだけで、ジャケットの重量を支える役割は果たしていません。
つまり、ジャケットの襟が首に吸いつくためには、ほどほどの高さが良いということになります。
では、襟の高さとは、具体的にどの部分のことを言うのでしょうか。
この部分です。下の写真はシャツですが、ジャケットでも同じです。
襟台とか、襟腰とも呼ぶらしいです。
ジャケットの襟を立ててみると、面白いことが分かります。
襟の裏側の真ん中あたりにステッチが2本通っているのが見えますでしょうか。
襟を寝かせると、2本のステッチの真ん中あたりに折り返し位置がきます。
折り返し位置の上側の長さが、約3.7センチ
下側の長さが、約2.7センチ。
着た時の実際の襟の高さになるのは、下側の2.7センチです。上側との差の1センチは、襟を寝かせた時、襟とジャケット本体のつなぎ目の線より下に来る形になり、襟の高さにはカウントされない、ということです。
襟の高さと着心地
襟の高さは、あくまでデザインで、1センチでも良いし、10センチでも良いようです。
繰り返しになりってしまいますが、0センチだとノーカラーになり、10センチもあると変わった服になる、というだけです。
では、着心地の良い襟の高さはどのくらいなのでしょうか。
リュックの紐の例のように、高い方が重量分散になるので着心地が良くなるはずです。
着心地だけを重視するなら、高すぎない範囲で、なるべく高い方が良い、と言えそうです。
しかし、高すぎる襟にはデメリットがあります。
それは、シャツの襟との関係です。
ジャケットの襟が高すぎると、シャツの襟より高くなってしまいます。
シャツの襟は、ジャケットの襟から1.5センチくらい出ている方が良いと言われます。
それは、ジャケットの襟が皮脂で汚れるのをシャツが防ぐという意味合いもあるし、見た目的にも出ている方が綺麗です。
常に同じブランドのシャツ、ジャケットしか着ない、という方なら心配無用かもですが、そうでない場合は、合わせるシャツとジャケットの襟の高さの相性を気にする必要があります。
オーダー品しか着ない方は、シャツとジャケットで、襟の高さを1.5センチほどずらして作れば良いですが、それも非現実的です。
高い襟=作りが良い?
襟が首に吸いつくジャケットは、作りが良いと聞きます。
確かに、襟が首に吸いつく=着心地が良い、というのは重量が分散されるという意味で事実です。
襟を首に吸いつかせるのは技術的に難しいらしく、熟練の職人にしか出来ないと聞きました。
どのくらい難しいのか、素人の私には想像するのが難しいですが、こう考えると想像しやすいと思いました。
トイレットペーパーを、マフラーのように首の後ろから体の前に垂らすのと、キッチンペーパーを同じように垂らすのを想像してみてください。
トイレットペーパーなら、ある程度首に沿わせてぴったりと垂らせそうですが、キッチンペーパーくらい幅の太い紙になると、首にきれいに沿わないですよね。紙がくしゃくしゃになってしまいます。
もし、糸一本を同じように垂らすのであれば、簡単に首にぴったり沿わせられますよね。
ジャケットも同じで、布生地を首に沿わせるには、布をどうカットするか、アイロンでどうクセをつけるか、どう縫うか、高い技術が必要になりそう、という想像ができます。
襟が高い=使われる布も幅が広いので、高い襟ほど高い技術が必要になる、と言っても間違いではないと思います。
国による違い
国による違いについても見てみると、
イタリアブランドのジャケットは、英国と比べたら比較的高めの襟が多い印象です。
イタリア的な、非構築的ナチュラルな肩=首から肩にかけてなだらかな線を描いた肩=なで肩。
襟が高いデザインの方が肩にかけての傾斜の角度が急になり、なで肩っぽく見せやすい、だからイタリアブランドは襟が高めなのでしょうか。
加えて、イタリアブランドの方が、技術力の高さをアピールすることが比較的多いのも、襟が高い理由かもしれません。
襟を高くする、マニカカミーチャ(袖をつける時の技)、ハンドステッチなどの特徴をアピールするということです。
逆に英国では控え目であることが美徳とされるので、技術的には可能でも他人からは分からないようにあえて出さない、ということでしょうか。
それぞれの国の考え方なので、どちらがいい悪いではないですね。
クラシックな襟の高さは
では具体的に、襟の高さは何センチが良いのでしょうか。
クラシック的観点から考えます。
落合正勝氏の著書には、3.0センチと具体的に明記されていました。
「シャツのカラーの高さは4-4.5センチ。スーツの後ろ襟から1.5センチほどシャツカラーを覗かせる。クラシックスーツの後ろ襟の内側は3センチ(外側4センチ)なので、シャツカラーが4.5センチあれば1.5センチ覗く計算になる。5センチに達するハイカラーは、首の短い日本人には似合わない。」
私がいつも参照するチャールズ英国王、ウィンザー公、赤峰幸生さんなどの写真を見ても、具体的な数値までは目視では分かりません。
私の手持ちのジャケットを見てみます。分かりにくくて恐縮ですが、写真の寸法は外側の寸法なので、実際の襟の高さ(内側の寸法)はマイナス1センチと考えてください。
外側が3.8~4.0センチ、つまり、内側=実際の襟の高さは2.8~3.0センチです。どれもイタリアナポリの職人さんが造ったジャケットなので、比較的高めと言えます。
オーダーした際は、襟の高さなど考えたこともなかったので、一切指定はしていません。なので、ナポリ的クラシックはこのくらいなのでしょうか。
ポールスチュアートというアメリカのブランドのこのジャケットは、3.5マイナス1で2.5センチでした。
これらの情報だけでは、具体的なクラシック的正解の数値は出せませんが、イタリア、英国、アメリカ問わず、ざっくり2.5~3.0センチならクラシックの範疇に収まると言えそうです。
シャツの襟の高さも見てみる
念のため、シャツの襟の高さも見てみます。
鎌倉シャツの既製品は、4.0センチでした。ちなみにシャツの場合、襟の内側、外側はそれぞれ同じ、もしくは内側の方が長いです。なので、実際の襟の高さとなる内側を測ります。
フランコ・プリンツィバリーというイタリアブランドのシャツは、4.8センチでした。
3.0センチくらいのやや襟の高めなイタリアのジャケットと合わせると、1.8センチシャツが覗く良いバランスですね。
同じジャケットに鎌倉シャツを合わせたとすると、1.0センチしかシャツが覗かず、やや足りないかもしれません。逆にポールスチュアートの2.5センチ襟のジャケットには、ぴったり合います。
まとめ
ジャケットの襟の高さについてみてきましたが、かなり奥が深かったですね。私はそう感じました。
低すぎるジャケット襟は、首に吸いつかず、着心地も良くないし、作りが良くないと捉えられる可能性があるので△。
高すぎる襟は、首に吸いつき着心地も良くなるが、シャツの襟との相性が難しくなるので△。
クラシックに忠実でありたい場合は、2.5~3.0センチ前後に収めておくのが良い。
以上を今回の結論とさせていただきます。
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