こんにちは。ミスターリネンと申します。
クラシックな男になるためにクラシックを研究していき、その過程で誰かの役に立つ情報があれば、と思いブログで発信をしています。
ところで、最も重要なことを忘れてしまっていました。
「クラシックって何?」という定義をはっきりさせていなかったのです。
定義が分からないのに、何かがクラシックかどうかを判定できるわけがありません。
今回の記事では、クラシックの定義を、可能な限りはっきりさせようと思います。
目次
クラシックの定義づけは不可能
いきなり課題放棄で申し訳ありませんが、クラシックの指す意味、範囲を明確に表すのは不可能、というのが私の考えです。
辞書的な意味を言うことは出来ても、スーツ、服装のこととなると、時代による違い、国による違い、個人の解釈による違い、あまりに違いが大きすぎて、明確な線引きをすることができません。
古ければ古いほどクラシックか
「現代のスーツ姿は、クラシックから遠ざかってしまっている。」
これは事実だと思いますが、それなら、古ければ古いほどクラシックということになるのでしょうか?
そういうわけではありません。
スーツの起源は、16世紀~19世紀と、人によって、書籍によって、言っていることが違います。仮に16世紀だとして、1500年代の服をクラシックだと言う人はいないでしょう。
何が正しいのか分からないので、私がいつも参考にする落合正勝氏の書籍を読むと、以下の記述があります。(『落合流、お洒落術』)
「1950年代の男のドレスコードはきわめて鮮明でした。しかしながら60年代のカジュアル化を境に次第に雲行きが怪しくなり、結果として行き着くところまで行き着きました。今後はさらなるカジュアル化に対してのフォーマル志向、換言すれば50年代のような二極化した精密なドレスコードが必要とされる時代がくるのではないかと思うのです。」
1950年代のスタイルをクラシックの基準と考えるのは一つの正解かもしれません。でも、1940年代やそれ以前にも、2020年代にも、クラシックなスタイルは存在するので、50年代だけを是として限定してしまうのは危険かもしれません。
つまり、時代はクラシックの絶対の判断基準にはなりません。
英国が最もクラシックか
時代が基準にならないのなら、国は基準になるのでしょうか。
スーツの起源は英国で、その伝統を最も守っている英国王室の服装がクラシックの唯一無二の正解だ、と言えるでしょうか?
英国と並んでスーツの歴史が深いイタリアの、特に癖が強いと言われるナポリのスタイルは、クラシックじゃない、と言えるのでしょうか?
アメリカはアメリカで、比較的歴史は浅いけれど、アメリカンクラシック、という言葉もあります。
英国をクラシックの本流、それ以外は亜流、もしくはクラシックでない、というのも一つの考え方だと思いますし、
それぞれの国にそれぞれの国のクラシックがある、というのも考え方だと思います。
ちなみに落合正勝氏『男の服装術』には以下の記載があります。
「どんなにスーツスタイルが混交しようとも、基本的にはクラシックなプロポーションは3種のみである。」
同書によると3種とは、ラテン系(イタリア系)、アメリカ系、ゲルマン系(英国系)です。つまり、落合氏はクラシックは英国を最もクラシックとは考えてはいないようです。
カジュアルにクラシックはあるのか
燕尾服、タキシード、モーニング、スリーピースのスーツ、これらはフォーマル度合いが高く、クラシック度合いは高いと言えます。
では、ツーピースのスーツはどうでしょうか?
ジャケパンは?
バブアーのオイルドジャケットは?
ラコステのポロシャツは?
ルイスレザーのライダースは?
リーバイス501は?
スポーツやワークから生まれた洋服は、クラシックと言えないのでしょうか?
クラシックの辞書的意味
ここで、クラシックという言葉の辞書的な意味を確認します。
どうでも良いようで意外と重要なので、出来れば読み飛ばさないでいただけると嬉しいです。
Classic と Classical、この2つを混合してしまうと、クラシックの理解がしにくくなります。
Classic=一流の、最高水準の、典雅な、
Classical=古典的な、古典主義の。クラシック音楽は、Classical music。
クラシック=古い、という理解は、後者の Classical の理解になってしまっている可能性があります。
洋服におけるクラシックは、Classic の方になります。
つまり洋服のクラシックは、古い、ではなく、一流の、最高の、といった意味なのです。
そう考えると、必ずしも古いからクラシックとは言えない、というのがよりはっきりしますね。
再び落合氏の言葉を引用します。
「西洋の人たちが考えるクラシックの第一義的な意味は、【最上級に属する】であり、我々がクラシック音楽から感じ取る【古典的】という意味は、二次的に用いられます。」
やはり英国王室が最もクラシック?
クラシックの意味が、「一流、最高」ということは、高貴な人々、つまり貴族、中でも特に王や皇帝がする服装がクラシック、と考えることができます。
その理論で言うと、日本の皇室の服装もクラシックですが、“洋“服におけるクラシックで言えば、やはり英国王室ということになるのでしょう。
国としてかつて世界の覇者であり、スーツの起源でもあり、高貴な人=王がいる国、ということで、英国王室の服装が最もクラシック、というのは、一つの考え方としては間違っていないと思います。
仮に英国王室をクラシックの基準と考えるとしても、現在のチャールズ英国王と、1910-1936年に在位したジョージ5世(ウィキペディアで調べました)の着こなしは違うので、やはりクラシックの定義は困難ですね。
結論
これまでに見てきた通り、クラシックを定義することは、無理ですね。。。
あえて言うのであれば、
「英、伊、米、の3国にはそれぞれのクラシックなフォーマルスタイルがある。カジュアルに関しても、バブアーやラコステなど、時代を超えて愛される変わらないアイテム、スタイルは、クラシックと呼んでも良い。」
というのが個人的な意見です。
イタリアのクラシックなスーツスタイルは、地域やブランドによりスタイルの違いが大きいので、さらに判断が難しいです。
例えば、袖の付け根部分にギャザーを寄せた(のを表から見えるようにしている)、マニカカミーチャという仕様があります。
特にイタリアナポリで好んで使われる仕様と言われます。これを(ナポリの)クラシックだという人もいるし、クラシックなスーツにマニカカミーチャは合わない、という人もいます。この判断を私にできるはずがありません。
落合正勝氏の著書では、クラシックスーツとして載っている写真にマニカカミーチャは見受けられません。恐らく、クラシックスーツには、ぱっと見で分かるディティールは避けられることが多いとは思います。
あえてイタリアの中でも分類するのなら、イタリアスタイルの中でも、比較的地味な、目立たないスタイルを最もクラシックと考えると良いと私は思います。
ご意見があればぜひお願いします。
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