こんにちは。ミスターリネンと申します。
革靴がお好きな方にとって、靴を履くときに靴ベラを使うのは常識かもしれません。
かがんで靴に手を伸ばさずとも履けるので、履くのが楽になるというメリットがありますが、
それ以上に、靴の履き口が折れ曲がって痛むのを防げるという大きなメリットがあります。
私はそれを知ってから、必ず靴ベラを使うようにし、外出先で靴ベラが無い時でも困らないよう、小さな靴ベラを鞄に常備するようになりました。
しかし、最近気づいてしまったのです。
靴ベラは、使わない方が靴を傷めない、ということを。
私は、革靴に関して言えば、靴ベラは使わない方が良いと考えています。
そう思う理由を、この記事ではご紹介します。
靴ベラを使わないことで出来る痛み
靴ベラは、使っても使わなくも、靴の履き口は少なからず痛むと私は考えています。
なので、靴ベラを使う場合と使わない場合とで、靴に与えるダメージ量を天秤にかけて、ダメージが少ない方を選ぶ方が良い、と思っています。
まずは、靴ベラを使わないことで発生する痛みについて考えます。
革靴には、紐があるタイプと無いタイプに大きく分かれます。
紐があるタイプは、着脱時は、紐を緩めて、履き口を大きく広げ、足を入れる、というより、足を置くだけで良いので、履き口は全く痛みません。
紐が無いタイプ、主にローファーですが、履き口が比較的狭いです。
狭い口に足を入れ込む必要がありますが、その際に、かかと部分の革が折れてしまうことがあります。
かかと部分には、補強のために硬い芯材が入っていることが多いので、多少折れ曲がっても、すぐにダメになってしまうわけではないですが、何度もかかと部分の革の折れが繰り返されると、次第にふにゃふにゃになり、かかとを踏み潰した靴のようになってしまうかもしれません。
サイズががばがばの紐無し靴であれば、履き口も広いのでその心配もありませんが、クラシック好きな方は、どちらかと言えばきついくらいのサイズ感を好まれる方が多いと思うので、靴ベラ無しで紐無し靴を履く際は、かかとが折れ曲がらないよう、丁寧にゆっくり履く気づかいが必要になってきます。
靴ベラを使うことで出来る痛み
今度は、靴ベラを使うことで発生する痛みについてです。
上述の、踵の折れ曲がり防止のために、靴ベラを使うのは、有効な手です。
靴のかかとと足の間に靴ベラを挟むことで、壁となって靴のかかとにダメージが行かないようにしてくれます。
それで万事解決、と思って長年靴ベラを使っていたのですが、最近、あることに気が付いたのです。
それが、靴ベラが、靴の内側の革を削ってしまうことです。
この写真をご覧ください。履き口付近が、白っぽくなっているのは、革が削れてしまっているからです。
革が削れているのは、靴ベラの仕業です。
靴のかかとは、人の足のかかとの形に添って、カーブしています。
靴ベラも、同様にカーブしています。
しかし、そのカーブの角度が一緒ではありません。
大抵は、靴のかかとのカーブより、靴ベラのカーブの方が、緩やかで、平らに近いです。
そうなると、靴ベラの両端が、靴のかかとの内側に当たります。
その状態で足を入れると、靴ベラが靴のかかとの奥へスライドするように押し込まれ、靴の内側の革をガリっと削る形になってしまうのです。
一度こうなってしまうと、いくらオイルを塗っても、跡は消えません。
革の乾燥ではなく、革自体が削られているからです。
靴ベラは分厚くて丁寧に磨いてあるものが良い
靴ベラと言っても、種類は様々あります。
靴へのダメージに大きく関わるのが、素材と分厚さ、表面の処理加工です。
靴へのダメージを減らすには、柔らかめの素材が良いです。
分厚さについては、薄いと鋭利な刃物のように良く切れ、厚いと何も切れない刃物になるのと同じで、厚い方が靴には良いです。が、厚いとその分足と靴の間に挿入しにくくなるので、悩ましいところです。
表面は、しっかりと磨いてつるっとしている方が、靴へのダメージは少ないはずです。切りっぱなしの木とかだと、のこぎりのように靴を傷つけてしまいます。
もう少し具体的に見ていきます。
素材は、木、鉄、水牛の角、レザーなどがあります。
柔らかいのは、革です。革と言っても、革1枚ではふにゃふにゃで靴ベラとしての機能を果たさないので、鉄を革が覆っているタイプが主流だと思います。
分厚さは、厚い方が良いと述べました。
鉄で出来ていて、かつ薄めの、このようなタイプが、一番革を削ってしまいやすいと私は感じています。
とはいえ、厚い鉄の靴ベラなんて売っていません。他のどの素材より、薄くても強度を出せることに鉄の意味がありますもんね。
表面の処理加工ですが、磨きがかかっている方が良いと述べました。
これは百均で買った木製の靴ベラですが、多少磨いてはあるものの、完全につるっとはしていません。ささくれもあります。
最も重要なのは、角度
色々な要素を述べましたが、最も重要なのが、靴ベラの湾曲する角度だと思います。
靴のかかとのカーブより、靴ベラのカーブが急であれば、靴のかかとはダメージを受けないことになります。
しかし、あまりに靴ベラのカーブが急すぎると、今度は靴ベラが足のかかとにはまらなくなってしまいます。
角度が急すぎて足のかかとに靴ベラがはまらないと、靴ベラとしての機能を全く果たさないですが、
角度が緩すぎても、靴にダメージを与えるだけで、靴ベラとしての機能は十分果たします。
それならば、誰の足にも合うように、ある程度緩めの角度で靴ベラを作る方が良いのは、メーカーとして当然です。
自分のかかと専用で靴ベラをオーダーするという手もありますが、靴のかかとの角度は靴によって様々なので、100%の解決にはなりません。
まとめ:靴ベラは使わない方が良い
長々と述べましたが、私は上記の理由から、靴ベラは使わない方が靴のためには良いと考えます。
私は潔癖症で紐靴を履けない人間で、ローファーばかりを履くのですが、
参考記事
紐靴が無い分、靴ベラの必要性は、人一倍大きいです。
それでも、靴ベラをあえて使わないという選択をしています。
じゃあどうやって靴を履いているかと言えば、そーっと履く、です。
靴に足を入れて、靴のかかとの上に足のかかとが乗ったら、そこからゆっくりと、靴のかかとが折れ曲がらないように、足全体をなるべく靴のつま先の方に押し込みながら、履いていくというだけです。
靴のかかとが硬めの場合は上記の方法で問題ないですが、柔らかめの場合は、靴の踵が折れ曲がってしまうので、手の指を1本、靴ベラ代わりに挿入します。
指は痛いですが、自分の指より靴の方がよっぽど大切です。
市場にある靴ベラをある程度見てみましたが、高価なものでも、靴のかかとに傷がつきそうな鋭利なものしか見つかりませんでした。
程よくカーブしていて、程よく分厚く、表面も丁寧に磨いてある靴ベラ、ご存じの方がいたらぜひ教えていただければ幸いです。
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