こんにちは。
ミスターリネンと申します。
お直し屋サルトで働き始めたことを先日報告させていただきました。
私は今後、お直しのプロになっていきたいと思っていますが、現時点では修行中の身です。
服作りをもっともっと勉強して、お直しでお客様に提案できるレベルを高めていきたいと思っています。
一方で、客側の立場で、古着でスーツなどのクラシックアイテムを買い、お直しに出して着ていますよ業界では、日本代表の4番、は無理でも、巨人の2軍のベンチ入りくらいは出来ると思っています。
この記事では、
・古着スーツが古く見える理由
・どこまでお直しで対応できるのか
・直さないという選択肢
について、実体験をもとにお話しいたします。
高級ブランドのスーツをお直しに出す前提でこれから買おうと思っている方、既に持っているスーツを何とかして古臭くない感じにしたいと思っている方、などに役立つ記事になればと思っています。
目次
古着スーツが古く見える理由
まずは、古着(誰かのお下がり)っぽく見えてしまう原因について。
良くあるのが、
・肩パッドがもりもりに入っていて、巨神兵のように見える。

・ゴージライン(上衿と下衿の境界線)が低い、またその角度が急。

・(シングルジャケットで)ボタンが3つボタン上2つ掛け。

・全体的な重心が低すぎる。

・ラペルが太すぎる、細すぎる。

・ズボンが太すぎる、細すぎる。
などです。
これらはデザインの問題ですが、サイズの問題として、
・シルエットが太すぎる、細すぎる。
・丈が長すぎる、短すぎる。
などもあります。
デザイン面でもサイズ面でも、古臭く見えないよう、必要に応じてお直しを加えた方が良さそうです。
どの程度まで直せるか
先ほど挙げた要因を、それぞれどう直せば良いかを見ていきます。
まずはデザイン面について、一つずつ見ていきます。
肩パッドがもりもりに入っていて、巨神兵のように見える。
これは、比較的対応は容易です。
肩パッドは簡単に取れるからです。


肩のサイズ(横幅)はバッチリ合っている、けどパッドだけ邪魔、という場合は、肩パッドを取れば解決かもしれませんが、大抵はそれだけでは綺麗なお直しにはなりません。
理由をご説明すると、分厚い肩パッドが入っていると、自分の肩幅よりもジャケットやコートの肩幅が多少大きくても、着ると自分の肩幅が大きく見えるだけで、大きな問題にはなりません。
しかし、自分の肩幅よりも大きい肩幅のジャケットを、肩パッドを取ることで、肩パッドに支えられていた肩部分の生地がふにゃりとなり、肩の下まで落ちてきます。

そうなると、「肩幅の合っていないジャケットを着ているな=古着を着ているな」感が出てしまいます。
あえてそういうデザインのジャケットを着るい人もいますが、よほどおしゃれな人が着ないと、あえてなのが伝わりません。

なので、肩パッドを取る場合、肩幅を詰めなければいけないケースが一般的です。
肩幅を詰めるお直しは一般的ですが、お金が掛かります。また、柄物ジャケットなどは、肩回りの柄合わせが崩れてしまうこともあるので、注意が必要です。
また、これは私も最近学んだことですが、肩パッドを取る場合、肩傾斜と言って、首~肩の傾斜角度も直す必要がある場合があります。
肩パッドが分厚く入っているジャケット、コートは、肩が四角く、怒り肩の状態になっていると言え、首~肩の傾斜角度は、緩やかと言うことになります。

その反対の、肩パッドゼロの柔らかいジャケットで、なで肩にピッタリ合いそうな丸い肩のジャケットは、首~肩の傾斜角度が急になります。

仮に以下写真のジャケットの肩パッドを取る場合、肩幅を詰めたとしても、肩傾斜がそのまま(怒り肩寄り)だったら、ジャケットの肩の先が、自分の肩にうまく収まってくれません。自分の肩がものすごい怒り肩の人なら、うまく収まるかもしれませんが。

なので、肩傾斜を多少急に変えるお直しをしないといけません。
ゴージライン(上衿と下衿の境界線)が低い、またその角度が急

ゴージラインは、基本的には直せないことがほとんどだと思います。
(現時点での私の知識ではそうですが、上衿と下衿を解いて、それぞれの衿に余り布があり、中の芯材を取り替えたりすれば出来なくもないのかもしれません。ご存じの方、教えていただければ幸いです。)
ただ、ゴージラインの角度は変えられなくても、高さだけは上に上げる方法があります。
それは、ジャケットの着丈を、肩から上方向に詰めるという方法です。
着丈を裾からカットして短くするのではなく、肩から、全体的に上にぐっと上げるという方法で、それを使うと、ゴージラインだけでなく、ポケット、ボタン、全体的に上に上がります。
それは、ゴージラインは上がるけど、着丈も短くなってしまうということを意味し、それがデメリットです。
また、費用もそれなりにかかります。
ゴージラインの高さだけでなく、着丈の長さも気になる方にとっては、選択肢になり得ると思います。
(シングルジャケットで)ボタンが3つボタン上2つ掛け
少し前の時代のシングルのジャケットで、ボタンが3つボタン上2つ掛けというタイプがあります。

Vゾーンが小さく、一気に昔っぽく見えますよね。
ビートルズが着ていたらしいモッズスーツの仕様なのでしょうか。3つボタン上2つ掛けと言いましたが、3つともボタンを留めるのがモッズスーツは正解なのかもしれません。私には分かりません。

ともかく、Vゾーンの小さいモッズスーツは現代では着にくいので、3つボタン段返りの仕様に直したいものです。
やり方は大きく2つあり、一つは、ラペルをアイロンでプレスすることで、無理やり癖をつけ、Vゾーンを広くすること。
これは、お直し屋さんに持っていかなくても、自宅でもできます。お直し屋の方が高温のプレス機や良いアイロン台を持っている、というだけの違いです。
もう一つが、一旦縫い目を解いて、ラペルの中の芯材を、3つボタン段返りのものに入れ替えて、再度縫い直すという方法です。
当然こちらの方が手間なので、お金が掛かります。高温プレスの出来ないレザーアイテムなどは、この方法しかありません。


また、同じ3つボタン上2つ掛けでも、元々のVゾーンが狭いものと、比較的広いものがあり、狭いものは、お直しによって広くすることで、一般的な3つボタン段返りに近い印象にすることが出来ますが(上の写真の黒のスエードジャケットの例)、
元々のVゾーンがあまり狭くない場合は、3つボタン段返りにしてしまうと、Vゾーンが深すぎて、バランスが悪いです。


ご紹介したどちらのイメージに、現状が近いか、確認されることをお勧めします。
全体的な重心が低すぎる
古着のジャケットで、ボタンやポケットが下過ぎないか?なんかおかしいぞ?というもの、ありませんか?

それが流行だった時代があったのかもしれませんが、私がクラシックなスーツの勉強をする限り、クラシックの範疇とは呼べず、あくまでも変化球、言い換えればモード寄りなのだと理解しています。
ただ、ダブルのジャケットで、一番下のボタンを留める仕様のものは、比較的重心が低い方がバランスが良いこともあります。

また、重心が低いジャケットが格好悪いかといえば必ずしもそうではなく、鴨志田康人さんのような方が着れば、着こなせてしまうようです。

低すぎる重心を高くするお直しは、難しいですが出来なくはないと思います。
何故なら、まず重心が低いなら、先に紹介した、肩から全体を上に上げて着丈を詰める方法を使い、全体の重心を上げることが出来ます。
ただ、それでは詰めた分だけ着丈が短くなるので、元々着丈が丁度よいジャケットだった場合、着丈が短くなってしまいます。その場合は、裾の縫い目を解いて、少し着丈を伸ばせば、着丈は元の長さくらいまで戻せる可能性があります。
通常の、重心が低くないジャケットを、着丈を裾から伸ばしてしまうと、裾の先から一番下のボタンまでの長さが伸びてしまい、バランスが崩れますが、元々重心が下過ぎて、裾の先から一番下のボタンまでの長さが短すぎるジャケットの場合は、多少裾を伸ばしてむしろちょうど良いくらいです。
ただ、ポケットの位置も意識する必要があるので、上手くいくケースは多くはありません。
着丈を伸ばす際、シングルジャケットだと、フロント部分が斜めにカットされているため、単純に伸ばすと言ってもフロントの開き角度には気を付けなければなりません。
ダブルであれば、フロントは水平な四角い形なので、全体を伸ばせば済みます。
伸ばすと簡単に言いましたが、布が数センチは余っていることが条件です。また、裏地も同じだけ余っている必要があります。
布が余っていなかったとしても、見た目を気にしなければ、裏地だけ表から見えないので、別の生地をはぎ足すという作戦もあります。
ラペルが太すぎる、細すぎる
ラペルについては、細くすることは可能で、太くするのはまずできないはずです。
ただ、Vゾーンの開きが多少広がっても良いのであれば、出来なくもないそうです。
高円寺でBon Vieuxというお店を経営されている大島拓身さんの動画でもやり方が紹介されていました。アイロンを使って、上衿の方から癖付けをしていました。太く出来ても5mm程度が限度だそうです。
また、具体的にどんなやり方でされたのかは分かりませんが、心斎橋リフォームさんのインスタ投稿にて、ラペル幅を大幅に広げたお直しが紹介されていました。

写真を見る限り、Vゾーンも広がらずに元の広さのままのようなので、どんな技を使ったのか気になります。
ズボンが太すぎる、細すぎる
最後はジャケットではなくズボンについてです。
ズボンは、細くする分には、ほぼ制限なくいくらでも可能です。
例えばウエストが100㎝以上ある巨大ズボンを、ウエスト70㎝くらいまでごく細にする場合などの極端なケースは、お尻ポケットの大きさなどが関わってくるので簡単ではありませんが、10㎝くらいまでであれば問題なく可能です。
タックを取るお直しも可能です。
太くする分には、余り布がどれだけあるか次第ですが、ある程度は可能です。
デザイン以外の、サイズの問題
これまでは、デザイン面でのお直しについて述べてきましたが、今度はサイズ面でのお直しについて、簡単にご紹介します。
ジャケット、ズボン問わず、
・シルエットが太すぎる、細すぎる。
・丈が長すぎる、短すぎる。
というケースがありますね。
こちらも同様に、小さくする分には問題ない。
大きくする分には、余り布次第、という話です。
それだけでは何の参考にもならないと思うので、私なりに経験したことをお伝えすると、太さ細さが気になる箇所だけ直せば良い、という単純な話ではない場合があります。
例えば、ジャケットの肩周り、バスト周りはちょうど良さそうだけど、ウエスト周りがぶかぶか、と言う場合。特に筋トレをして肩や胸が発達しているけど、ウエストがくびれている方に多いケースです。
その場合、ウエストだけを詰めたいのですが、ウエストだけを詰めたはずなのに、肩回りも小さくなってしまった気がする、という場合があります。
ウエストを極端に小さくすると、それに伴って肩甲骨周りも少し小さくなってしまい、ツキジワが出来てしまったりもします。
このあたりの話は、服のパターンを理解していないと、正確な判断が出来ないと思うので、今の私にはこの程度しか言えません。今後もっと勉強していき、もっと有益な情報をブログに書けるように頑張ります。
そもそも、今のままでも格好良いから直す必要もないのではないか
サルトで勤務を始めてからお会いしたお客様で、20年以上前に買ったジャケットが大きすぎる気がするので、今でもおかしくないバランスにしたい、と希望される方がいらっしゃいました。
着用した状態を確認すると、確かに身幅はかなり大きかったですが、それ以外は何も直す必要が無いと私は感じました。
その方は、着丈も長すぎる気がするとおっしゃっていました。
ジャケットの着丈は、77㎝あったのですが、その方の身長は約180㎝。
現代の既製品では、着丈が77㎝もあるジャケットは、日本ではほとんどありません。フレンチブランドHUSBANDSのような、着丈の設定が、比較的長めのブランドにはありますが。

しかし、身長が180㎝あれば、適正着丈(首の付け根からかかとまで長さ÷2)は75-77㎝くらいになることが多いと思うので、全然適正範囲内だと私は感じました。
1㎝短くして、76㎝でもありでしょうし、2㎝短く75㎝でも、現代の感覚からは違和感は無いと思います。
最終的にはその方の好み、考え次第であり、お直し屋のスタッフに意見を求める方もいれば、自分のスタイルを強く持ち、こうしたい、とはっきりご意見をお持ちの方もいます。
着丈を短くするのはお金もそれなりにかかるし、身長の高いその方には77㎝でバッチリ似合っていると思ったので、私は詰めなくて良いと思います、とお伝えし、判断していただきました。
迷った場合は、とりあえず大きい寸法のままにしておく方が無難です。小さくしてしまっては後戻りできないので。
上記はサイズ感の例ですが、デザインの面でも同じことが言えます。
仮に、肩パッドありのジャケットで、肩パッドを取ってしまいたいと思ったとします。
肩パッドのせいで、やや古臭いように見えるかもしれませんが、丸いナチュラルショルダーばかりの今の世の中で、あえて肩が構築的なジャケットを着るのも格好良いとも考えられます。

この方の写真を見て、巨神兵みたい、と思う方もいるかもしれませんが、私はめちゃくちゃ格好良い、と思いました。
今の時代の空気感(流行)は知りつつも、それにドンピシャでハマっていなくても、逆に格好良いのでは、と考え方ひとつでイマイチと思った服がお気に入りになる可能性もないでしょうか。
とにかく、とりあえずは、迷ったら後戻り出来る方を選ぶのが無難です。(肩パッドは取っただけなら後でまた入れることも出来ます。)
気分という不可解なもの
いつの時代も、世界中どの国に行っても、誰が見ても違和感のない、中庸で普遍的なスーツが欲しい、と私は思います。
そんなものがあれば理想的ですが、実際は難しいと思っています。
人には気分というものがあり、例えば私は、流行に左右されるのが面倒なので、中庸で普遍的なスーツだけを着たいと思っていますが、ダブルブレストの下1つ掛けのスタイルを見て、「格好良い!自分も着てみたい!」と思っています。

これは私が未熟で、まだ自分のスタイルというものが固まっておらず、色々試したいスタイルがあるから起こる現象だと思いますが、服が好きな人は特に、何歳になってもこういうことは起こり得ると思っています。
映画や雑誌、SNSで格好良い着こなしを見て、それを自分のスタイルに取り入れてみよう、と思うこと、ありませんか。
その道の重鎮である鴨志田康人さんも、しばしば「気分」というワードを使われているのを耳にします。
とにかく、何年か後に、自分がどういう気分になるか、予測は出来ないと思うんです。
お直しをしようという方は、サイズ感の問題で大きすぎて、小さすぎて着られないから直したいという方と、デザインの問題で、気分じゃないから直したい、という方とに分かれます。
気分ベースでお直しされる方は、自分の今の気分が一生続く、とは過信せず、なるべく後戻り出来るようなお直しをするか、なるべく現状のままを好きになる(お直ししなくても良いと思える)よう意識すると良いのではないかと私は思います。
以上です。
ありがとうございました。










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