マストタンクを買うときに知っておいてほしいこと

時計

こんにちは。ミスターリネンと申します。

最近ますます人気が増している、カルティエのマストタンクシリーズ。

現行品もありますが、私はヴィンテージのことしか分からないので、ヴィンテージに絞ってお話をします。

特に、マストタンクをこれから購入しようか迷っている方に向けた内容です。

マストタンクとは

まずは、マストタンクとはどのような時計簡単にご説明します。

カルティエのアイコン的存在である、タンクという時計があります。

タンク=戦車、つまり(上から見た)戦車の形をイメージして作られた、長方形の時計です。

タンクの中でも、タンクルイ、タンクノルマル、タンクシノワーズ、タンクソロ、等複数のバリエーションがありますが、最も代表的なのが、タンクルイ。

この形を見たことがある方も多いと思います。

タンクルイが生まれたのが1917-1922年ごろと言われています。

誕生以来、18金、プラチナと言った貴金属でケースが作られていて、高級な時計でした。

ダイアナ妃や、イヴサンローラン、ケネディ大統領と言った著名人も愛用していたらしいです。

誕生から時が経ち1970年代に、より多くの人に手に取ってもらえるよう、マストタンクシリーズ、つまり英語のMust、持たなければならない、という意味を持たせたシリーズが発表されました。

より多くの人が購入できるよう、値段が比較的安いということです。

なぜ安くできるかというと、素材に18金やプラチナではなく、純銀(シルバー925)を使用しているのが理由の1つ。

シルバーの上から、18金イエローゴールドのコーティングをすることで、色味は金になります。

コーティングが、イエローゴールドではなく、ロジウムという素材を使うと、色味が銀になり、ホワイトゴールドのような見た目になります。

要するにメッキなのですが、マストタンクシリーズのメッキはヴェルメイユ加工と言って、通常のメッキより分厚いメッキで、はがれにくいと言われています。

タンクルイ=金無垢、マストタンク=メッキ、というのが、この章のまとめです。

バリエーションの多さ

タンクルイは、白い文字盤に12個のローマ数字、青い針、という、とてもドレッシーな文字盤のデザインです。

それに対しマストタンクは、ものすごく多くの文字盤のバリエーションがあります。

青、黒、茶、赤の一色で数字が一切入っていない、無駄をそぎ落としたようなデザイン。

ローマ数字の代わりにアラビア数字が入った、ややポップなデザイン。

例を挙げるときりがないくらい、色々なデザインがあります。

ちなみに、タンクルイと非常に似た、白い文字盤、12個のローマ数字、青い針、のデザインのマストタンクがあります。

白い文字盤と言いましたが、白ではなく、黄味がかった、ベージュ~黄色の間くらいの色合いです。

変色で白がこうなったのではなく、元々この色です。

マストタンクとタンクルイを見分けるポイントの1つが、この色です。

つまり、遠くから見ても、文字盤が白いとタンクルイと分かり、黄色っぽいとマストタンクだと分かります。(例外的に、プレマストと呼ばれる、白文字盤だけどタンクルイではないものも存在します。)

もう1つの見分けポイントが、文字盤の表記。マストタンクにはmust de Cartier と記載があるので、確実に分かります。

マストタンクは、タンクルイの廉価版なのか

マストタンクは、タンクルイと比べると、素材の点では高級感は下がります。

金メッキと金無垢とでは、金無垢の方が高いのは当たり前です。

では、マストタンクは、タンクルイの廉価版なのでしょうか?

そういう考え方もできますが、あくまでカルティエの正規品、素晴らしい製品であることには変わりありません。

タンクルイと比べても、中身の機械に大差はありません。(あくまでヴィンテージの話)

細かい話をすると、手巻きキャリバー78-1と呼ばれる機械が、タンクルイ、マストタンク両方に使われています。

例外として、比較的年代の新しいタンクルイには、もっとグレードの高い機械が入っていることもありますが。

また、機械式ではなく、電池(クウォーツ)式のモデルも、タンクルイ、マストタンク共に存在します。

タンクルイは機械式が多いですが、マストタンクは電池式が多いです。

左:電池式、右:機械式

一般的に、機械式の方が電池式より高級とされるので(製造に手間がかかる為)、タンクルイの方が、中身は高級であることは多いですが、そこまで差はないと考えて問題ないと思います。

この章をまとめると、マストタンクは、素材の点ではタンクルイの廉価版と言えるが、中身に関しては大差がない、となります。

機械式か、電池式か

前章で、マストタンクには機械式も電池式も両方ある、と述べました。

気に入った文字盤のデザインに、機械式も電池式も両方選択肢がある、というケースが、まれにあります。

在庫が1個で、迷わなくて済む方が楽なのに、選択肢があると迷ってしまいますよね。その場合、どちらを選ぶべきなのでしょうか。

まず、販売価格が、機械式>電池式となり、5-10万円くらい、機械式の方が高い場合が多いです。

それは、機械式の方が、作る手間がかかっているので当然です。

マストタンクの機械式は、より具体的に言うと、手巻き式です。つまり、毎日ぜんまいを巻いてあげなければなりません。

1日1分もかからない作業ですが、習慣になるまでは面倒かもしれません。

さらに、機械式時計は、3-5年に1度、オーバーホールという、機械の分解掃除を行う必要があります。

車の車検と同じです。

時計の場合は、やらなくても罰則はありませんが、あまりに長期間放置するより、定期的にオーバーホールした方が、結果的に安く済む場合が多いので、最低5年に1度はやったほうが良いと思います。

オーバーホールは1回3万円くらいでできます。

電池式はどうでしょうか?

電池式は、毎日ぜんまいを巻く必要もないし、オーバーホールも、やった方が機械のためには良いけど、10年くらいやらなくても問題ないことが多いです。

電池が2年ほどで切れるので、電池交換だけやれば良いです。電池交換は1回2000円くらいです。

これだけ聞くと、電池式の方がメリットが多いようにも思えます。

しかし、電池式にもデメリットはあります。それは、いつか完全故障することです。

機械式時計と違って、電池式時計に使われるムーブメント(機械)は電気製品なので、いつか寿命がきます。

テレビや冷蔵庫やエアコンと同じで、20年持てば良い方です。

寿命が来てしまったら、時計屋にオーバーホールに出しても、復活しません。

ムーブメントを丸ごと取り換えるという方法がありますが、街の時計屋にはカルティエのムーブメントの在庫は普通ないので、持って行っても対応してもらえないことがほとんどです。

しかし万事休すではなく、カルティエに持っていけば、ムーブメントの交換もやってくれます。

いくらかかるのかは知りませんが、おそらく5-10万円くらいだと思います。20年後にはきっと値上がりしていますが。

参考記事

「カルティエのヴィンテージ時計、ブティックで文字盤交換するといくらかかる?」

この章をまとめます。

機械式=5年に1回3万円(オーバーホール)。

電池式=2年に1回2000円(電池交換)、20年に1回10万円(機械の交換)。

50年使うとすると、機械式は、30万円、電池式は25万円、維持費がかかります。

加えて購入時も、機械式の方が5-10万円高いので、金額だけ見るなら、電池式の方が得、ということになります。

ただし、ヴィンテージ時計としての価値は機械式の勝ちです。売却価格は、機械式の方が上がります。

いつか売るかもしれない方は、機械式が良いと思います。

マストタンク最大のデメリット

長くて恐縮ですが、もう少しお付き合いください。

金無垢じゃないと嫌だ、廉価版なんて嫌だ、という方以外には、マストタンクはおすすめできるのですが、大きなデメリットが一つだけあります。

それが、メッキの変色、剥がれです。

分厚いメッキとはいえ、メッキはメッキです。

長年使っていれば、劣化してきます。

剥がれについては、その名の通り、ポロっと剥がれてくることです。

メッキ剥がれ

どこかにぶつけてしまったりすると起こり得ます。

それ以上に厄介なのが、メッキの変色です。

私の手持ちのマストタンク、良く見てください。

購入してまだ2年経っていないですが、この通り若干変色しています。

特に4隅は変色しやすいです

メッキの内側の素材がシルバー925で、特に変色しやすい素材なので、メッキを取り越して、変色が表に現れやすいのです。

汗がついたまま拭かずに放置したり、空気に触れると起こります。

私はかなり神経質な方で、必ず汗は拭きとるし、着用しないときはティッシュにくるんでなるべく空気に直接触れないようにしてきましたが、残念ながらこの有り様です。

多分、予防策はありません。変色部分を布や消しゴムでこすると、良くなることもありますが、メッキがすり減りそうな気がしておすすめできません。

では、メッキがどうしようもないほど変色してしまったら終わりなのでしょうか?

実は、再メッキという方法があります。

一度メッキをはがしてシルバー925だけの裸の状態にし、再度メッキをかけるのです。

カルティエのブティックに持っていかなくても、時計専門店であれば対応してくれるところが多いです。

費用も、20000-30000円くらいです。

オルロージュ東京さんHPより拝借https://horloge.co.jp/archives/blog/5102

とはいえ、マストタンク自体が高くて30万円代なので、2,3万円をポンと出すのには抵抗がありますよね。

私はまだ購入して2年以内なので、もう少しそのままにして、もっとひどくなったら再メッキしようと考えています。

おまけ:私のマストタンク紹介

最後に、私のマストタンクを軽く紹介します。

見ての通り、合わせにくそうな、ボルドー1色の無地です。

ずっと赤い文字盤の時計に憧れがあって、29歳になった時くらいに購入しました。

金のケース、赤い文字盤、3時位置の右につく竜頭という部品の先につく、青い石。

金赤青の3色が綺麗にマッチングし、黒いクロコダイルのベルトが、フェミニンならずにそれらの色を引き締めてくれる。

このバランスが好きです。

これが茶色のベルト、ましてや赤いベルトになると、すぐに女性モノの時計に見えてしまいます。

ちなみに、電池式です。

ヴィンテージ時計屋で働き始める前で、中身にこだわりが無かったので、安いし楽だし良いや、という理由で電池式にしました。

今なら機械式を買いますが、電池式が嫌というほどではありません。

基本的にこの時計のことは好きなのですが、正直、メッキの剥がれだけは好きになれません。

頻繁に再メッキするお金の余裕もないので、今後ずっと使い続けるかは悩みます。

まとめ

マストタンクの購入を迷われている方にとって、少しでも参考になりましたでしょうか。

メッキ以外の点では、素晴らしい時計であることは間違いありません。

私はマストタンクを実際に持ってみて、初めてメッキのマイナスポイントを実感しました。

中の素材がステンレスのメッキ時計は、変色が起きることは無いけど、中がシルバー925だと、変色が起こりやすいのだと思います。

実際に、持っている他のメッキ時計は、60年前のモノでも変色はほとんどありません。

もちろん、メッキか無垢か選べるなら、金無垢の方が良いのは間違いないですが、金無垢は高いです。

金無垢のタンクルイのヴィンテージ、かつ手巻き式だと、200万円くらいが相場です。電池式であれば100万円くらいです。

マストタンクは、どうしても文字盤のデザインが気に入った場合か、再メッキにお金をかけることをいとわない方の場合は、おすすめできます。

以上です。お読みいただきありがとうございました。

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