Maison Hellard のリネンに惚れる(Carnet De Voyage コレクション)

リネン

こんにちは。

ミスターリネンと申します。

スーツ好きの方には既に有名であろう、Maison Hellard(メゾンエラール)という生地ブランドがあります。

その中でも、一人のリネン好き、自称ミスターリネンとして、これほどまでにビビッときたリネンの生地には、今まで出会ったことがありませんでした。

それが、Carnet De Voyage という名のコレクションです。

メゾンエラールHPより拝借。

個人的にも一着オーダーすることを決めました。

その魅力を私なりにお伝えさせてください。

メゾンエラールの特徴

メゾンエラールという生地ブランドについては、様々なテーラーさんのブログなどでも紹介されているので、ここではごく簡単に。

2020年フランスで創業の新しいブランドで、リネンをメインに作っているようです。

スーツの世界におけるリネンブランドと言えば、アイリッシュリネンで知られるスペンスブライソンが最も有名だと思います。

アイリッシュリネンは、ハリがあって、丈夫で、最初は固いと感じることもあるけど、着こんで体に馴染ませていくような生地です。

スペンスブライソンのTropical。硬さが伝わりますでしょうか。

それに対して、メゾンエラールが得意とするのは、フレンチブランドらしく、フレンチリネンを使ったリネン生地で、最初から比較的柔らかいのが特徴です。

メゾンエラールのフレンチリネンの生地。同社HPより拝借。

使う素材はフレンチリネンですが、生地を織っているのはイタリアがメインのようです。

柔らかいと、ズボンには向きにくいので、ジャケット単品に使われることが多いです。

しかし、メゾンエラールはよく調べると、メインで使うのはフレンチリネンですが、アイリッシュリネンも使ったり、またイタリアだけでなく日本やアイルランドでも織っているなど、幅が広いです。

恐らく日本のテーラーで最もよく使われるのが、Heures Bleuesというコレクション(シリーズ)です。

柄のあるものが、360gの重さで、織り方は綾織り、織り目が斜めに入るツイル織りです。

無地のものが、330gの重さで、平織り、英語で言えばプレーンでしょうか。

平織りより綾織りの方が、目は詰まるので、風は比較的通しにくく、より涼しいのは目が詰まっていない平織りになります。

Heures Bleuesというコレクション名を翻訳すると、「青の時間=日没直後〜夜に入る直前の、空が深い青に染まる時間帯」といった意味らしいです。

なるほど、確かに柄物はほとんどの生地にブルーの要素が入っていますね。

このコレクションを数年前に見た時、格好良いなとは思ったものの、オーダーしたいと思うほどはピンとは来ていませんでした。

メゾンエラールというブランドはこのコレクションしか生地が無いと勘違いしており、それ以上同ブランドのことを調べることもありませんでした。

(実際は、7コレクションもあります。)

Carnet De Voyageの特徴

お直し屋サルトで働き始めてから、展示されている生地バンチをしょっちゅう見ているのですが、メゾンエラールに、Carnet De Voyageというコレクションがあることを知りました。

見てみると、衝撃を受けました。

まずは1枚だけ。後で他の生地の写真も載せます。

特徴を一言で言えば、「ツイードっぽいリネン」です。

私はツイードの柄物ジャケットが大好きなのですが、ツイードは日本で着られる季節は短いし、暖房の効いた室内ではその暖かさは不要です。

もっと涼しく快適に着られる、でもツイードっぽい重厚な雰囲気のある生地はないかとずっと探していました。

一つの解決策として、サマーツイードという生地があるのですが、丈夫さの観点では、やや劣るらしく、ガシガシ着て、水洗いもたまにはしたいと考える私にとっては、最適解とは言えません。

そんな中出会ったこのコレクションは、まさに完璧な生地でした。

スーツに使うリネン生地は、表面を起毛させることはまれで、基本的にはつるっとして、ややツヤさえある表情が多いです。

スペンスブライソンの定番、Tropicalなんかがまさにそうです。

リネンを着ると、シワが沢山できてカジュアルな印象が出るので、生地自体はつるっとしていて上品さがあるほうが、シワのカジュアル感を中和してくれて、バランスが良いと考えています。

スペンスブライソンのTropical。シワはあるけど生地が上品なので、カジュアル過ぎる印象にはなっていない。

逆にコーヒー豆袋のような、起毛感のあるがさっとした表情のリネンでスーツを作り、それにシワが刻まれると、味があって渋いが、上品とはちょっと違うイメージになります。

それはそれで格好良いですが、タイドアップよりは、カジュアル合わせがメインになると思います。

では起毛したリネンはスーツやジャケットに向かないのか、というと、そうではありません。起毛リネンが最も真価を発揮する場所が、柄物です。

柄物の生地は、起毛感が無いと、柄の出がはっきりするので、派手な印象になりがちです。

しかし柄物でも起毛していると、柄の出方がぼやけてくれるので、比較的落ち着いてくれます。

良い例が、フランネルやツイードです。

梳毛の(つるっとした)ウールのストライプと、紡毛の(起毛した)フランネルのストライプを比べると分かりやすいでしょうか。

梳毛ウール生地のストライプ。線がはっきり見える。PSFAさんHPより拝借。
紡毛のフランネルのストライプ。線がぼんやりしている。BEAMSさんブログより拝借。

特にツイードは、派手な柄が多いですが、起毛しているからこそ柄がぼやけて着やすいのであって、仮に表面がつるっとしていたら、かなり着こなしのハードルが上がりそうです。

ツイードの柄物。
普通のウールの柄物。起毛が無い分、柄がはっきり出る。

メゾンエラールでも、比較的展開の多い Heures Bleues というコレクションの柄物も、つるっとしているというほどでもなく、多少の起毛感は感じますが、まだ物足りないな、と思っていました。

もったいぶりましたが、Carnet De Voyageというコレクションの生地を紹介します。

いかがでしょうか。

ツイードほどの起毛感はありませんが、これまでのリネンには無い迫力があり、ツイードっぽいと思いませんか?

画質が悪いかもしれないので、同社HPから写真を借りて貼り付けます。

この写真だと、リネンらしい光沢感も感じられますね。

実際に生地の説明を見ると、Sanforised and Brushed Linen(縮絨加工&ブラッシング加工したリネン)とあり、表面を多少毛羽立たせていると思われます。

どれも柄物で、使われている色の数が多いものもありますが、不思議と派手な印象はありません。

まさにツイードと同じ特徴があります。

もう少し深掘ると、糸が太く、ざっくりした織りで、目がそんなには詰まっていない感じです。

スペンスブライソンでも、Tropicalは比較的細い糸で、目が詰まっているのに対し、Tyroneというシリーズは太い糸で、目が詰まっていない荒めの織りです。

Tropical
Tyrone

メゾンエラールのCarnet De Voyageは、生地の重さが410gと、スペンスブライソンより重く、Tyrone(380g)に近いざっくりした織り感です。

ちなみに織りは綾織りです。普通は綾織りの方が目が詰まっているものが多いので、綾織りなのにざっくり感があるのは不思議です。

生地がリネンの中でも最重量級なので、日本の夏には一切着られなそうです。

しかし、春秋はもちろん、冬でも室内で着るにはちょうど良いと思います。

日本では、6-9月以外の全ての月で着られそうだと思います。

重厚感があるので、1月や2月でも、季節感的にそこまでおかしくないと私は思います。思いたいです。

ミスターリネンを名乗っている以上、こういう分厚いリネンを秋冬に着ることが、もっと一般的になるように、微力ながら発信を続けていきたいです。

私が考える「季節感がある」とは、「実際に機能的に快適であること」です。

リネン=春夏の生地、と決めつけずに、秋冬でも、リネン生地の色合い、厚さ、表面の加工などによっては、ふさわしいリネンもあるかもしれません。

確かに、真冬にリネンシャツ一枚で過ごしている人を見たら、明らかに季節感はありません。

しかし、例えば分厚いリネンジャケットに、インナーはカシミヤのタートルネック、そして一番上にはカシミヤのコート、というコーディネートを真冬の東京でするのは、そこら中に暖房の効いた現代では、一つの正解だと主張したいです。

寒い外では、コートのおかげで暖かく、暖房の効いた室内ではジャケットを脱がなくても暑くなり過ぎません。

リネンは、空気を含んで保温効果があるので、上に風を通さないコートを着れば、それなりに暖かいです。

暑くて汗をかいてきたとしても、湿気をためずに逃がしてくれるので、天然の体温調節機能もあり、リネンは本当に優秀です。

Carnet De Voyageのコレクションから話が逸れてしまいましたが、戻ります。

Carnet De Voyageの意味を調べると、旅日記といった意味だそうです。

どこが旅?と思ったのですが、よく見ると、無地の生地もコレクションには入っており、アイルランドや日本で織った生地もありました。

(上で写真を紹介した柄物は、イタリアで織った生地です。)

なるほど、旅をテーマに、世界中色んな場所で作ったコレクション、ということですね。

面白いのが、日本で織られた生地で、墨色デニム、自然デニム、乳色デニム、という生地もありました。

どれも素敵ですが、見たことがないというほどではなかったのと、ツイードっぽさを感じるのは柄物だけだったので、今回は柄物だけに注目します。

どの生地を選ぶか

同コレクションの柄物は、全種類欲しいくらいですが、そんな余裕はあるはずもなく、とりあえず1つに絞らなくてはなりません。

個人的好みで恐縮ですが、候補はこの3つです。

どれも3色以上使われていてカラフルと言えばカラフルです。

カラフルなおかげで、インナーやズボンには、その3色の中のどれかの色に近い色を持ってきても相性が良く、色拾いがしやすいです。

とはいっても派手さは全くなく、汎用性がとても高そうです。

バンチだけではイメージが湧きにくいので、インスタで着用画像を漁ると、いくつか見つかりました。

以下全てメゾンエラールインスタより拝借。

いやー、3種類とも格好良すぎて、順位が付けられません。

残念ながら、こちらは売り切れみたいで、諦めました。

残り2つのどちらにするか。

迷ったあげく、ピンクのラインが入ったこちらにしました。

グリーンのラインが入った方が落ちた理由は特にありません。

近いうちにこちらも買ってしまうかもしれません。

サルトでオーダー

オーダーするのは、サルトです。

自分が働いているところのスーツをもっと知るには、まず自分が買って着てみる以上の方法はありません。

サルトでは、職人さんが0から作るビスポークもありますが、私は通常のパターンオーダーにしました。

お直し経験豊富な先輩スタッフに採寸からフィッティングチェックをしてもらい、今までは知らなかった自分の体の特徴や、フィッティングを向上させるポイントを教えてもらいました。

パターンオーダーでは、基本となるゲージ(試着見本)を着て、そこからどこを出すのか、詰めるのか、位置を上げるのか下げるのか、といった調整をしていくわけですが、「~の寸法を出す」と言っても、具体的にどんな作業をすることになるのか理解していないと、より良いフィッティングは実現できません。

例えば、「背幅を出す」といっても、具体的に、背中の中心の縫い目部分を出すのか、背中と腕の付け根部分を出すのか、肩甲骨あたりの高さだけを出すのか、もう少し腰の方まで出すのか。

そういったところまで考える必要があることは、私は知りませんでした。

これまで、パターンオーダーでも全然着心地が良くなかった経験、ビスポークよりパターンオーダーの方が着やすいと思った経験、様々ありましたが、まだまだ私には勉強が必要だと改めて感じました。

随分と長くなってしまいましたので、どんな形や仕様にしたかなどは、また別の機会にご紹介させていただきます。

最後に

それにしても最高のリネンに出会ってしまいました。

柄物のリネンという新たな扉を開いてしまいました。

これまでは、いつかリネンの良さを広められるような人間になりたいな、というぼんやりとした目標がありましたが、新たな目標、というよりもっと遠い遠い先にある、夢が見つかったかもしれません。

「理想的なリネンの生地を自分で作る。」という夢です。

メゾンエラールの今回のコレクションは、しびれるほど格好良い色柄、かつ重厚感のある生地ばかりでしたが、リネン素材で、柄物、かつ400g以上の重い生地、というのは、珍しい存在です。

(私が知らないだけかもしれないので、ご存じの方がいたらぜひ教えてください。)

それに対して、ツイードには、雰囲気のある色柄の生地は、ごまんとあります。

ヴィンテージの生地も沢山あります。

理想のリネン生地が無いならば、自分で作りたい!と思ったのです。

自分で生地を開発するなんて、夢のまた夢すぎますかね。

死ぬまでに実現すれば嬉しいです。

以上です。

ありがとうございました。

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