こんにちは。ミスターリネンと申します。
ジャケットを購入する際、着丈の長さと同じくらい重要なポイントになるのが、腰のあたりに2つ付くポケットの高さと、ボタンと位置の関係です。
なぜなら、それらの位置により、ジャケット全体のバランスが変わるし、ウエストの高さが高くも低くも見え、イコール足の長さの見え方の長短にもつながるからです。
と知ったかぶりをしましたが、クラシック勉強中の私はこれまで、ジャケットを購入する際は着丈の長さやラペルの幅は気にしたことがあっても、ポケットの高さやボタン位置は気にしたことがありませんでした。
でも、クラシックスーツに関する本を読んでいると、ポケットとボタンの位置についての記述が大抵あります。
改めてポケットとボタン位置に注目してジャケットを見ると、ブランドによって、テーラーによって様々であり、発見がありました。
クラシックなポケットとボタンの位置の関係を、この記事では研究します。
目次
クラシックなポケットとボタンの位置は、既に決まっている
クラシック界の重鎮、故落合正勝氏によると、「個々のバランスの良い数字は、1世紀近い時間をかけて、テーラーたちが確立させ、それを既製服業界が平均値化したものだ。」
その「確立された正解」であるクラシックなスーツのポケットとボタンの位置はこうです。
ジャケットの裾から23~25センチにポケットの上辺がある。
ポケットの上辺と同じ位置に、一番下のボタンが来る(シングルブレストでもダブルブレストでも。タキシードなど1つボタン仕様のものは除く。)
一番下のボタンから10.5~11センチ上に2つ目のボタンが来る。3つボタン、ダブルブレストの6つボタンの場合は、同間隔で次のボタンが来る。
一番下のボタンが、ポケットの上辺より上がったり下がったりしているものは、流行を追ったものである。
落合氏によれば、シングルでもダブルでも、一番下のボタンとポケットの上辺が同じ高さ、というルールさえ守っていれば良いようです。
ダブルブレストは、ボタン位置がやや下がる、こともある
落合氏の意見だけを頼りに、研究を終了してしまうのは不十分なので、他のクラシック界の重鎮の着こなしを見てみます。
確かに、落合氏の言う通り、一番下のボタンとポケットの上辺が同じ位置になっていますね。
シングルブレストのジャケットだと、モードブランドなどは除き、クラシックなスーツを作るブランドでは、ほぼ100%、一番下のボタンとポケットの上辺が同じ位置になっていました。
ところがもう少し写真研究を進めてみると、例外が見つかります。
ダブルブレストのジャケットだと、ポケットの上辺より下に、一番下のボタンが位置しているものが見つかります。
チャールズ英国王や赤峰幸生さんが、流行を追ったジャケットを作られたとは考えにくいです。
落合氏の著書をくまなく探すと、答えが見つかりました。
「ボタン位置を下げることにより、ややモーダ系に寄っている」
ダブルブレストのジャケットの場合は、ボタン位置がやや下がってもクラシックの範疇に収まると言えそうです。
ボタンとポケットの高さで、足の長さが変わって見える?
クラシックの答えが分かっても、その理由が分からないとすっきりしなくないですか?
私は理由も知りたく、研究を進めてみました。
そこで分かったのが、ボタンとポケットの位置は、ジャケットのウエスト位置と連動していて、それらが(不自然でない範囲で)上にあるほどウエスト位置が高く見え、足も長く見える、ということです。
留めるボタンの位置は、ウエストが最も絞られている(ように見せられる)位置です。
一番下のボタンが上にあるということは、実際に留める下から2つ目のボタンも上の方にあることになります。
その位置が高いほど、ウエストの位置が高く見えますね。
もちろん、体全体のバランスがあるので、足を長く見せたいからボタンを上の方につければいい、という話でもありませんが。
適切なジャケットの着丈は、その人の身長で決まっています。
ポケットの位置も、ジャケットの着丈から考えて上過ぎても下過ぎてもおかしいので、着丈に応じておおよそ決まっています。
そうなると、ボタンの位置くらいしか、調整し得る箇所がありません。
理想はポケットの上辺と一番下のボタン位置が同じになることだけど、それだとボタンの位置が上過ぎてしまうこともある。
つまり、ダブルブレストで6つボタンの仕様の場合、一番下のボタンから上に10.5~11センチに2列目のボタン、そこからさらに同間隔で3列目(一番上の列)が来るけれど、3列目が胸ポケットに重なりそうな高い位置に来てしまう、という状態です。
ならば、開始位置となる一番下のボタン位置を下げるしかないということになります。
仮に縦のボタン間隔を詰めるという方法をとってしまうと、中心に寄った顔になってしまいます。
シングルブレストならば、3つボタンではなく2つボタンにすれば、ダブルブレストならば、6つボタンではなく4つボタンにすれば、一番上のボタンでもウエスト位置になるので、一番下のボタン位置を調整せずに済みます。
どうしても3つボタン、6つボタン仕様にしたい、けど身長はあまり高くない、もしくはジャケットの着丈を短めに設定したい、という場合には、ボタン位置のバランスが崩れかねません。
「身長が高くない方は、シングルは2つボタンが合いやすい」と言われるのも納得感がありますね。
この章は、ほぼ100%私の考えです。もし間違っている箇所があったらご指摘いただけると幸いです。
手持ちのジャケットを確認
私の手持ちのジャケットをいくつか見ると、シングルブレストはすべて一番下のボタンとポケット上辺が同じ高さでした。
ダブルブレストの多くはは、ポケット上辺より下に、一番下のボタンが位置していました。
これは、ジャケット着丈研究の記事でも確認したのですが、手持ちのダブルのジャケットが、私の適正着丈より、1~2センチ短かったことを考えると、納得です。
適正着丈通りであれば、それに応じてポケット位置もあと1~2センチ下に来て、一番下のボタンと同じ高さか、気持ちボタンの方が下にある、くらいになるのだと思います。
まとめ:ちょっと待って落合さん
最後に、この研究結果を台無しにするような、落合正勝氏の記述を紹介します。
「クラシックなスーツのボタン位置は、最初から決められている。一番下のボタンが、両サイドのポケットの上端の延長線上から1.5センチ下にくる。」(『男の服装術』より)
いやいや、別の著書で、一番下のボタン位置とポケットの上辺は同じ高さが最もクラシック、と言ってたじゃないか!と言いたくなりました。
ダブルブレストは、これまで見てきたように、ボタンとポケット位置は多少ずれてもクラシックなので、反論はありません。
しかし、シングルブレストとなると、言っていることが違う、ということになります。
でも、こう理解すれば良いのだと思います。
これがこの記事のまとめになります。
「一番下のボタンとポケットの上辺は、近ければ近いほどバランスが良く見え、クラシックでもある。しかし、1~2センチくらいのズレであれば、全体のバランスが崩れるほどでもないので、クラシックの範疇内。」
確かに、ポケット上辺とボタン位置が同じである例として先に紹介したこの写真も、よーく見ると、ポケット上辺より0.5~1センチくらい下に、ボタン位置が来ていますね。
知れば知るほどクラシックは難しいですね。
1冊の本を読めば全て理解できるわけではないのはもちろん、1人の意見を鵜呑みにしすぎるのも危険だと分かりました。
落合正勝氏のことは今後も引き続き勝手に師匠とさせてもらいつつ、色んな方の意見、着こなしを調べ、なるべく客観的にクラシックを研究し続けたいと思います。
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