クラシックスーツの社会の窓、ボタンかジッパーか

オーダー

こんにちは。ミスターリネンと申します。

ズボンの前開き部分を、社会の窓と初めて呼んだのは誰なのでしょうか?

社会の窓という言葉から、色々なことが想像でき、素晴らしいネーミングですよね。

それはさておき、皆様は、ズボンの社会の窓は、ボタンフライ(ボタンで開閉する)かジッパーか、どちらがお好みでしょうか?

今回の記事では、クラシックなスーツには、ボタンかジッパーのどちらをつけるべきかを検討します。

以下、前開き部分、ではなく、社会の窓という語を使います。

ボタンだけがクラシック

冒頭で述べた通り、今回考えるのは、あくまでスーツにおける社会の窓の話です。

デニムやチノパンは除きます。デニムやチノパンは、私個人としてはボタンフライが良いと思っています。

洗濯を繰り返して、生地の表面に、アタリとも言われるボタンの跡がうっすら出てくるのが格好良いと思うからです。

デニムブリッジさんHPより拝借http://denimbridge.jp/2012/09/13/821

本題に入りますが、いきなり本記事の結論を述べると、クラシックなスーツにはボタンフライが正解のようです。

かつてはボタンしか存在せず、ジッパーはあくまで最近できたものです。

中世ヨーロッパの宮廷服には、フロントボタンだけで30個以上は取り付けられており、ボタン=アクセサリーとして考えられていたようです。

落合正勝氏は、こう述べています。

「男のスーツの付属物で、唯一突起があるのはボタンだけである。ボタンは実用には違いないが、突起があることから考え、それはアクセサリーの類と解釈すべきだ」

ボタンは、実用(留める機能)+装飾ですが、ジッパーは、実用(閉じる機能)でしかありません。

機能からくるディティールは、すべからくクラシックにはなり得ない。という落合氏の考えに私は賛同しています。

ボタンダウン、タブカラー、ピンホールといったシャツの襟も、落合氏によれば、機能から生まれた非クラシックなものです。

私は、そういった襟型のシャツは着てはいけない、とは一切思っていません。クラシックの本流ではなく、あくまでカジュアル寄りだと理解しながら着ることが大事だと思っています。

参考記事「最もクラシックなシャツの襟型」

素人が偉そうなことを言いましたが、まとめると、クラシックを追い求めるなら、ボタン一択ということになります。

ボタンを留める行為は、男の精神統一?

ボタンの重要性をもっと知るために、落合氏の引用を続けます。

「外見だけでは決してわからないズボンの凝った前ボタンや、ていねいなハンドワークがほどこされたボタンホール、それが正統につながるのだ。」

「歴史を遡れば、もともと男が身に着けるものは、下着、靴にいたるまでボタン留めが基本である。ボタンを1個1個留めていく行為は、戦いの前の兵隊、試合前のスポーツ選手たちが、それぞれのユニフォームや靴の留め具を一つひとつ締めていく行為、換言すれば精神的な身支度を意味する。ばかげたことだが、男たちは女たちと違って意気地がないので、常にある精神的高揚が必要なのだ。」

「ズボンの前ボタンは、急を要するとき不便きわまりないことは確かだが、紳士たるもの慌てず騒がず、悠然とボタンを一つずつ外していく。せっぱつまった身震いなどはもってのほかである。」

面白いと思いませんか?

確かにそう聞くと、ボタンが良いと感じるし、常に優雅な紳士でありたいと思えてきます。

クラシックなスーツを極める=外見だけでなく中身もクラシックな紳士になる、とも言えるので、ボタンフライが理想です。

ボタンのデメリット

しかし、時代は真逆です。

ノンアイロンシャツをはじめ、どれだけ楽か、というのが、服の共通目標になってしまっています。

私はそれには反対です。決してノンアイロンシャツは着ず、毎日シャツにアイロン掛けをするし、スーツオーダーの際は、ズボンもボタンフライで必ず注文します。

と言いたいところですが、残念ながらそういう人間には私はまだなれていません。

ズボンに関しても、オーダーでは今まですべてジッパーにしてきました。

ボタンフライは、実際不便ですよね。

立ち小便の際、ボタンを2,3個だけ外して用を足し、再び留める際、最後の1つになると、指を入れるスペースが小さく、非常に留めづらいです。

なので結局、ボタンを上から全部外して、下から1つずつ留めていくことになります。

デニムのように、他人から見てボタンかジッパーか分かるのなら、ボタンフライでも良いかも、という見栄っ張りな考えも出てきますが、スーツのズボンは、よっぽど長年着こまない限り、外から見ても分かりません。

ボタンフライには、クラシックを実践できるという以外のメリットが非常に少ないと言えます。

ジッパーのメリット

ボタンは取れたら、そのボタンだけつけ直せばよいというメリットがあります。

ジッパーは壊れたら修理不可で全取り換えするしかないというデメリットがある、と言われます。

しかし、最近のジッパーは、壊れることはまずありません。

あなたのズボンのジッパー、壊れたことがありますか?

ボタンは、普通に取れます。

外したり留めたりするたびに、留めている糸に負担がかかるから仕方ありません。

それに、ボタンを通す方の布も、擦り切れてほつれてきます。

ボタンの穴が完全に裂けてしまうこともあります。

そうなると、修理は出来ますが、お金が掛かるし、ズボンと同じ布も必要になります。

ジッパーは、クラシックでないという唯一のデメリットはありますが、それ以外はメリットが非常に多いです。

まとめ:現代では、ジッパーでも良いのでは

ジッパーのことばかり褒めてしまいましたが、最初に確認した通り、クラシックなのはボタンで間違いありません。

現代においてクラシックを追求するのは素晴らしいことですが、100%実践するのは困難ですよね。

スリーピーススーツに、ハットを被って会社に行き、どんな時でも決してシャツ一枚姿にはならない。

というのはよっぽど気合の入った人にしかできません。

クラシックを追求すると、革靴の裏にラバーを貼るのはNG、ノンアイロンシャツを着るのもNG、となりますが、どこまで実践し、どこまで妥協するかは、その人次第ということになります。

ズボンのボタンも、その一つで、ボタンの方がクラシックレベルを上げられるけど、ジッパーでも現代なら許容範囲内ではないか、というのが私の考えです。

それでも、次にスーツをオーダーする際は、ボタンにしてみようかと考えています。

ジッパーに慣れていると、ボタンが不便に感じますが、慣れてしまえばどうということもない、かもしれないので。

何より、クラシックな男になりたいので。

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