ジャケット着丈研究

クラシックのルール研究

こんにちは。ミスターリネンと申します。

ジャケットを購入する際、オーダーする際、大事な要素となるのが着丈です。

ひと昔前の、お尻丸出しの短い着丈が間違っているのは当然としても、「お尻が完全に隠れるくらい」「手を下してジャケットの裾を第一関節でつかめるくらい」など、色々な表現を目にし、混乱する方も少なくないと想像します。

少なくともクラシック勉強中の身である私は、これだ!という答えが分からず困っています。

でも、完璧主義気味の面倒な性格なので、1センチどころか、5ミリ単位で正しい着丈でジャケットを着たいと考えています。

これまでお世話になってきたテーラーさんに聞いた話、書籍や他の方のブログ等で学んだ話を元に、間違いのない、流行に左右されないクラシックな着丈を今回は研究します。

結局は全体のバランス、と言われても

ジャケットの着丈を決める際、関わってくる要素は沢山あります。

身長、体形、胴体と足と腕の長さ、など、その人の体に関する要素。

ツーピースかスリーピースか、ジャケパンなのか、ジャケットのデザイン、肩幅の大きさ、太めか細めか、ベントの有無などのジャケット自体に関するの要素。

加えてトラウザーズ=スラックスのシルエットももちろん関わってきます。

これは私がテーラーさんから聞いた話ですが、肩が小さめ(肩パッドが薄い)ジャケットは、肩が大きめのジャケットよりは着丈は短い方が合いやすいようです。

どちらも同じ48サイズで、

Husbandsのジャケット:着丈76センチ、モデル身長183センチ

タリアトーレのジャケット:着丈71.5センチ、モデルの身長は182センチ

Husbandsは割としっかり肩パッドが入っていて肩が大きい印象、タリアトーレは肩パッド薄めもしくは全く入っていないのか分かりませんが、丸みを帯びていて肩が小さい印象です。好みは分かれると思いますが、どちらもジャケットとしてバランス良くデザインされているように思えます。

まとめると、何の参考にならない答えになってはしまいますが、数字で表せる寸法ではなく、結局は色んな要素を鑑みたうえでの、全体のバランスで最適な着丈は決まるのです。

目安:総丈(首の付け根から踵までの長さ)÷2が基準

もちろん、上述の答えでは私は納得がいきません。

というのも、ジャケットを買ったりオーダーする際、自分の知識だけで着丈の長さを選択することができないからです。

オーダーの場合は、私のような素人が自分で着丈を選択するより、信頼できるテーラーさんにお任せするのが良いのは当然ですが、その長さがなぜ良いのか、私は理解した上で着たいのです。

信頼できるテーラーの一人(これまで何人ものテーラーさんに作ってもらってきたかのような言い方ですが、数えるほどしかオーダー経験はありません。)であるアトリエベルンの竹内さんのコラム、The Bookにこのような記載がありました。

「総丈(首の付け根から踵までの長さ)÷2が基本」

着丈の理想的な長さ

これは具体的でとても参考になる情報です。

私が実際に竹内さんにオーダーさせてもらった際も、この算出方法でした。私は偶然竹内さんと腕の長さを除いてほぼ同じ体形のようで、私物のジャケットを着させてもらったら、美しい着丈感でとても納得でした。

バランス次第、という元も子もない答えを一旦無視するならば、総丈÷2を“正統”として考えるのはとても分かりやすく、参考になる基準です。

手持ちのジャケットを調べてみた

竹内さんに図っていただいた私の最適着丈は、76センチでした。

試しに手持ちの他のジャケットの着丈を図ってみると、73センチ~78センチまでありました。

MICHELE&shin (ミケーレシン)さんという、イタリアナポリ近郊に工房を構えている日本のテーラーさんに作ってもらったジャケットは、全部で3着ありますが74もしくは75センチでした。

リネン、リネン、フランネル

76センチより1.2センチ短いですが、ナポリらしく、肩パッドが薄く、比較的小さめの肩のデザインであるので、多少短くてもおかしくない、あくまでクラシックの部類に入る着丈だと思います。

補足ですがミケーレシンさんも私はとても信頼していて大好きなテーラーさんです。別の記事でも良く写真を載せている以下のブラウンのリネンスーツも、ミケーレさんでオーダーしたものです。

他に、既製品で購入した、こちらの2着は78センチでしたが、比較的肩パッドも厚めであり、全体を見ても長すぎる感じは全くありません。

リネン×ウール、リネン

既製品ですがどちらも古着で買ったもので、今と比べたら長めのものが流行だった時代に作られたものと思われます。

一着、全体の印象からして、やや短すぎる気がするジャケットがありました。

短い気がするというのは、素人である私の感覚でしかありませんが、実際に測ってみると、73センチです。

肩パッドこそ薄く軽い仕立てですが、ダブルで素材はフランネル、ある程度重厚感のあるデザインなのに、着丈が短いのはかっこよく見えません。買った当時は着丈のことを今ほど気にしてはいなかったので、試着した特に違和感はありませんでした。

少ない実験対象、また私の素人感覚から導いたデータにすぎませんが、総丈÷2を基準として、上下2センチまでは許容範囲、とゆるく結論づけておきます。

その2センチの許容範囲こそが、全体のバランス次第では調整しても良い(クラシックの範疇に収まる)とされる範囲なのではないか、と考えます。

おそらく、総丈÷2の基準値から、2センチ以上短い着丈は、全体のバランスがどうであっても、お尻が出過ぎるのでかっこよくならないと思いますが、

反対に、総丈÷2の基準値から、2センチ以上長い着丈は、全体のバランス次第ではクラシックかつ美しく見える可能性もあると思います。

78センチより長いジャケットを持っていないので、あくまで予想です。

砂時計は崩さない

これまで、感覚ではなく、なるべく数値で具体的に、最適な着丈の長さを知るための研究をしました。

既製品を購入する際、メジャーを持参し、商品の着丈を測ることは消費者として何の問題もないと思いますが、少し恥ずかしいですよね。

クラシックで正しい着丈か、メジャーを使わず手っ取り早く確認する方法を紹介します。

それは、ジャケットがきれいな砂時計型になっているかどうか。

ウエストの一番搾られている部分を起点に、肩まで、裾までの長さが、同じに近いほど、きれいな砂時計型になります。

アトリエベルンの竹内さんのコラム、The Bookでも、他の書籍やブログ記事などでも、砂時計型が理想的なジャケットのシルエットであると書かれているのを良く目にします。

実際に私の例で確認しても、総丈÷2の基準から、上下2センチずれても、砂時計型は保たれていると思います。取る角度が下からだったため、真ん中のベージュのスーツは、ウエストから下が若干短いようにも見えますが。

自分の着丈が完璧だなどとは思っていませんので、上の3着とも、砂時計型は崩れてはいないものの、あと1.2センチ着丈が長くてもアリかな、と思います。イタリアナポリに工房がある、ナポリスタイルが売りのテーラーさんなので、肩パッド薄め、肩小さめということを考えると、少なくとも悪くはないと思います。

テーラーさんにも、もう少し長い着丈でも良いと言われたのを、私自身でこの着丈が良いと指定して仕上げてもらったので、間違っているとしても私の間違いです。

仮に、お持ちのジャケットが全体の印象からして何となく短い気がする、という感覚があるのなら、砂時計型がきれいに出ていないことを感じ取った感覚である可能性が高いです。ご試着の際は参考になるかもしれません。

ジャケットの肩幅、デザイン、トラウザーズのシルエットといった要素を考慮して全体のバランスを見ろと言われても、プロじゃないと難しいですが、砂時計型がきれいに出ているかどうかだけなら、チェックすることは手間ではないと思います。

まとめ

私の考えでは、

総丈(首の付け根から踵までの長さ)÷2を基準として、上下2センチまでの範囲なら、流行に左右されないクラシックなジャケットの着丈と言ってよい。

その範囲内で、全体のバランスを見て、最適な着丈が決まる。

全体のバランスは、プロでないと分からないことも多いが、自分で判断するのであれば、砂時計型がきれいに出ているかを判断基準とすると良い。

間違っているところ、ご意見、ありましたら是非コメントで教えていただけると助かります。

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