「メタルブレスの時計は夏でもつけられる」の落とし穴

お直し・ケア

こんにちは。

ミスターリネンと申します。

汗を大量にかく夏は、時計にとって、特にヴィンテージ時計にとっては最悪な季節です。

・革ベルトの時計=秋冬向け

・メタルブレスレットの時計=夏向け

と言われることが多いですが、私はその使い分けに疑問があります。

メタルブレスレットの時計を夏に付けることは、以下で述べる理由から安全とは言えないと思っています。

時計を守るため、どのようなことに気を付け、革ベルトとメタルブレスレットはどう使い分ければ良いのか。

私の考えをご紹介します。

時計へのダメージを、本体とベルトと分けて考える

まず最初に、時計を本体とベルト(革、メタル、ラバー、NATOベルト等)に分けて考える必要があります。

「汗で時計が痛む」と言う時、それは時計本体(ケースの金属や、中身の機械)へのダメージなのか、ベルトへのダメージなのか、どちらかはっきりさせないと、対策も立てられません。

時計を腕に付ける時、革ベルトを付けようが、メタルブレスレットを付けようが、時計本体へ汗が付くことに変わりはありません。

つまり、革ベルトにするか、メタルブレスレットにするかで生まれる違いとは、革ベルト自体、メタルブレスレット自体へのダメージの違いでしかなく、どちらであっても時計本体は守れていないのです。

もし時計本体への汗の付着、内部への汗の侵入を防ぎたいのなら、台座と呼ばれる薄い革を敷くか、NATOベルトを装着し、時計本体と腕が直接当たるのを防ぐしかありません。

台座
NATOベルト

現行品の時計であれば、時計本体はそれなりに密閉性があるので大丈夫ですが、ヴィンテージ時計の場合は、たとえダイバーズウォッチであっても、非防水と考えるべきです。

真夏にヴィンテージ時計を付ける場合、革ベルトでもメタルブレスレットでも、どちらも時計本体には危険だと私は考えます。

補足として、台座やNATOベルトは、時計の裏側からの水分、つまり汗の侵入を防ぐのには役立ちますが、表側からの水分、雨や手洗い時の水は防げません。

雨の日は、寒い季節であってもヴィンテージ時計は注意が必要です。

革ベルト

ここからは、話の中心をベルトに移します。

まず、革ベルトについて考えます。

(この記事では、革ベルトとメタルブレスレットについてのみ詳しく見ていきます。それ以外のラバーベルトなどは検討対象からは外します。)

革ベルトが汗に弱いと言われるのはなぜなのでしょうか。

革に程よい水分は必要なので、手で触れることにより多少の皮脂が付いたり、、ハンドクリームを塗った後のちょっとした残りを付けるくらいなら、良い保湿になってむしろプラスだと思います。

逆に一切水分を与えずにいたら、乾燥してカピカピになってしまいます。

しかし、大量の汗によりビチョビチョになるのは良くありません。

なので私は、夏に革ベルトを付けるのはやめるべきという意見には賛成です。

繰り返しになりますが、前章で述べた、時計本体へのダメージの観点からも、夏に革ベルトの時計は良くないと思います。

しかし、夏でも革ベルトの時計をしないといけない場面もありますよね。

そういう場合は、革ベルトの裏に、防水加工をしてあるものを付ければ良いと思います。

ゴムや、水分に強い人工革が薄く張ってある革ベルトが、一般的に売られています。

表面はグレー、裏に黒の人工革が張られている。
表面はグレー、裏に黒の人工革が張られている。

市販品でも良いですし、革ベルトをオーダーする際は、防水加工オプションを数千円でつけられます。

防水加工の革ベルトに加え、台座を付ければ真夏の屋外でも、ヴィンテージ時計をつけることだって可能です。

夏に一日時計を付けた後は、ティッシュ等で革ベルトの内側の汗を拭き取る方が良いですが、理想は、数時間おきに拭き取ることです。

いちいち拭き取りまではしなくても、時計を肘方向に少しずらして、腕と時計の間に汗が溜まらないようにこまめに乾燥させるだけでも革ベルトの持ちは変わってくると思います。

メタルブレスレット

次にメタルブレスレットについてです。

メタルブレスレットは、革と違って汗を吸収しないので、汗で痛むことはありません。

しかし、金属はさびる危険があります。

メタルブレスレットの多くに使われるステンレスは、さびにくい素材ですが、汗が付いたまま何もしなければ、何年か経つとダメージが蓄積していきます。

最悪の場合、さびてちぎれてしまうケースもあるそうです。

以下の記事で紹介しましたが、メタルブレスレットを超音波洗浄するという方法があります。

自宅で出来ることではないですが、年に一回でもお店に持ち込んで出来るとベターかもしれません。

普段のケアはどうすれば良いかと言えば、ティッシュなどの乾いた布で拭き取るくらいしかできません。

しかし、布だけではブレスレットの連結部分など、奥の方までは拭き取れません。

革ベルトであれば、拭き取れば、付いた水分をある程度除去できますが、メタルブレスレットは表面上の水分しか除去できないのです。

エアダスターなどで強力な風で水分を飛ばすことは出来ますが、あくまで乾燥させるだけで、汗の汚い成分は残ります。

専用洗剤と柔らかい歯ブラシを使って自宅で洗浄も出来ますが、時計本体に水がかかりそうで怖いし、いちいち時計本体からブレスレットを取り外すのも面倒かつ難しいです。

カルティエでは、オーバーホールを依頼すればこういうセットを貰えます。(時計を買わなくても)

また、メタルブレスレットは台座を付けることが出来ない(機能的に可能でもデザイン的におかしい)ので、時計本体を保護することが出来ません。

革ベルト vs メタルブレスレット

革ベルトとメタルブレスレット、夏にはどちらが良いのか。

私は革ベルトの勝ちだと思います。

時計本体のダメージについていえば、革ベルトには台座を付けるという方法がありますが、メタルブレスレットは何もできません。

ベルト、ブレスレットへのダメージについていえば、革ベルトは裏側の防水加工とこまめな拭き取りで、十分長持ちしますが、メタルブレスレットは自分で出来るケアが限られていて、さびが蓄積してしまいます。

また、革ベルトは数万円払えばまた新しい物を買えますが、メタルブレスレットは、ちぎれた場合修理が出来る保証はありません。そんなもの、怖くて気軽につけられません。

というわけで機能的には革ベルトが良いという結論を出しましたが、デザイン的に、メタルブレスレットの方が良い、ということもありますよね。

ロレックスのヴィンテージなど、メタルブレスレットでないと出せない魅力があると思います。

そういう場合は、どうしようもありません。諦めて夏でも気にせず付けるだけです。

屋外に出る時は外して、ケースに入れカバンに保管、室内に入ったら取り出して付ける、という面倒なことをすれば、十分なケアになると思います。

以上です。

ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました