私が思う、アトリエベルンのすごさ

オーダー

こんにちは。ミスターリネンと申します。

こちらのブログでは何度か話題に出していますが、アトリエベルンさん(以下敬略)という、南青山のテーラーがあります。

オーナーの竹内さんは、YouTubeやブログ等で、メンズクラシックファッションについて発信されていて、その内容が、クラシック勉強中の私にとっては非常に学びが多いです。

株式会社インコントロの赤峰幸生さんと並び、強い発信力があると思います。

この人からクラシックを学びたい、服を見立ててもらいたいと思い、今年(2024年)初めてアトリエベルンに行き、ツイードジャケットとコーデュロイのスラックスをオーダーしました。

「アトリエベルンのオーダー体験記」

ところで、X界隈を中心に、時々、アトリエベルンへにマイナスなコメントがされているのを目にします。

「ビスポークではなく、ただのMTM(メイドトゥーメジャー)」「ネクタイの結び方がどうこう」

批判する人がいる=影響力があるということだし、竹内さんご本人も、十分に顧客やファンがいる為、気にもされてないとは思いますが、一人のファンとしては、残念な気持ちになります。

私はファンなので、お店自体も、竹内さんご本人も、素晴らしいとしか思いませんが、合わない方がいるのも、後ほど述べる理由から納得は出来ます。

アトリエベルンの特徴。

アトリエベルンのすごさ。

こんな人には合わないと思う。

などを、私の考えでお伝えします。

アトリエベルンの特徴

竹内さんご本人が言われる通り、あくまでアトリエベルンは個人商店です。

アシスタントの方はいますが、ほとんど一人でやられていて、規模を拡大させていこうという感じはしません。

そのため、どんなお客さんでも、売り上げUPにつながるならぜひ来てください!というスタンスは感じません。

言い方は不適切かもしれませんが、好きなお客さん以外は来なくて結構、という頑固おやじ商店スタイルです。(愛を込めて言っています)

特にそれを感じたエピソードがあります。

私がオーダーしに伺った際は、私の雰囲気を見ながら、竹内さんが壁一面に並べられた生地から私に合いそうな生地を選びながら、細かいディティールを頭の中で組み立ててじっくり考えておられる(ように見える)時間がありました。

その時に私は、「この生地はどうですか?」「ボタンは3つボタンになりますか?」「パッチポケットの方が合いますか?」

などと余計な口出し、質問をしてしまいました。

すると竹内さんから、「私の思考の純度が落ちるので、何も言わずに完全に任せた方が、良いモノが出来ますよ」と叱られてしまいました。

竹内さんのブログを読んでなるほどと思ったのが、「いくらスーツが好きな人でも、せいぜいオーダースーツを作るのは月に1着。プロであるこちらは、その数十倍は作っているので、プロの方が確実に知識、経験を持っているので、プロに任せるべき」という内容です。

私は、数は少ないながらも、これまで何度かスーツオーダーの経験があり、多少のことは分かったつもりでいました。

しかし、そういう中途半端に知識を少し持ってしまったアマチュア(私)が、一番面倒くさいというのは想像がつきます。

アトリエベルンには、竹内さんのセンス、知識を完全に信頼し、任せきれるお客さんがほとんどで、私のような人間は少ないのだと思います。

私は竹内さんの影響もあり、今後はオーダーの際は、自分の考えを入れず、プロに任せきろうと考えを改めました。

「オーダーはテーラーに任せっきりが良いと思う理由」

アトリエベルンのすごさ

プロに任せきる、と言いましたが、その際の条件は、そのプロのことを信頼しきれることに加え、そのプロのセンスが好きであること。

床屋と同じで、刈り上げが嫌いなお客さんが、刈り上げ至上主義の床屋に行ったとして、いくら写真を見せても、いくら技術が優れていても、納得のいく仕上がりになる可能性は低いです。

自分にとってセンスが良いと思えないプロに任せてしまうと、いくら細かいディティールを指定しても、そのプロの思いと自分が指定したディティールがぶつかりあってしまうからです。

アトリエベルンについて私が最も偉大だと思うのが、オーナーの竹内さんのセンスと、クラシックについての知識です。

竹内さんのことを知ったばかりの時は、正直そこまでセンスが良いとは思っていませんでした。(何様だという感じですが)

具体的に言うと、現代のスーツ業界の流れでは、単品ジャケットはパッチポケットが多いし、ネクタイもキュッと小さく結ばれていることが多いですが、

ダグラス・コルドーさんインスタグラムより拝借。パッチポケットがクラシックでないという訳では全くありません。

竹内さんは、ジャケットスタイルの時にパッチポケットではなくフラップ付きの普通のポケットを選ばれることが多かったり、ネクタイの結び目が大きいなと思ったり。

しかしそれは、私のクラシックについての知識が不十分、かつ現代の流行に惑わされていただけで、クラシック的観点からは、全く正しいスタイルだと気づきました。

(ネクタイの結び目については、スタイルによって大き目小さ目を使い分けておられるようでした。)

竹内さんは英国スタイルで貫かれているので、どちらかと言えばイタリア寄りな、軽くて柔らかい雰囲気なスーツが主流の現代日本では、クラシックすぎると感じる人もいるかもしれません。

しかし、やりすぎ感はなく、現代日本でも着られるよう、ちょうど良いバランスにされていると私は思います。

車に例えるなら、現代で馬車に乗っていたらやりすぎ(というより法律違反?)ですが、空調設備もついていないようなクラシックカーに乗っているようなもの。なかなかマネはしづらいけど、「かっけー」と多くの人が思う感じ。

ご本人も、会話の中で、うちのスーツはクラシックカーのようなものとおっしゃっていました。それの受け売りです。

私が特に共感するのが、「自分の着こなしのレベルが上がるまでは、着崩したり、アレンジを加えてもみっともないだけ」という考えで、竹内さんは常にベーシックなスタイルをされています。太くもなく細くもなく、長くもなく短くもなく、本当に絶妙な、「中庸」なのです。

私は最近まで、有名人のマネをしてネクタイを小剣の方が長くしてみたり、ジャケットの袖のボタンをわざと1つ開けてみたり、色付きのシャツを着てみたり、太いスラックスにしてみたり、背伸びして色んなことをしていました。

ハズシ、ではなく、ハズレ、になってしまっています。

今思えば、人のマネをしているのがバレバレで、全く自分のものになっておらず、恥ずかしい限りです。

そういう小賢しいことをせず、愚直にまじめにクラシックを追求し、自分なりのスタイルが固まってきたら、それをマイスタイルとして貫けば、格好良くなれるかもしれない、と思うようになりました。

竹内さんは、ベーシックなスタイルが基本ではありますが、地味というわけではなく、色や素材を季節ごとに素敵に組み合わされていると思います。

お洒落だけど、やりすぎない。そのお客さんの着こなしレベルを見極め、最適な提案をすることが出来るプロだと思います。

また、服だけでなく、自宅や車も格好良いし(ブログで時々登場します)、何より、南青山に構えるサロンがものすごく素敵です。

ブログページより拝借

家具、ラグ、什器、並べられている服、靴、こんな仕事場で働けたら幸せだろうな、という雰囲気です。

これを作り上げた人のセンスに任せれば、絶対格好良い服が出来上がる、と確信が持てます。

長くなりましたが、この章で言いたかったことは、竹内さんのセンスと知識はすごい。ということです。

こんな人には合わないかも

頑固おやじの個人商店は、合う人には合うけど、合わない人にはとことん合わないことがありますよね。

アトリエベルンについて、こんな人にはおすすめしにくいです。

既にぶれない独自のスタイルが確立している方。

クラシックのルールがどうであろうと、結局一番格好良いのは「俺のスタイルはこうだ」と自信をもってそのスタイルを貫くことだと思います。

そこまで自信がある方は、クラシックを勉強したい、とは考えないはずなので、アトリエベルンを知ることもないかもしれませんが。

例えば私の場合、作ってもらったジャケットは2つボタンでしたが、私が自分で仕様を決めていたら、確実に3つボタン段返りにしていました。

「3つボタン段返りが最もクラシック。ラペルのロールが綺麗に出やすい」というのをYouTubeか何かで聞き、そう信じ込んでいたからです。

「2つボタンにします」と言われた時は、「いや、3つボタン段返りにしてほしいんですが」と言いそうになったのをぐっとこらえました。

人生で初めての2つボタンでしたが、全然アリじゃん、と着てみて実感します。お任せにしたからこそ気づけたことです。

ラペルのロールなども、2つボタンでも十分綺麗だし、別に2つでも3つでもどっちでも良いや、と思うようになりました。

あとは、似たようなことですが、イタリアスタイル一辺倒の方。

アトリエベルンは、非常に英国スタイルで、生地選びにおいても、スーツのデザインにおいても、イタリア要素が入ってくることは滅多にありません。

私はアトリエベルンに行く前は、日本のスーツ業界のトレンドの影響を受け、イタリアスタイルが格好良いと思い、イタリアの中でも特徴的なナポリスタイルを目指して服を買っていました。

ナポリスタイル代表。Nicola Radanoさんインスタより拝借

イタリアスタイルは今でも格好良いと思っていますが、英国スタイルも試してみた上で、自分が本当に好きなのはどんなスタイルなのかを見極めたいと思っています。

自分はイタリアスタイルに決めた、一生ぶれることはない。という方は、アトリエベルンは合わないと思います。

最後に、ビスポークでないと嫌だ、という方。

冒頭で述べた、「ビスポークではなく、ただのMTM(メイドトゥーメジャー)」というアトリエベルンに対する批判。

事実だけで言えば、確かにMTMだと思います。いわゆるパターンオーダーです。

最高級ビスポークスーツしか着たくない、という方は、プライドが許さないかもしれません。

ところでMTM、パターンオーダーというのは、指す範囲があいまいな言葉です。

レベルの低いMTMなら、測るべきところを採寸して、工場に数値のデータだけ送れば、スーツの形をした服は簡単に出来上がると思います。

しかし、それではテーラーの存在意義がありません。

服作りのド素人の私が言うのはお門違いですが、想像するに、服作りを理解した優れたテーラーなら、採寸の技術も違うし、どこをどう作れば着心地が変わるかなども知っているし、職人さんに対しての指示の仕方も違うんだと思います。

MTMと言えど、レベルはピンキリなのです。

アトリエベルンはMTMのようなので、職人さんがほとんどを手縫いで仕上げる、いわゆる最高級と言われるビスポークスーツとは違うのは事実です。

私はMTMでも、極力仮縫いを付けたいという考えですが、アトリエベルンでは「仮縫いは無しで一発で完璧に仕上げる自信があります。」と言われたので、仮縫いのオプションは付けませんでした。

結果、言葉通り、完璧なサイジングのものを仕上げてくれました。

50万円以上するような、最高級ビスポークスーツを私は体験したことはありませんが、今後も一生MTMで十分なのでは、という気もします。

アトリエベルンの作品はそれだけ美しいと思うし、20万円台後半という値段は安い方ではありませんが、値段に見合う価値があると思います。

まとめ

頑固おやじなどという大変失礼な表現を用いてしまいましたが、それこそがアトリエベルンの最大の魅力だと思っています。

それに、世の中で一流と言われる人は大体頑固おやじですしね。

クラシックなスタイルを格好良いと感じ、自分のスタイルをこれから確立していきたい方には、アトリエベルンの門を叩く価値は十分にあると断言します。

以上です。参考になれば幸いです。

コメント

  1. イギリス好き より:

    初めまして
    肯定的な意見は自然に集まってくると思うので、あえて逆の意見を

    まず、少し前にTwitterであったネクタイの結び方事件()ついては、完全なイチャモンというか、一部の声の大きいイタリアビスポークオタクのただの感想ですし気にする必要はないと思います

    一方で、所詮パターンオーダーじゃないかという批判は結構無視できない重要なものだと思います
    berunの「the book」をはじめとする媒体の記事では、かなりビスポークを推していて、竹内氏本人もビスポークフルオーダーの重要性を理解してるはずですよね
    それなのに、ビスポークフルオーダーではなくただのパターンオーダー屋をやっている所に強い違和感を感じます
    ここで重要なのは,パターンオーダーがダメかどうかではなく、あれだけビスポークやクラシックの良さを伝えてきた人間が、なぜ安易なパターンオーダー専門をやっているかという点です しかも、ビスポーク屋のMTMのようにオリジナルの型紙を持ち込んだMTMでその店のハウススタイルを再現するというものですらありません
    もちろんパターンオーダーの工場にもランクがあります 竹内氏が使ってる工場は襟付けなども上手でオーダーするなら間違いない工場の一つです
    しかし、berunのスーツはその某工場の型紙が強く出過ぎていて、(あまり型紙を修正していないため)工場の型紙そのものといっても差し支えがなく、とても店主が提唱するクラシックな英国のスタイルとは言えません
    これは身内でも散々話題になったことですが、イギリス風に見せるには背中の絞りが何より重要なのに、クラシコイタリアが強い某工場のほぼそのままのスタイルのberunは一体何を表現したいのだろうかというものです

    linenさんにこういう事を言うのは心苦しいですが、berunさんに限らず、英国モドキは腰を絞って誤魔化すだけで背中が美しくないんですよ バストのボリュームだとか肩の盛り上がりだとか色々言われますけど,英国といったら背中のタイトな作りなんです
    丸投げパターンオーダーは後ろ姿がゆとりだらけでとても英国的ではないんですね
    おそらく、竹内氏は中庸やクラシックと言って濁しますが、アレは英国としてはミスとしか言いようがないです
    berunのスーツは正直A工場の型紙そのままにしか見えず、英国特有の背中の絞り(ウエストの絞りではなく背中全体の絞り)が再現できておらず、どうしても英国風としても違和感があります
    英国系を謳うテーラーのMTMは複数ありますが、いずれもビスポークできる事を前提に、MTMの型紙を別で引いて、そして自分の店で袖付再プレスしたりと創意工夫もできます
    批判的な彼らの言葉を借りれば、型紙すらまともに引けないしイギリス風でもないただの工場製MTMの専門店が、クラシックだとかビスポークだとか偉そうなこと語っていいのか、それを語るだけの仕事をしているのか、というものです

    これらのちょっとした疑問が、一部(ビスポーク好き)の人たちの反感を買っている理由かなと思います
    あと、パターンオーダー専門店なのに、ホームページに「当店はビスポークです」としれっとと明記しているのも印象が悪いですね

    色々とグダグダと述べましたけど、竹内氏の色合わせ(ファッションセンス)や、クラシックの魅力の布教、ビスポークを前提とするスーツ文化への理解は大変尊敬に値するものだと考えています
    だからこそ、ビスポークもできない,ただの丸投げパターンオーダー屋が、嬉々としてクラシックを語るのはおかしいのではないか?
    そう考える身内は多いです

    • Mr. Linen Mr. Linen より:

      イギリス好きさん、はじめまして。
      コメントありがとうございます。

      英国スタイルの最大の特徴は背中の絞りであること、依頼先の工場のこと、テーラーのMTMにも様々なパターンがあること。
      私が知らなかったことが多く、とても勉強になりました。

      正直素人の私には、クラシックな英国スタイルとそうでないスタイルとで、背中の絞りがどのように違うのか、はっきりとはわかりません。
      不要なシワが発生していないか、くらいしか判別できるポイントがありません。
      今後は自分なりに、もっと背中に注目していこうと思います。

      これからも、何か気づかれたことがあればご指導いただけると幸いです。

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